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被害妄想だよ凜子ちゃん!  作者: 中高下零郎
被害妄想だよ凜子ちゃん!
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追跡デートだ凜子ちゃん!

 今日も凜子ちゃんは一人でもしゃもしゃと菓子パンを食べながらクラスを退屈そうに眺めて、俺と一緒に昼食を食べているはずの佃君は長瀬さんの席ばかり見て、なんだかんだ言って孤独にグルメを楽しんでいるのは俺の方なのかもしれない。


『なんで男って簡単に騙されるのかしら。本性も知らないで清楚だのなんだの、これだから単純なガキは嫌なのよね』


 相も変わらず悟りを開いたような自称サトリの凜子ちゃん。

 そういえば凜子ちゃんが長瀬さんを嫌っているのはわかったが、佃君の事はどう思っているのだろうかと印象を覗くと、俺同様に悪い人ではないが馬鹿という結果が返ってきた。全体的に凜子ちゃんは、男子はエロくて馬鹿で単純で、女子は心が汚く腹黒いという考えなのだろう。その上で、根は優しい子だから俺みたいな馬鹿な男子は救ってあげようという発想に至っているのかもしれない。割と騙される女の思考だよね、それ。



 それにしても、凜子ちゃんが恋のキューピッド作戦を手伝ってくれるなんて予想しなかった展開だ。と言っても本人は二人をくっつけるつもりなどなく、失敗すると見込んでの協力のようだが。

 二人には悪いけど、俺も一生くっつかないで欲しいと思ってしまった。だってそうすれば凜子ちゃんとずっとこの関係を続けることができるかもしれない! なんて考えてしまう俺も、意外と心が汚いのかもしれない。



「これからあの女を追跡しない?」

「あの女って、長瀬さん?」


 具体的に凜子ちゃんは何をするつもりなのだろう、心を読めば一発だけどお楽しみとして取っておきたいなとわくわくしていると、放課後に早速凜子ちゃんがそんな提案をしてきた。


「ええ、まずは相手を知らなきゃ。あんたが友達とくっつけようとしている女がどういう人かをね」

「確かにそうだけど、ストーカーみたいで怪しまれない?」

「二人なら怪しまれないでしょ」

「なるほど」


『今日も援交するらしいし、見た目いい人そうでも中身はクズ女だし、少し見張ればボロが出て、この浅はかな男も自分の間違いに気づくでしょ』


 援交なんて凜子ちゃんの妄想だし、見た目いい人そうで中身も佃君が好きな女の子だし、少し見張ればボロが出ずに、凜子ちゃんも自分の間違いに気づくでしょ。

 それと凜子ちゃん気づいているのだろうか。確かに男女二人で行動すればストーカーとは思われないかもしれないが、今度はカップルとして見られてしまうということに。


 学校を出る長瀬さんを、少し離れて二人で追跡。因みに佃君は部活だ。


「怪しまれないように、お喋りしながら話そうよ」

「はあ? アンタと話すことなんてないわよ」


 楽しいデートだけどムードはあんまりよろしくない。

 けど、思い返してみれば当初の凜子ちゃんは俺に対して口数少なく、無口キャラっぽい対応を返していたはずだ。こんな風に素のキャラで対応されるということは、案外信用されていることなのかもしれない。



 しかし凜子ちゃんとお喋りできない以上、退屈だ。

 凜子ちゃんは長瀬さんがこの後援交したり人間のクズっぷりを見せつけると信じきっているようだが、普通の高校生の下校なんて見張っていたって、そうそう面白い事があるはずもない。

 世の中には人間観察と称して恋愛感情抜きにストーキングする変わった趣味の人間もいるのだろうが、俺は凜子ちゃん以外の女の子をストーキングしてもときめかないよ。

 しばらく歩いていると、長瀬さんがお店の前で立ち止まる。スポーツ用品店だ。

 店内に入った長瀬さんを追って俺達も店に入り、遠巻きに長瀬さんの様子を眺める。

 何やら長瀬さんは店主のおじさんと話をしているらしい。

 凜子ちゃんを見ると、何故か勝ち誇っているような顔をしていた。


『ほらね、やっぱりあの女今からあのおっさんと援交するのよ。とんだビッチだわ』


 いやいや、どうしてそういう発想になるんだよ。どう考えたって買い物絡みでしょ。

 凜子ちゃんに現実を教えてあげるために、もう少し近づこうと提案して長瀬さんと店主の話し合いが聞こえるところまで近づく。


「手の大きさは大体このくらいで、軟式野球用なんですけど」

「だったら、この辺りだね」

「うーん、少し高いですね……」

「お嬢ちゃん可愛いからまけてあげよう」

「いえ、いいです。誕生日プレゼント用なんで、あんまり高いのもかえってどうかと思いますし。こっちのストラップください」


 誰がどう聞いても、これから援交をしようという会話ではない。


『つっくんも馬鹿だよ本当に、好きでもない人に毎年誕生日プレゼントあげるわけないのに。しかもつっくん気持ちがばれるのが嫌なのか誕生日プレゼントくれないし。もう私の方から告白すべきなのかなあ……』


 長瀬さんの心の中も、模範的な恋する女の子のそれだった。つうかあいつ毎年誕生日プレゼント貰ってる上にお返ししてないのかよ! 愛想尽かされるぞ!?

 ともあれ凜子ちゃんの予想を大きく裏切る結果となったわけだが、これをどう受け止めるのかと凜子ちゃんの方を見ると、


「……うっ、ううっ」


 頭を押さえて苦しんでいるではありませんか。


「だ、大丈夫?」

「だいじょう、ぶ……触らないで」


 肩を貸そうとするも振り払われてしまう。凜子ちゃんの心を覗こうとするが、おびただしい量の情報が流れてきてこちらまで頭が痛くなってしまう。自分の中での長瀬さんの設定が崩壊しかけたことで相当混乱しているのではないだろうか。


「……今日はちょっと調子悪いから帰るわ」


 長瀬さんもお店から出て行った後、ようやく頭痛から解放されたらしい凜子ちゃんはそう言うと俺を置いて一人店から出て行く。


『少し聞き間違いしていたようね、援交じゃなくて、選考……誕生日プレゼントを選考してたんだわ。でも、所詮佃君は間男としてしか考えていないのよ、哀れね。安いプレゼントで大きな見返りを期待するなんて、浅ましい女ね』


 割と無理があると思うのだけど、凜子ちゃんはそういうことで納得したようだ。長瀬さんの援交疑惑は晴れたが、それでも本命の彼氏がいて佃君の好意に気づいていて弄ぶ女という立ち位置だろうか。確かに佃君を弄んでいるようにも思えるけど、女の子の告白されたい願望も何となくわかる気がするから長瀬さんを責めることはできない。

 それにしても凜子ちゃん、ああやって無理矢理記憶とか設定を変えるんだね。でもね凜子ちゃん、嘘を嘘で塗り固めても、いずれは崩壊するよ。多分その時が、凜子ちゃんに真実を伝える時なんだろうね。

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