再会
「はあ、はあ、アルバート!! 無事か!?」
息を切らせたラルヴァとルーク、それに兵士さん達が部屋に入ってきた。
「ラルヴァ!! ルーク!!」
涙を流しながら呼ぶと、二人とも走って僕の方に来てくれた。
ウィルの横に来ると、ラルヴァが僕の周りに展開している膜に触れた。
「解除」
ラルヴァが呟くと、触れている箇所からふっと守りが消えた。
ウィルが近づいてくると、倒れてる僕を抱き起こしてきた。
「あっぐぅぅ」
蹴られたお腹に痛みを感じてうめき声が出た。
ウィルは慌てて僕を降ろして、横たえてくれた。僕は両手でお腹を押さえて、体を丸めて痛みに耐えた。
「アルバート!?」
「アル坊、怪我してるのか!?」
ウィルとルークの心配する声が聞こえるけど、痛くて返事ができずにいた。
「我が同胞に安らぎを」
「我が同胞を在りし形に」
「我が同胞が失いし力をここに」
ラルヴァの力在る声と意思が続けざまに僕に触れ、押さえていたお腹から痛みがなくなった。
僕がきょとんとしていると、ラルヴァが微笑んできた。
「痛くなくなった!! ラルヴァ、ありがとう!!」
お礼を言っていると、横にいるルークとウィル、他の兵士さん達がすごく驚いた顔をしてるみたい……。
とりあえず、動けるようになったから、起き上がってラルヴァに飛びついた。
足の鎖がジャラジャラと音を立てて、ラルヴァとルークが僕の足を見てきた。すると、ウィルと同じように顔をしかめた。
「これ、取れないの」
「こんなものまで!!」
ルークがすごく怒ってて怖い……。
「我が同胞から束縛の解除を」
パキンと軽く高い音がしたかと思うと、僕の足から鎖が外れた。
「おおー!! ラルヴァすごい!!」
足をブラブラさせながら、ラルヴァを尊敬のまなざしで見た。
「いや、これは凄いどころじゃないだろ……」
ルークが呆然と呟いてる。ウィルも何か聞きたそうに、ラルヴァを見てる。
「とりあえず、アルバートを城へ連れて行こう」
ウィルが頷くと、僕を抱え上げて移動を始めた。
ウィルに抱えられたまま、お城に到着した。
「ウィルさん、よろしければ謁見の間へアルバートと向かいたいんですが」
「陛下に報告ですか? 先にアルバートを休めさせた方がいいのではないですか?」
「いえ、我々『森と在るもの』にとって、あの場は回復に最も適した所なんです」
ウィルは不思議そうな顔をしながらも、確認してきますと言って、僕をルークに預けると先に進んでいった。
折角お城に来たし、ウィルを待っている間に、色々見てみたくなった。
「ルーク。降ろして」
「ダメだ」
ルークはあんまり抱っこしないから、すぐに降ろしてくれると思ったのに。
「なんで!!」
「高そうな調度品があるのに、お前を野放しにできないだろ」
「よく分かんないけど、降ろして!!」
「だから無理」
頬を膨らませて、ルークに無言で抗議してると、ウィルが戻ってきた。
「お待たせしました。謁見の間は今は使用していないというか、使用できないので皆さんで好きにすごして良いそうです」
「ああ、そういえばアルバートが……」
ラルヴァが呟くと、ルークが鋭い目をして僕を見てきた。
「アル坊、なにやったんだ」
「えっと、お部屋をグチャグチャのメチャクチャにしちゃった」
「……」
ううっ。ルークが怖い。
謁見の間に入ると、やっと降ろされたので部屋の中を見てまわった。
椅子とか、木片の残骸が部屋の端にまとめられてるだけで、飾りとかはなくなってた。
「アル坊、本当に謁見の間が、酷い有様なんだが……」
後ろからいつもより低い声でルークが声をかけてきた。
怒られる気がして、振り向かずに部屋の端っこまで、走って逃げた。
恐る恐る振り返ると、ちょっと離れたところでルークが呆れた顔をしながら僕を見ていた。
……うん。あれは大丈夫だ。お説教するときの顔じゃない。
ほっとしてると、ラルヴァが座り込んでいて、ウィルが心配そうにしているのが見えた。
不安になってラルヴァの所へ走り寄った。
「ラルヴァ、どうしたの? 痛いの?」
ラルヴァは「疲れただけだから大丈夫」と答えると、僕の頭を撫でてくれた。
「学園長、本当に大丈夫なんですか?」
ルークも近くに来て心配そうに話している。
「ああ。魔法を使った反動で疲れてるだけだから。ここで休めばすぐに回復する」
「そういえば、アルバートを助けに行ったときに結界のようなものがあって、近づけなかったのですが……。あれはどういった力なのですか?」
「拒絶の意思を込めた守りです。遠くから使えたのは宝玉の力でアルバートとつながりがあったからですね」
「拒絶ですか……」
ウィルが難しそうな顔をしながら、「部下の訓練に使えるか?」とか呟いてる。
「到着したときに使われたアル坊の怪我を治した力と、拘束を外した力も宝玉の力なんですか?」
「いや、違う。宝玉はもうあの場にはなかったから……。あそこまで大きな力となったのは、私が『森と在るもの』であり、対象がアルバートだったからだ」
「『森と在るもの』は大きな魔法の力を使えるということですか?」
ラルヴァを頷くと、少し考えてから答えた。
「私とアルバート……、『森と在るもの』は、自身そのものが触媒のようなものなんだ。世界意思を感じ、伝えることが出来る。直接、世界意思に触れているようなもので、普通の人より大きな力を使うことができる」
ルークが興味深そうに僕を見てきた。なんだろう? 怒ってないけど、なんだか怖い。
「アルバート、ルークは研究者だから気をつけなさい。実験材料にされるから」
「実験材料って?」
ラルヴァに聞き返したら、何故かルークに両肩を捕まれて向きを変えられた。
「アル坊、大丈夫だ。それは、アル坊が面白そうで興味深い素材、いや検体か? なだけだから。ふふふっ」
こっ、怖い。よくわかんないけど怖い。
どうやって逃げようか考えていると、謁見の間の扉がすごい勢いで開いた。




