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オープニング
特別なことではなくて、当たり前のこと。
僕は勉強はそれなりにまじめにやったし、グレる事もなかった。
過剰な期待をされることもなく、過剰な夢を持つことも、今のところない。
僕の住む街は、稲作農業以外に特に産業はなくて、閉塞感が漂っている。
特徴というと、とにかくデカい湖があって、鮒をなれ寿司にして食べる位の物だ。そう、鮒寿司だ。
おじさんはよく、まともな生活がしたければ、頭が良い奴は勉強して役人になるか、運動が出来る奴はサッカー選手になるか、悪事に抵抗がなければやくざか泥棒になるか、それも無理ならば一発賭に出てこの街を出て行くしか方法はないと言っていた。
僕はどれにも当たらないから、この街で働いて、いずれ死んでいくのだろう。
とは言え、将来のことを思って憂鬱になるほど悲観していないし、人生順風満帆と言うほど楽観もしていない。
当たり前の事だ。
この街の住人はみんなそんな感じの人ばかりだ。
そんな訳だから、さっき言ったデカい湖の上にこれまたデカい宇宙船が浮かんでいても、ここの住人は難なくそれを受け入れてしまったのだ。