ワシワシMAXや
「では、ホームルーム。二人とも遅刻扱いで。」
皆勤賞を守り切れなかった事で頭を抱えて叫ぶアカハラを横目に僕は自分の席に着く。
悪いことをしたとは思うけど、今は飛び出していった言い訳を考える事だけで頭がいっぱいだった。
昔、アカハラのじいちゃんが、一時の感情で動く奴は何時かひどい目に遭うと言っていたけれど、まさにその通りになった。
正直、アカハラと顔を合わせずらい。
一旦、助かると思っていただけに、それを無碍に却下されたのは痛かったらしい。アカハラは本気で落胆している。一度上げてから落とす。
吉岡先生もなかなかやる。
いや、感心している場合じゃない。
目を合わせないように注意して、アカハラの様子を見る。
アカハラと僕の机の間には委員長の席。委員長が僕の視線に気づいて手を振る。
貴女に用はない。
身体を傾けて委員長越しにアカハラの様子を見る。それに満面の笑みで追従する委員長。絶対わざとやってる。
頭にきてプイッと頭を返して前を見る。
吉岡先生の話を聞くふりをしながら、色々考えてみる。
アカハラのこと。
自分のこと。
これからのこと。
全く考えがまとまらなくて、ボーッとしていると隣の席から手紙が回ってきた。
折りたたまれたノートの切れ端に、几帳面な字。委員長だ。
『いつから、女の子に戻ったの?』
不躾に聞きたいことだけ書かれた手紙が彼女らしかった。
少しホッとしたのは、この文面から見て、何らかの脅しを書けてくることはなさそうだと言うことだった。どう答えたものか思案していたら、ホームルームが終わった。すぐさまアカハラの席に行く。
「あの…、なんか。ごめん。」
「もぅいいよ。あきらめは早いほうなんだ。」
そう言って明らかに落胆した口調でため息まで吐いた。
ここは親友の僕が元気づける必要があるな。原因を作ったのも僕だけど。
「アカハラってさ…、ゴールド免許とったらそれを死守するタイプでしょ?」
「当たり前だ。無事故無違反の証。それがゴールド。死守しなくてどうする。」
「そうだね。くそ真面目なアカハラなら絶対ゴールド免許とれるよ。」
この際ゴールド免許は取るモノなのかどうか分からないけど、希望があることを言って持ち上げてアカハラの機嫌を良くしよう。
「いつも安全運転のアカハラさんなら、絶対大丈夫ですよ。」
僕の後ろから委員長が割って入る。
さすが委員長。男の子を勘違いさせる様な優しい言葉を掛けさせれば一流だ。
そういうところ、女子には嫌われるだろうけど。
僕はこういう女は嫌いだ。
「でも違反をしても、その後無事故無違反ならゴールド免許は5年でとれますけど、皆勤賞はもう戻ってこないですけどね。」
「何でそんなに免許制度にくわしいんだよ!っていうか、せっかく人が慰めようとしていたのに!」
「原因を作ったのはツグミちゃん、アナタですよ。」
いらっ。
「その原因は作ったのは委員長じゃないか。」
「ん、何があっんだ?」
しまった。話をそらさなきゃ…
「私がツグミちゃんの乳を揉んだんです。」
あっさり言った!なんてことを!
「えっ、マジで?」
「えぇ、マジマジ。だって、つぐみちゃん、可愛いからつい…。」
そう言って委員長はまた、僕の胸を揉もうとしたから思わず飛び退いた。