表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/56

高貴な友人

弟のザック視点です


少し短いです。

 

 複数の靴音が廊下に響く。その音に反応し、王宮で働く者達が廊下の端に寄り、頭を下げていく。僕はそんな状況に恐縮しっぱなしだ。前を歩く2人は、気にすることもなく颯爽と通り抜ける。その姿は人を従えるに相応しい、威厳を感じさせた。

 ふっとウィリアム様が振り返る。



「それでは頼んだよ」

「はい、兄上」

「かしこまりました」



 執務室へ向かうウィリアム様を見送り、カール様と僕は王都を囲む結界を管理する塔へと向かった。初めて入ることに少し緊張していると、前を向いたままカール様が話しかけてきた。



「本当に久しぶりだけど、何だか2年前より勇ましくなったね、ザック」

「そうでしょうか。カール様にそう言っていただけるとは光栄でございます」



 見えないだろうが、軽く頭を下げる。こんな気安く話しかけられているが、彼は第二王子なのだ。周りや護衛の騎士の目もある。不敬罪などと言われては困る。

 すると突然カール様が立ち止まり、こちらに振り返った。



「やめてくれよ、カール様なんて。その言葉遣いも嫌だなぁ」

「そんなことおっしゃられましても……」



 あぁもう、我儘言うなよ。チラっと護衛を見ると、彼らも困り顔である。カール様は王族扱いされるのがあまり好きではない。そのため魔法学校の時は、一友人として会話していたが、ここは王宮の中である。我儘など言わないで欲しい。



「そんな事言ったら、セレーナ嬢にザックがよく私にセレーナ嬢に言いよる男がいないか聞いてきたってバラしてやるぞ」

「なっ! なんでそうなるんですか!」



 慌てて叫ぶと、周りにいる護衛の騎士が皆下を向く。顔を見られないようにだろうが、肩が揺れているのを見ると笑うのを堪えているようだ。それがわかると、ますます恥ずかしくなる。どうせなら思い切り笑ってくれよ。



「いや、離れている恋人の事が心配なのは、よぉぉぉくわかるよ。でも、セレーナ嬢からしたら『私のこと信頼してくださってなかったのですね!』って思うだろうなぁ」

「卑怯ですよ。それに、似てません」



 セレーナはもっと可愛らしい。……じゃなかった。ため息を吐きそうになるのを必死に堪える。この人は本当に我儘だ。だが、本当に相手が困ることはしない人だから、僕は信用もしているんだけど。



「そうか? ちょっと確認して練習しなきゃダメかな」



 あれ、信用していいのかな。少し自信がなくなってきた。僕は姉さんの次にカール様に振り回されていると思う。



「塔までは我慢してください。そして早く行きましょう」

「そうだな。兄上も早い方が喜ぶだろう」



 兄が大好きなのも変わらないな。兄であるウィリアム様を支える為に、国民の生活がより豊かになる魔道具の研究をしているくらいだ。いや、ただの研究好きなだけかもしれないが。


 そんなことを思っているうちに塔にたどり着いた。中は薄暗く、術式が床一面に書かれている。そして、大きな魔力を感じることができた。



「これがロミオ・ランバート様の魔力か……」

「似ているだろ?」

「……そうだね」



 術式に影響を与えないようにゆっくりと進む。



「なんて素晴らしい術式なんだ……これが歪められるなんて」



 もはや感動でため息しかでない。それほどに素晴らしい術式だった。


 そもそも魔法とは、人間の身体にある器量が関係している。一般人の器量は小さく、生活する際は魔石と呼ばれる魔力を増幅する石を術式の書かれている魔道具に乗せて使う。

 一方、魔術師とは元々の器量が大きいため、魔石がなくても魔法を発動することができる者のことだ。身体が大人へと変わる12歳頃に器量を測り、器量が大きければ17歳まで王都魔法学校で魔力をコントロールできるよう学ぶことが義務付けられている。


 魔法には白魔法と呼ばれる火、水、風、土。そして使える者が少ない光と闇の6つの属性がある。多くても3つの属性が使えれば高位魔術師と言える。結界はその属性を術式に練りこみつくるという高難度の魔法だ。

 もう一つは黒魔法と呼ばれている。これは負の感情を抱いた時に身体の中に生まれる魔毒により身体能力が上がるものだ。魔力の大きさ関係なく使える魔法だが、一度魔毒に犯されると精神が壊れ自我がなくなる恐ろしいものである。



「確認してくれ。私は他者の介入による歪みだと思うのだが」

「わかった、やってみる」



 術式の中心に立ち、練りこまれた魔力を感じてゆく。自分の周りにできた空気の渦に呑み込まれるような感覚がする。まるでランバート様が近くにいるような錯覚さえ覚えそうだ。心を落ち着かせ、魔力の中に体を沈めていく。すると、そんな穏やかな気分はすぐになくなってしまった。



「カール。君の言った通りみたいだ」



 表情が険しくなるカールを横目に見ながら、姉さん達は大丈夫だろうかと考えずにはいられなかった。



面倒見のいいザックは、天真爛漫な姉リリアンや我儘?な友人カールに振り回されやすいのでかなりの苦労人のよう。

どこの世界も兄弟の中に自由な子がいると、しっかり者も生まれるんでしょうかね。(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ