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あっさりと捕まえた

 さて、全速力で走る人間を効果的に捕まえる方法はどんな方法があるだろうか?


 追い抜かしてから前に立ちはだかる。これには圧倒的な走力の差が必要だ。

 次に、ぎりぎりまで追いついて背中を押す方法。

 人は走っている時には重心は前方に移動している。前のめりになり、地面を蹴ることで体幹のバランスを意図的に崩すことを繰り返すことによって素早く移動する事が可能になる。この体幹のバランスをさらに崩してやれば、走行中の人間は意図もたやすく転倒する。

 しかし、結局これも相手に追いつくことが出来る事が出来ることが前提になる。

 スタートダッシュの時点で差をつけられている場合、これらの方法は使えない。

 では、どうするか?

 持久力の差で勝負を決めれば良い。


 ツグミは決して運動音痴ではないが、運動部に在籍しているわけではない。

 100メートル走は100メートル走ることを前提にしているから、無意識のうちにペース配分をしているから走りきれるのであって、何も考えずダッシュした場合、すぐにスピードダウンしてしまう。

 要は見失わなければいい。

 こちらはペースを考えて追いかければ、ヘロヘロになった所を意外と簡単に捕まえることが出来るのだ。

 圧倒的に若くて元気な筈のヤンキーが走って逃げているのに、30代オーバーのオッサン警官に捕まるのはこういうカラクリがある。

 そんな訳で、俺はヘロヘロになってヒーヒー言っているツグミを労せず捕まえることが出来たのだ。


「はーーーなーーーーっ、ひぃひぃ。ぜぇ!!」

「うるせぇ。小学生か貴様は!」

 トイレに行っている間に何があったか知らないが、堂々と授業をサボらせるわけにはいかない。正直、反射的に追いかけてしまったので、コイツを手土産にサボりでないことを証明して皆勤賞を守らなければならない。

 ツグミの背中側のベルトを右手で握って、襟首を左手に持って無理矢理教室に帰らせる。

「きりきり歩け。馬鹿野郎。」

「わかった!わかったから、はなーしーて!」

「そう言って、離したら逃げるだろ?」

「逃げないって。僕が信用できないのか?」

「えっ、まさか。信用していたと思っていたのか?」

「地味にひどい!」

 そう言って、ツグミは振り返って目を潤ませる。

 普通、男がこういう表情を見せていたら、嫌悪感の一つも抱くはずだ。しかし、ただでさえ女と見間違えるほど見た目が良いツグミがすると、何となくこっちが悪い事しているような気がする。

 いや、その考えはおかしい。

 勘違いしてはいけない。コイツは男だ。

「分かった、分かった。手を離すから逃げるなよ。」

 そう言って、手を離す。ツグミは…、逃げなかった。

「やっぱり、信用してないな?逃げないよ。」

「なんでいきなり逃げたんだよ。それが分からなきゃ、信用もくそもねぇよ。」

「言いたくない…。」

 憮然とした表情でツグミが返答を拒否する。

「別に言いたくなければ言わなくても良いけど、先生に対する言い訳は考えておけよ。」

 上手いこと言い訳できたら、吉岡先生なら許してくれる…筈だ。

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