買い物
寮に戻って出かける準備をしたあと、校門でミーシャお姉ちゃんが来るのを待っていた。僕の準備は何もなかったけど。
「何で女って、準備に時間がかかるんだろなー?」
マークお兄ちゃんはぶつぶつ言いながら、近くの木に寄りかかっている。
僕は校門から出なければ、この辺を回ってていいと言われたので、あっちこっちに行ったり来たりしている。
そうしたら、時々知らない人が笑顔で手を振ってくるので、僕もおっかなびっくり手を振った。たぶん、マークお兄ちゃんと同じ学生さんかな。
でも、話すのはドキドキするから、話しかけられるとマークお兄ちゃんの近くまで走って逃げちゃった。
そんな僕に「もっと頑張れよー」とマークお兄ちゃんは笑った。
「だって、ちょっと怖いんだもん……」
マークお兄ちゃんは僕の頭を撫でながら「少しずつ頑張ろうな」と優しく話してくれたから、ぼくは嬉しくなって「うん!!」と答えた。
「あっ!!ミーシャお姉ちゃんが来たよ」
「ん。やっと来たか」
「あれ!? 学園長も一緒だ」
「えっ? ミーシャの隣にいる緑色の髪のおじさんがそうなのか?」
「うん、そうだよー」
二人が僕たちのところにやってくると、ミーシャお姉ちゃんが遅れてごめんと謝った。
僕は学園長にひっついて、「学園長もお出かけ?」と尋ねた。
「いや。ルークから、アルバート達が森に行く準備をすると聞いてな。ちょっと話したいことがあったから、ミーシャ嬢に付いてきたんだよ。」
学園長は僕をポンポンと軽く叩きながら、マークお兄ちゃんとミーシャお姉ちゃんに向かって話を始めた。
「私は『森と在るもの』と呼ばれている」
「えっ。学園長もアルと同じなんですか?」
「まあ、アルバート程ではないが、『森と在るもの』としての能力は高いほうかな」
マークお兄ちゃんが僕を見て「へー。アルってすごいんだ」と独りごちた。ミーシャお姉ちゃんも「学園長よりすごいんだー」と驚いている。
「さて、今回アルバートが『森』から頼まれた内容だが、おそらく瘴気が関わってくる。私も具体的に『森』から内容を聞けたわけではないが、淀みがあるような気持ちを感じたから、正しいと思う」
マークお兄ちゃんとミーシャお姉ちゃんは「瘴気?」と言って、困惑した顔をしている。
「すまないが瘴気の具他的な説明は、私から話すことはできない。ただ、魔法具店に瘴気を緩和できるものを用意してもらったから、買い物のついでに受け取ってきてくれるかな?」
「はい。分かりました」
ミーシャお姉ちゃんはまだ何か聞きたそうだけど、学園長が首を振ると「分かりました」と答えた。
「それじゃあ、アルバートをよろしく頼む」
学園長はそう言って、僕を離すと校舎に戻っていった。
僕たちは、校門から大通りをしばらく歩いて商店街に来た。
お店の中だけじゃなくて、道のところまで色々な商品が置いてある。どれも良く分からないけど見てるだけでも面白い。
ふと見るとクマさんが手を振っていた。近くまで走っていくと、やっぱりクマさんが手を振っていた。
僕よりも大きいけど、顔がかわいい!!
クマさんが僕に気づくと、小さく手を振ってくれた。
「こんにちは。クマさん」
僕が挨拶すると、クマさんもお辞儀をしてくれた。それを見てはしゃいでいると、お店から店員さんが出てきた。
「おや。かわいいお客さんだね。クマが好きなのかい?」
「このクマさんは好き!!」
僕がそう言うと、「この大きなクマは売れないけど、向こうの赤い屋根のお店が小さいクマを色々売ってるよ」と教えてくれた。
「ありがとうございます」
頭を下げると、「どういたしまして」と笑顔を返された。
僕は教えてもらったお店に走って向かった。
お店の前まで来ると、木で作ったクマさんや、布で出来た柔らかそうなクマさんが置いてあった。他にもイヌさんとかネコさんもいた。
「おお!! いっぱいいる!!」
僕が感嘆の声を上げて見ていると、後ろから声をかけられた。
「それは、良かったな」
マークお兄ちゃんの声だ。ルークが怒った時と似てる感じがする……。
僕が固まってると、後ろから頭を掴まれた。
「イタイ!! イタイ!!」
「なに、勝手に、居なくなってんだ!?」
僕は手をバタつかさながら「マークお兄ちゃん、ごめんなさい!! ごめんなさい!!」と必死に答えた。
マークお兄ちゃんは、頭から手を離すと僕の向きを変えて向かい合わせになるようにした。
「もう、一人で勝手に動くなよ。いいな」
いつもの笑顔でなくて、すごく怒った顔でゆっくり話してきた。僕は涙目になりながら「うん。ごめんなさい」と答えた。
「いきなり居なくなるからすごく心配したのよ。だから、もう勝手に離れないでね」
ミーシャお姉ちゃんが本当に無事で良かったと言いながら、僕の涙を拭ってくれた。
僕は、ミーシャお姉ちゃんにくっついて「ごめんなさい」ともう一回答えた。
森に行くのに必要な物を買うために、雑貨屋さんに向かった。
さっき怒られてから、ミーシャお姉ちゃんが手を離してくれなくなった……。
雑貨屋さんに着くと、「まずは服と靴かな?」とマークお兄ちゃんが思案しながら、いくつか丈夫そうなのを持ってきた。
すると、ミーシャお姉ちゃんがあっという間に僕を着せ替えては、マークお兄ちゃんに色々注文して他の服も持ってきてもらってた。
「うーん。これが一番小さいみたいだぞ」
「しょうがないかな。上着は大きいけど、幸い靴はぴったりだし」
「あと、鞄とかは……、無理そうだな」
「そうね。荷物を持って森を歩くのはアルバート君には難しいかな」
僕は鞄が置いてあるところを見ると、一つ小さいのがあるのを見つけたので、「これは?」と聞いてみた。
「その小さい鞄に何を入れるんだ?」
ちょっと考えてから「お菓子」と答えた。
「……」
「まぁ、確かにそれならちょうどいいんじゃないかしら」
マークお兄ちゃんはちょっと呆れた顔をしながら「ルーク先生からお金も預かってるし、買っとくか」と軽く決めた。
雑貨屋さんでの買い物が終わると、最後に学園長の言っていた魔法具店へ行くことになった。
魔法具店に着くとマークお兄ちゃんが「アルはここでミーシャと待ってろ」と言ってきた。
「えー。中見たいー!!」
「お前は何か壊しそうだからダメだ。魔法具の値段は洒落にならないからな」
僕は膨れて「ケチー」とか言ってると、マークお兄ちゃんがイイ笑顔になった。
「また頭を掴まれたいの?」
僕は頭をブンブン振って、「ミーシャお姉ちゃんと待ってる!!」と即答した。
「じゃあ、行ってくる」
「よろしくね。アルバート君は離さないから気にしないで」
しばらくミーシャお姉ちゃんとお話してると、マークお兄ちゃんが戻ってきた。手には不透明で少し青みがかった水晶を持っていた。
僕とミーシャお姉ちゃんは、若干光っている水晶を見て「きれー」と言った。もっと見たかったのに、マークお兄ちゃんはすぐに鞄にしまった。
「ほら、帰るぞ。」
お店にも入れなかったし、水晶も良く見せてもらえなかったから、不満気な顔をしながら「えー。もー帰るの?」と言った。
「ああ。必要なものは買ったんだから、もう用はないだろ」
「そうね。もう暗くなるし、帰りましょう」
僕は渋々と頷いて、ミーシャお姉ちゃんと手を繋ぎなら学園に向かって歩き始めた。




