魂送
炎が爆ぜる音が響き、散ってゆく。
力強く、時にすべてを飲み込んでしまう強大な力。
でも、彼らを包むこの炎は、ひたすらに優しい。
天まで昇るかのようなそれは、きっと彼らを安らぎへ導いてくれることを祈って。
人同士の戦いは終わった。
宝玉が無くなった後、宰相を含む貴族が逃走を図り、戦線はいっきに崩れたらしい。
「アルバート、皆を守ってくれてありがとう」
陛下が僕の頭を撫でてきた。
「ウィルは魂送の準備を。ラルヴァはどうする? アルバートと先に帰るなら、誰かに送らせるが」
ラルヴァは返事を考えてるみたいだから、僕は気になったことを陛下に聞いてみた。
「陛下ー、こんそーって何ですか?」
「亡くなった者たちが、安らかに眠れるように、魂を慰めることだ」
なくなったもの? たましい?
難しい……。陛下のお話は難しいよ。
「陛下、この子はまだ人の死が分からないと思います」
人の死?
確かに分からない。
「……確かに、分からないといった顔をしてるな。だが、知っていていい年齢だと思うが?」
「それは……」
ラルヴァが珍しく言いよどんでる。
「いや、責めているわけではないぞ。そうだな、アルバートも皆を見送って貰えるか?」
僕はよく分からないけど頷いて、ラルヴァと一緒に魂送に参列することとなった。
陛下達とウィルの所に向かうと、たくさんの人が、寝てる人を運ぶ作業をしていた。
とても、とても悲しそうだ。
「なんで悲しいの?」
手を繋いでるラルヴァに聞いてみる。
「彼らは死んでしまったんだよ。もう、二度と起きないんだ」
ラルヴァは並んで寝てる兵士さん達を見て、悲しそうに答えてくれた。
「起きるよ!? だって、寝たら起きるんだよ!!」
ラルヴァはただ、首を振る。
僕は手を放して、寝てる皆の近くにいるウィルに駆け寄った。
「ウィルー!! ラルヴァが、皆が起きないって言うんだよ。起きるよね!?」
「人は、いつか必ず死ぬんだ。そして、死んだ人間はもう、戻らない」
ウィルは優しく頭を撫でてくれたけど、それを振り払った。
皆は起きるよ!!
お城を出た時は起きてたんだよ!!
疲れちゃったから、ちょっと寝てるだけなんだよ!!
「アルバート……」
寝てる皆を起こそうと思って近づくと、知ってる人が居た。
カーム……。
お城で木剣で遊んでくれた。ウィルと違ってカームは優しく教えてくれたし、ウィルにぼこぼこにされた後は助けてくれた。
「起きて、カーム!!」
砂で汚れた顔をペシペシと叩いてみる。
でも、ちっとも動かない……。
「ねえ、カーム。起きてよ。疲れちゃったの? お水持ってくるよ」
「アルバート、カームは……死んだんだ。」
ウィルが僕をカームから離す。
僕は首をブンブンと振る。起きるよ。だって、……。
「僕に今度、木剣を作ってくれるって!!」
「また一緒に遊ぼうって!!」
「だから、死んでないよ。……死んで、ないよ。」
ウィルは黙って、僕を抱きしめる。
寝てるだけって言ってくれない。起きるよって言ってくれない。
僕はただ涙を流し続けた。




