寮生活(後編)
窓から差し込む朝日で目が覚めると、僕はゆっくりと起き上がった。
少しぼーっとしていると、マークお兄ちゃんがいないことに気づいた。周りを見渡すと、部屋の扉が開いており向こう側から物音が聞こえてきた。
僕が部屋から出ると、マークお兄ちゃんが朝ごはんを用意していた。僕に気づくと、「おはよう」と声をかけてくれた。
「おはよう。マークお兄ちゃん」
「椅子に座って待ってろ。朝ごはん運ぶから」
僕は「はーい」と答えて、椅子によじ登った。
座ると目の高さぐらいのところに、食卓がある状態になってしまった。ルークの部屋でもしてたように、椅子の上に立つことにした。
「持ってきたぞー」
マークお兄ちゃんが用意した朝ごはんを見て、僕は「おー!!」と感嘆の声を上げた。
黒くなくて美味しそう!!
そんな僕を見て笑いながら「食べよう」と言ってきた。
「うん」
「ところで、アルはなんで立ってるんだ?」
「だって、届かないんだもん」
ちょっとふてくされながら答えた。僕だって本当は座って食べたい!
「あー。ちっこいからなー」
僕は朝ごはんを食べながら、マークお兄ちゃんに「おいしい!!」を連発した。
「そうか? 普通だろ?」
僕はブンブンと首をふり、「すごく美味しい」と言った。
「だって、ルークの作る朝ごはんは黒くて苦いんだよ。」
「ブッ。アハハハー。じゃあ、朝ごはんはルーク先生に勝ったかな?」
「うん。マークお兄ちゃんの勝ちー!!」
朝ごはんはおいしいし、蹴られなかったし、一緒にいてくれるからマークお兄ちゃんが大好きになってニコニコしていた。
「これが餌付けかー」
「なにー?」
「いや、なんでもないよ。着替えたら教室に向かおうか」
「うん!!」
朝ごはんを食べ終わった後、僕の荷物が置いてある部屋に入った。
着替えは、昨日の夜にマークお兄ちゃんが出していたのを着ることにした。
今着ている服を脱ぎ捨てて、机の上にある服を被って着ようとした。そしたら、頭のところで引っかかった……。
色々頑張ったけど、頭は服の中で周りが見えないし、ほとんどかぶっちゃってるから脱げないし……。
泣きそーになってると、マークお兄ちゃんの声が聞こえた。
「アル、着替えたかー?」
「マークお兄ちゃん、助けてー!!」
見えないけど、マークお兄ちゃんが部屋に入ってきた感じがした。
「何やってんだ?」
「頭が抜けないー!!」
「アハハハー。頭ちょっと出てるぞ。頑張れ!! クックックッ」
僕は頑張ってジタバタしてみたけど、やっぱり頭が抜けない……。
助けてもらおうとマークお兄ちゃんを呼んだ。ちょっと情けない声だけど。
「マークお兄ちゃん……。できないー」
「ブハハハ。もーダメだ。腹痛い……」
マークお兄ちゃんが笑ってるだけで助けてくれないと思ったら、悲しくなって泣きそうになった。
「ヒック」
「あー。悪い悪い。首のところにある紐を緩めてやるから」
そう言って僕の頭の上あたりで服をごそごそいじった。すると、ストンと服が落ちて、やっと周りが見えるようになった。泣きそうだったから、ちょっとぼやけて見えるけど……。
マークお兄ちゃんは僕の頭を撫でながら話してきた。
「ほら。教室まで肩車してやるから泣くなって」
「うん。でも泣いてないよ?」
「そうかー?」
ルークに男の子は簡単に泣いちゃダメだと言われたのを思い出して、必死になって「泣いてないよ!!」と言った。
そしたらマークお兄ちゃんがニヤニヤとしながら聞いてきた。
「じゃあ、肩車はしなくていいな?」
「ヤダー。肩車がいいー!!」
僕はまたも必死に答えた。肩車はルークも時々してくれたけど、高いところから周りが見れてすごく楽しい。
「はは。分かったから。そろそろ行くぞ」
「うん」
部屋を出ると「よぉ、マーク」と声をかけられた。
声が聞こえた方を見ると、サラサラな金髪の男の人が立っていた。
「なんだ、バカセルか……」
「アクセルだ!!」
「分かったよ。バカセル」
「おい!!」
「悪かったよ。そんでどうしたんだ?」
アクセルは僕の方を見上げて話してきた。
「まあ、好奇心かな。そのちっこいのがアルバートか?」
「ん? 知ってるのか?」
「ああ。寮長から通達があって、お前に協力してやってくれと連絡が来た」
「へー。いつの間に……。アル、こいつはアクセル。バカセルでも可」
「アクセルだからな!!」
マークお兄ちゃんがお隣さんだから、挨拶するように言ってきた。
「アルバートです。おはよーございます」
僕が挨拶をすると、好奇心いっぱいの顔で楽しそうに聞いてきた。
「昨日の叫び声や怒鳴り声とか笑い声についても聞きたいけど……。アルバートってルーク先生の隠し子なのか?」
「隠し子? 隠し子って何?」
「ルーク先生の大切な人って意味」
「マークお兄ちゃん、僕って隠し子かな!?」
僕は何か嬉しくなって、マークお兄ちゃんの頭を叩きながら聞いてみた。
「俺に振るなよ。バカセルどうにかしろ!!」
「うわー。スゲーキラキラした目になったよ。どーしよう?」
中々答えてくれないから不安で泣きそうになりながら、「僕、隠し子じゃないの?」って聞いてみると、慌てて返事をしてくれた。
「とりあえず、ルーク先生に『お父さん』って言ってみると分かるかも!?」
「うん。言ってみる!!」
僕は忘れないようにしようと思いながら、「早くルークに会いたいなー」と呟いた。
「お前なー。ルーク先生に怒られるぞ」
「うっ。けど、きっと面白いって」
「とりあえず、ルーク先生の反応は後で教える!!つーか広める」
「アハハハー。楽しみにしてるよ。そんで、なんで肩車してんだ?」
「ああ。ふてくされた時に使うルーク先生直伝の対処だ」
「朝からふてくされてたのか?」
「ああ。後で教えてやるよ。クククッ」
僕は早くルークに会いたいから、「早く教室に行こうよ」と笑ってるマークお兄ちゃんの頭をボカボカ叩きながら言った。
「分かったから、叩くな。まぁ早く着いてもルーク先生は居ないけど……」
僕たちはアクセルと別れて、教室に向かった。




