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アルバートと森の不思議な関係  作者: よし
3章 進む道
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スパルタな遊び


 白を基調とした清潔感のある部屋。

 そこは寝台と机だけが置いてあり、すこし寂しさを感じる。

 それでも、机の上に置かれた花瓶に生けた花、寝台に置かれた絵本、窓枠に鎮座する木彫りの小さい熊が、暖かさをもたらしている。


 僕はここ最近、この部屋に1人で閉じこもってる。

 普段なら寂しくて誰かを探しに行くところだけど、今はそれどころじゃない。

 ラルヴァから1人で魔法の練習をする許可がもらえたんだ!! とうとう、氷の熊さんを作る野望を叶えるときが来た!!

 床をビショビショにしちゃったから布団を被せたり、水を入れた容器を割っちゃったから寝台の下に隠したり大変だったけど、氷はもう作れるようになったからもうすぐだ!!

 ―――だけど床に置いた布団とか、寝台の下に隠した容器は、勝手にどこに行くんだろう?―――


 僕は両手で持った容器を、慎重に、ゆっくり傾けた。

 中に入った水が、ゆっくりとこぼれ出てくる。

 氷の熊さん、氷の熊さん、と呟きながら形作ってゆく。


「……」


 これは、何だろう。

 不気味な、なにかができた。

 頭は……、ある。目と耳が無くて、口っぽい謎の穴が在るだけだけど。

 体も……、ある。手なのか足なのか、10本以上は生えてるけど。


 衝撃を受けて、呆然としてると扉を叩く音が聞こえた。


「アルちゃん、入っていいかしら」


「はーい!! どーぞー!!」


 マーサおばちゃんが部屋に入ってくる。……お菓子は持ってないかー。


「ふふっ、お菓子はもうちょっと後でね。ちょっとお部屋に籠もりすぎだから、ウィルとお外に行ってらっしゃい」


 何故にお菓子のことがばれたのか? 何も言ってないのに。


「アルちゃん、その気持ちわ……、いえ、えっと机の上にある氷はどうしたの?」


 僕はマーサおばちゃんから目をそらすと、小っちゃく呟いた。


「熊さん……」


「……」





 居たたまれない雰囲気の中に、ウィルが突入してきた。

 部屋に引きこもり過ぎと言われて、そのまま抱えられると兵士さんがいっぱいいる所に連れてこられた。


「今日は、これで遊ぶぞ」


 そう言うと、木剣を手渡してきた。


「おおー!! 初めてだー!!」


 ブンブンと振ってみると、意外に重たい。

 周りの兵士さん達も同じ木剣を持ってて、一緒だと思うとなんか嬉しい。

 ただ、兵士さん達が、心配そうな感じで見てる? あれ、ちょっと違うかな、哀れみ?


「よし来い、アルバート!!」


「うん!!」


 構えたウィルに、木剣を大っきく振りかぶって、振り下ろす。

 ウィルの木剣と交差し、カンと高い音が響いた。


「ほら、どんどん来い!!」


 僕は「おりゃー!!」、「とりゃー!!」と言いながら何度も何度も、木剣を振りかぶった。

 ウィルは片手で持った木剣で、簡単そうに防いでる。しかも、あのすまし顔を見ると、ちょっとむきーって感じになる。

 しばらくすると、ウィルが攻撃してきたから、慌てて木剣を縦に構えた。


「うわっ!!」


 受け止めることが出来ずに、後ろに軽く飛ばされた。上手く着地なんかも出来ず、背中から地面に落ちると、その勢いのままゴロゴロと転がった。

 痛い……。背中も、腕も、足も……。

 我慢して起き上がると、ウィルと目が合った。ウィルは、表情を出さずに、ただ木剣を構えてる。


「……」


「……」


 あうー。逆らっちゃダメな感じをビシバシと感じる。痛いけど、まだ終わらないってことだよねー。

 転がってる木剣を拾うと、しっかり握ってからウィルに向かって行った。





 頬で感じる地面の感触が心地いい。

 でもでも、もう動けないよ!! じーっと見られても、無理な物は無理だよ!!

 手と足に力を入れても、プルプルするだけだし。


「どうした?」


「……!! ……!!」


 声も出ない。ちなみに、「もう動けない!! 助けて!!」と言いたかったです。


「ウィル、もう無理だろ。というか、鬼畜すぎだろ」


「あいつらより根性があったから、ついな?」


 ウィルが兵士さんの方を見ると、兵士さんたちは引きつった顔になって、一歩引いた。

 それを見たウィルの顔があくどい感じで、にやっと笑った。

 こわっ!! 笑顔なのにこわっ!!


「アルバート、俺はもうちょっと遊んでくるな。カーム、アルバートを少し頼むな」


「分かった。やりすぎるなよ」


 そこら中から、「そんなー!!」とか「隊ちょー!!」って助けを求める声が聞こえるけど。ウィルは何するつもりなの!? 遊ぶんじゃないの!?


「カームだ。よろしくな、坊主」


「アルバート……」


 どうにか名前だけ伝えた。よろしくって言いたかったけど。無理。

 お辞儀しなきゃいけないんだけど、起きれません。まだ、地面にべちゃーとつぶれてます。


「ほら、水だ」


 カームは僕を座らせて、訓練場に植えられた木に寄りかかる姿勢にしてくれると、水を差しだしてくれた。

 僕はお水を一気に飲み込んだ。

 ふー、落ち着いたー。お水がすごく美味しいー。

 目線をあげると、ウィルが見えた。


「……」


「大丈夫だ。坊主にはちゃんと手加減してくれるから。……多分」


 逃げ惑う兵士さん達に、ウィルが木剣を容赦なくたたきつけてる。

 とりあげず、視線は逸らす。あれは、見ちゃいけない、きっと知らなくていい。

 見ないことにして、カームと休憩する。

 鳴り止まない悲鳴を聞きながら。





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