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アルバートと森の不思議な関係  作者: よし
3章 進む道
33/36

別れの時


 皆が黙り込んじゃって、ちょっとどうしていいか分からずにいると、マークお兄ちゃんが沈黙を破った。


「アルが2歳児の赤ちゃんなのは分かったけど、帰るとか、居なくなるってのは何でなんだ?」


 赤ちゃん……。

 2歳だけど。間違いないけど。


「マークお兄ちゃん、僕は赤ちゃんじゃないよ!!」


「ほら、そんなのはどうでもいいから、どこに帰るんだ?」


 どうでも良くないよ!!

 膨れてると、ほらほらって急かしてくる。


「……ルーベルクの森」


「森? アルの家かなんかがあるのか?」


「無いよ?」


 マークお兄ちゃんが不思議そうに首を傾げる。

 僕も傾げる。


「アルバートの存在は森の意思に還元される。だから、肉体は残らない……」


 ラルヴァの答えに、マークお兄ちゃんは声を失った。





「……なんで。なんで消えなくちゃいけないの!?」


 僕は、ミーシャお姉ちゃんの涙を拭う。

 泣かないで欲しい。悲しまないで欲しい。でも、それを取り除くことが僕にはできない。


「ごめんなさい。ミーシャお姉ちゃん」


 ミーシャお姉ちゃんは、軽く首を振った。


「違うの。あなたを責めてるんじゃ無いの。ただ、悲しくて」


「僕はね、森の一部なの。本当は、体もなくて、お話もできないの。でも、森ががんばって、僕の体をここにおいてくれてるの。だけど、森はみんなの願いにも力を使ってるから、すごく大変なの」


「つまり、許容量を超える力が必要となって、アル坊を維持することができなくなったのか?」


「きょ、りょう? よくわかんない。なんかね、だんだんと僕に必要とする力が増えてきたんだって」


「ああ、アル坊も一応は、成長してたんだな」


 成長してるよ!! 失礼な!!

 でも、それで必要な力が増えたのかー。





「ねえ、ルーク。お願いがあるんだけど」


「ん? なんだ。」


「森にね、瘴気がまた生まれちゃったの。だから、また消えるようにお願いして欲しいの」


 こないだの戦いで、たくさんの悲しみや憎しみが生まれて、森に瘴気が生まれた。

 今なら、僕の体を作ってる力で無くすことができる。ラルヴァを守ることができる。


「ああ。一緒に森に行けばいいのか?」


「ここで大丈夫だよ。僕が消えるときに、願いを持って森に帰るから」


「……、分かった。」


「ありがとー。あとは、陛下、陛下ー」


「ん? 菓子か?」


 くっ!!

 食べたいけど、すごく食べたいけど。


「……、ちっ違うよ。」


「ものすごい葛藤があったな。で、俺にもお願いか?」


「お願いなのかな? 僕が消えるときに、僕を作ってる力の一部が宝玉になるんだって。だから、また陛下が持ってて」


「分かった。大切にする」


「ありがとー」





 あとはー……。

 他に伝えなきゃいけないこと……。

 これで……、全部かな。


「アル……」


 マークお兄ちゃんを見ると、すごく辛そうで、悲しそうな顔をしてる。


「マークお兄ちゃん、大丈夫?」


「我慢しないで、泣いてもいいぞ」


「泣かないよ?」


「泣いてるぞ」


 手を顔に当てると、濡れてるのを感じた。


「あれっ? どうして……」


 涙が止めどなく溢れてる。

 泣いてることを意識すると、嗚咽が止まらなくなった。





 気づくと、ラルヴァの腕の中に在った。

 暖かくて、優しくて、悲しさより嬉しさが大きくなる。


「ラルヴァ、宝玉でお話ししてね。僕も聞こえるかもしれないから」


「ああ、森にも行くから」


「うん」


「いつかきっと、また会えるから。みんなで森に願うから」


「じゃあ、『またね』だね」


「そうだね」


 僕はみんなに手を振った。また会えることを願って。

 ぬくもりの中、僕はそこから存在を失った。






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