アカハラという友達
アカハラのバイクの荷台に乗せてもらって学校に向かう。
今の時間が7時20分。教室に到着する時間は7時45分くらい。
そこからダッシュで書き写して20分。
ホームルームは8時45分…。
余裕だね。
朝からナナシとアカハラにからかわれて、僕は気分が悪かった。
とは言え、宿題をやってなかったのだからある程度の誹りは甘んじて受けよう。
実のところ、すでに機嫌は良くなっているのだ。
これで今回も、最小限の努力で宿題を提出することが出来た。放課後に今日出るだろう宿題と、アカハラのコピーした今回の宿題両方をする羽目になったけど…。
でも、実はアカハラといるとなんだか楽しいので、一緒に宿題が出来るから嬉しかったりする。
そんな訳で、今日の僕は勝ち組なのだ。
農家であるアカハラの朝は早い。そのバイクに乗せてもらっている僕の朝も当然ながら早い。
今日も教室に一番乗り。
「さぁ、アカハラ!宿題を見せて!」
「うるせぇ。馬鹿野郎!お前みたいな奴に限って、ゲームの取説読まないんだよ!」
そう言ってアカハラは鞄からプリントを取り出す。
結構大柄で、口調もきついけど、なんだかんだ言ってちゃんと見せてくれる。良い奴だ。
「ゲーム中に、チュートリアルでちゃんと分かるように作るのがゲーム会社の義務ってもんだよ。」
「ああ言えばこう言う奴だな…。」
「簡単に揚げ足とられるアカハラが悪い。」
素早くプリントを手にとって、僕は答えを写し始める。アカハラはお説教を始めたが、僕はその度に軽口で返す。
初夏の朝の爽やかな空気。
まだ、誰も来ていない教室。
軽快な掛け合いが出来る頼りがいのある幼なじみとの会話。こういうのが楽しいと思うのは、制限時間が決められているからだろうか?
「なんだかんだ言って、優しいから。僕は、アカハラのこと好きだな。」
「おまえ、何恥ずかしいこと言ってんだよ。」
顔を真っ赤にしてアカハラは焦る。
彼のこう言う真面目というか、ところが、不器用というか…。何だかんだ言って優しい所が僕は好きだ。
「あっ、ツグミ君。おはようございます。今日も二人とも早いですね。」
そう言ってイカルチドリが入ってきた。
「おはよう、委員長。」
チドリは僕と同じビジターの子だ。何時も襟までちゃんとボタンを締めているし、リボンもちゃんとつけている。三つ編みで、めがね。パーフェクト委員長スタイル。
でも、クラス委員長ではない。
僕のクラスにはそんな制度はないのだが、見た目のせいでみんなに委員長と言われている。
「クラス委員長なら委員長らしく、僕らより早く来たら?」
「ごめんなさい。…、でも私。クラス委員長じゃ…。」
そう言って一歩引いてから、少し泣きそうな顔をする。その顔を見ると少しイラッとする。
チドリは可愛いというより美人で、丁寧なしゃべり方の割に気さくなタイプなので男子にとても人気がある。偏見だが、女子に嫌われるタイプだ。
「おい。委員長に当たるなよ。」
「別にそんな訳じゃないよ。」
「ツグミ君。またですか?」
「そう。また。ツグミが宿題をしてなくてね。写させてるんだ。」
「うるさいな。誰だってたまにはミス事もあるよ。」
「たまってレベルじゃないじゃん。」
「ぶーー。」
ケラケラとチドリが笑った。