帰城
バンッと音を立てて開いた扉を、ビクッとしながら見ると、ミーシャお姉ちゃんがすごい勢いで入ってきた。
僕と目が合うと、真っすぐ走ってくる。目が怖くて、逃げようとしたけどルークに捕まれてて動けない……。
「ミ、ミーシャお姉ちゃん、おはよぐぅーえ」
ルークからひっぺ返されて、力強く抱きしめられた。
ていうか、苦しい。
「ミーシャ、アルが死にそうだ。」
マークお兄ちゃんの声で我に返ったのか、力を緩めてくれた。
でも、僕はぐったりだ。
「あっ、ごめんなさい」
「アルバート君、大丈夫? お姉ちゃんが怖かったね。」
「ちょっと、サラ!!」
「まあまあ、とにかく無事でよかった」
アクセルが僕の頭をクシャクシャとしてきた。
「アル、食欲あるか? お城の料理だからきっと美味しいぞ」
「お腹すいたー!! マークお兄ちゃん、ごはん!!」
「持ってくるから待ってろ。アクセル手伝え」
「あいよ」
「あっ、私も手伝うわ」
マークお兄ちゃんとアクセル、サラはそう言って部屋から出て行った。
ご飯のお話したからか、グーッとお腹が鳴った。
「ふふっ、もうちょっと我慢してね」
「うん」
でもお腹がすいて、切ない……。
「ミーシャ、アル坊を頼むな。俺は学園長と話してるから」
しばらくすると、兵士さんたちが細長い机をいくつか持ってきた。
そのあとに、運んできたご飯を皆で食べることになった。
「うまっ!!」
マークお兄ちゃんとアクセルは、うまうま言いながら食べてる。
僕は無言。食べるのに忙しいです。
「お城のご飯が食べられるなんて!!」
サラが感動してる。美味しいもんね。
「私は、謁見の間で、しかも立ちながらご飯を食べるとは思わなかった」
お腹が落ち着いて、「美味しかった」とミーシャお姉ちゃんと話してると、陛下がやってきた。
「アルバート、食後はこの菓子がおすすめだ」
そう言って僕にお菓子を乗せたお皿を渡してきた。
綺麗にいただきました。
「美味しい!!」
陛下は嬉しそうにして、マークお兄ちゃん達にも配り始めた。
「うまっ!!」
マークお兄ちゃんとアクセルは、さっきからそれしか言ってない。
「あっ、すいません。マークと言います。アルバートの知り合いですか?」
「ああ」
そう言うと、陛下は僕を抱き上げてから、髭を擦りつけてきた。
「陛下、お髭いたい!!」
顔をしかめて、陛下の顔を手で押しのけた。痛いし、じょりじょりしてヤダ。
「えっ!?」
誰かのびっくりしたような声が聞こえた。
見ると、皆がびっくりした顔で固まって、こっちを見てる。
「……えっと、なに?」
「って本当に陛下じゃないですか。変装までして何やってるんですか」
兵士さんが慌てて声をかけてきたと同時に、皆が騒ぎ出した。
すごかった。うん。
あんな混乱した場は初めて見た。良く分からない意思もめちゃくちゃに乱れ飛んでて、陛下からだけはすごく楽しそうな意思を感じたけど……。
「俺、すごい不敬をしたような」
マークお兄ちゃんが陛下を見ながら茫然と呟いてる。
ちなみに、陛下はラルヴァとお話し中。
「アクセル、アクセル!! あれ取って!!」
「ほいよ。これも食べるか?」
「うん!!」
「お前らはどんなときも通常運転だな……」
「ルーク!! ルークも食べる?」
「いや、いい。それより、アル坊とマーク、陛下と学園長が呼んでるから行くぞ」
「うん。これ食べたら行くね」
アクセルからお菓子を受け取ろうとしたら、マークお兄ちゃんにいきなり抱えあげられた。
「マークお兄ちゃん、降ろして!! まだ食べてないの!!」
「いや、ないだろ。陛下よりお菓子を優先すんなよ」
マークお兄ちゃんの脇に抱えられながら、陛下の前まで連れてこられると、そこでやっと降ろされた。
折角アクセルが持ってきてくれたのに。
絶対おいしいのに。
「ほら、アルバート、これ食べてみろ」
陛下は僕の口に何かを入れてきた。
もぐもぐすると、ちょっと硬い。さらにもぐもぐすると、甘くなってきた!!
さすが陛下!! と思いながら見つめた。
「ふっ、ちょろいな」
「やっぱり自衛の魔法を教えても、食べ物で誘拐されるかな?」
ラルヴァが苦笑してるけど、そんなことより魔法!! まだ駄目って言われてたけど、もういいのかな!!
「魔法!! 教えて!! 僕もお犬さん作りたい!!」
「犬?」
「俺じゃない、私が水から作った氷の犬のことです」
「ああ、なるほど。後、敬語は不要だ」
「陛下……」
ラルヴァはいつも陛下を呆れた目で見てる気がする。
陛下から、また悪い人に捕まるといけないから、僕はお城にしばらく住むんだよと言われた。
あと、ラルヴァも魔法を教えてくれるらしい。
「大丈夫か?」
陛下が聞いてきたから「うん」と頷いた。
「マーク君、どう思う? アルバートは城で暮らせるかな?」
マークお兄ちゃんは僕をちらっと見てから、ラルヴァに答えた。
「無理じゃないでしょうか」
「えー!! 大丈夫だよ!!」
マークお兄ちゃんに抗議すると困った顔をして、僕に質問してきた。
「1人で寝れないだろ? というか、城にアル1人だけになるけど?」
「なっ何で!! マークお兄ちゃんは!?」
「俺は授業があるから学園」
「ルッルークは!?」
「俺は教師だからな。マークより無理だ」
すがりつくようにラルヴァを見た。
「ごめんな。学園長としての仕事があるからずっとは一緒に居られないんだ。なるべくは居るようにするけど」
だれも一緒に居てくれない……。
ん? お城だと駄目なら。
「一緒に帰る」
マークお兄ちゃんにくっついてから、陛下にバイバイと手を振った。
「ブハッ」
「うわっ!! 陛下きたない!!」
陛下の口から唾が飛んできた。「もー」と言いながら袖で顔を拭った。
「悪い悪い。友達の誰かがいるなら大丈夫か? あと、ウィルでも大丈夫か?」
1人じゃないなら大丈夫かなと思って頷いた。ウィルはもちろん友達です。
皆が交代でお城に遊びに来てもらうからと言われて、僕はお城に居ることになった。




