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アルバートと森の不思議な関係  作者: よし
3章 進む道
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帰る場所


 おじいちゃんから、たくさんのことを教えて貰った。

 ルーベルクの森以外に存在する意思。


 初めの役割をずっと果たしてる意思。果たせなくなった意思。

 そして、崩れた世界。

 だけど、それも歩みを続けてきた結果。


「悲しくなかったのかな?」


 瘴気が生まれたのは、人と関わったから。

 世界から取り込んだ力を、人の願いに使ったため。

 きっと、人が好きだったはず。


「辛かったんだろうな」


 好きなのに、苦しめてしまう。





「力の循環を行うだけで良かった意思が、人に触れ、感情を持ち、そして願いを叶えるようになった。その結果、森や湖、たくさんの命が失われた」


 おじいちゃんは、僕をまっすぐ見つめてきた。


「お前は、被害を被った存在。理からも外れ、ただ瘴気を消す者として生まれた。それ故、人でもなく、森の意思でもなく、どこにも帰ることができない」


 僕は黙って、おじいちゃんの声を聴く。


「お前は、何を思い、何を望む」





 真剣な問いに、僕は思いを馳せる。


 ラルヴァと一緒に本を読んだ時、落ち着いてホンワリとした。

 ルークが褒めてくれると、すごく嬉しかった。

 マークお兄ちゃんとミーシャお姉ちゃんは、一緒に居るだけで楽しかった。

 アクセルとサラは、いたずらばっかりだったけど、みんな明るくなった。

 お城では、忙しいのに陛下がいつもお菓子を持ってきてくれて、優しさが嬉しかった。

 マーサおばちゃんの暖かい思い、ウィルの力強い思い。


 悲しいこともあった。


 捕まった時は、怖くて、悲しくて、痛くて……、心が真っ暗になったみたいだった。

 戦いでは、たくさんの憎しみで押し潰れそうだった。

 終わったあとには……、いっぱい遊んでくれたカームが眠ってしまった。





 変わらない……。

 いろいろな世界を見せて貰っても、僕が何者でもなくても。

 僕の思いは。

 

「僕はみんなと一緒に居たい」


 悲しいこともたくさんあるけど。

 それでも。


「僕はみんなと一緒に居たい」


 僕の思いをそのまま伝える。





「世界を恨まないか」


 恨む?

 うーん。何というか、世界を基準に話されてもなー。


「僕は生まれて、みんなと会えて嬉しいから恨まないよ。それに、おじいちゃんの子供も、自分で選んだんでしょ。砂だけになっちゃったのは悲しいとは思うけど。でも、嬉しくて楽しいことも、いっぱいあったと思うよ」


「……」


「おじいちゃん?」


 どうしよう。怒ったのかな?

 やっぱり、もっと世界のことを考えなきゃいけなかったかな。


「少し、感情が学べた」


「感情?」


「アルバートと重なり、世界の意思を見、感情を理解はしていた」


 怒ってないみたいだけど、よく分からない。

 なんで感情のお話?


「アルバートが、世界を肯定してくれて嬉しいと感じた」


「うーん? おじいちゃんが嬉しいなら良かった」





「もし、また彼らの元に戻れたとしても、お前は人の理からは外れるだろう。それに、望まれなくなれば、同じように消えることになるだろう」


 それでもいいのか。

 おじいちゃんは、それでも戻りたいか聴いてきた。

 何度聞かれても同じ。僕の思いは変わらない。


「そうか。ならば、手伝おう」


「手伝う?」


 不思議に思って聞き返すと、おじいちゃんは僕に触れてきた。


「なに?」


「存在の一部を渡す。それで、体を再構成できるだろう」


 体!?

 じゃあ、みんなの所に戻れるの!? って聴こうとしたら、おじいちゃんの腕が消えて僕に入ってきた。


「ちょっ!! おじいちゃんのお手々が!!」


「問題ない。ほんの一部だ」


 いや、一部って……。

 痛くないのかな?





 しばらくすると、僕の体の輪郭が出来てきた。

 やっぱり、小さい……。大きくはならなかったみたいだ。


「自らの力で成長し、生きている世界に、干渉することはできない。よって、これは前と同様に仮初めの体。ただし、森の意思から独立している」


 うーん?

 前は森の一部だったけど、今回は違うと。

 でも前と同じってことは、やっぱり森から力を借りないと消えちゃうのか。


「でも、それだと体が保てなくて、消えちゃうんでしょ」


「そうだ。だが、彼らは新たな道を見つけたようだ」


 新たな道?


「森の意思でなく、人の意思でお前を存在させる道だ」


「人の意思」





「もう行きなさい。彼らが何度も呼んでいる」


 もう、おじいちゃんに会えないんだろうか?


「大丈夫。お前の存在は私に近い。いつか、ここに帰るだろう」


「うん。おじいちゃん、またね!!」


 お別れすると、おじいちゃんは消えちゃった。

 それで、えっと、どこに行けばいいんだろう?

 見渡しても、真っ白な場所だけど。

 ……迷子? ルークに怒られるよー。


 そのとき、波が僕に届く。

 それは、意思と願いを以て、僕を導く。

 僕は逆らわず、心地良い意思の波に身を任す。





 ふわふわと流れてると、動かなくなった。


「うーん? やっぱり何も無い」


 キョロキョロしてると、突然、体が重くなって。

 落ちた。


「えっ!? っーーーー!!」


 声も出せず、目をつぶってると、衝撃が来た。

 ……痛くない。

 恐る恐る目を開けると、懐かしい顔があった。


「いきなり振ってくるからビックリしたよ」


 思い出にある通りの優しい顔と声だ。


「お帰り、アルバート」


「ただいま!!」






アルバートと不思議な森、本話にて完結となります。

最後までお付き合いいいただき、ありがとうございました。

また他の物語でお目にかかれることを願っております。


荻野よし

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