表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルバートと森の不思議な関係  作者: よし
3章 進む道
27/36

戦と僕(前編)


 分からない……。

 なんで……。

 昨日まで、すごく楽しかった。ルーク達もお城に来てくれて、一緒に魔法の練習をしたり、ウィルや他の兵士さんに剣の使い方を教えて貰ったりしてた。マーサおばちゃんとも毎日たくさん話して、たくさん笑った。


 なのに、なんで。

 今は、楽しさも優しさもない。

 ラルヴァと手を繋いでるのに、1人きりになったかのよう。


「ラルヴァ……」


 そこに居ることを確かめるように、手を強く握り、名を呼ぶ。

 ラルヴァは僕を見下ろして、手を握り返してくれる。それだけで、不安が薄れる。


「アルバート、知って欲しい。これも人の一面なんだよ」


「……」


「だけど、優しさもあることを忘れないで。人は、悲しさや憎しみだけではないから」


「うん」


 捕まって、痛くて怖い思いをした。でも、それ以上に……。

 学園は楽しかった。一緒に勉強したり遊んだりした。

 お城も楽しかった。魔法や剣の練習は楽しかった。

 怖いのも、楽しいのも忘れない。





 郊外まで来ると、兵士さん達は陣形を組み始めた。

 僕はラルヴァと一緒に、陛下の近くで皆を見守る。

 もう、止まらない。止められない。


 目に見える距離に、貴族さん達を中心とする隊が展開している。

 ここで進行を止めないと、学園に避難してる皆もどうなるか分からない。

 だから、僕は……。


「ラルヴァ、そろそろ戦闘が始まる。できる限りでいい。結界を頼む」


「はい」


 ラルヴァは膝を突くと、僕と目線を合わせ、両手で僕の手を繋いだ。


「アルバート、私の意思を森に伝えるのを手伝って欲しい。 少しでも、彼らを守るために」


「うん。僕もみんなが好きだから」


 本当は、ダメなんだと分かる。

 この場で森と意思をつなげるのは、きっと良くない。でも、僕は皆を守りたい。

 これは僕の意思。ラルヴァと在り、皆と出会い、生まれた思い。

 ラルヴァの手をしっかりと握る。


「ありがとう」


 僕は目をつぶると、遠く心を広げる感覚で森を感じ、近く心を合わせてラルヴァを感じる。


「皆を守る風を」


 ラルヴァが静かに、だけど強い思いを持って言の葉を紡ぐ。

 思いを、意思を、願いを合わせる。

 一陣の風が、願いに応えるように舞った。

 目を開けて周りを見渡すと、変化は見えないけど、守りの意思を感じる。





 剣を掲げ、弓を引き、戦闘が始まった。

 怖い、と思う。

 たくさんの人が、傷つき、動かなくなっていく。

 僕の手足が冷たくなって、心までも凍り付くような感じになる。


「アルバート。怖いと感じるのは、しょうが無い。むしろ正常だ」


「ウィル?」


「俺らは国を、国民を守るために戦うことを選んだ。命令されたからでなく、自ら考えて選んだんだ。無理に近づかなくても理解しなくてもいい、だけど知っておいてくれ」


 難しくて全部は分からないけど、ウィルの言葉はとっても暖かい。


「僕は、みんなすきだよ?」


 ウィルは、引き締めていた表情を一瞬だけ崩すと、僕の頭をぽんぽんと撫でた。


「ウィルさん、状況はどうでしょうか? 結界の効力もそろそろ切れると思いますが」


「数は向こうが上ですが、今のところ優勢です。乱戦に近い状態となってきてますので、魔法による援護は控えた方がよろしいでしょう。それに、この状況では弓も使えないので、結界の守護がなくても大丈夫です」


「じゃあ、僕は陛下に結界」「出られなくなるからいい」


 すかさず、陛下から拒否された……。

 最後まで言ってないのに!!

 たくさん練習したから大丈夫なのに!!


「膨れるな」


「膨れてない!!」


「そういうことにしとこう。まぁ、いざという時に頼むな」


「うん!!」


 陛下は少しだけ、表情を柔らかくしてくれた。

 そのとき、衝撃が僕を襲った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ