届いた声
優しく、慈しむたくさんの声が僕に触れてきた。
(私たちの子)
(大丈夫)
(願って)
(お友達を呼んで)
(私たちの子)
たくさんの意思が僕に染みこんで来る。どれも懐かしくて、優しくて……。また涙がでるけど、苦しみからのものではなくなった。
(さあ、願って)
(大切な人を呼んで)
優しく促され、僕は触れた意思に近づき、重なると願いを口にした。
「助けて!! ラルヴァ!!」
(私たちの子)
(私たちに声は届いた)
(彼らにも届いた)
僕を見ていた宰相は、目を見開き慌てて距離を取った。宰相が首から提げている高級そうな箱から光が漏れている。
「まさか!? 触れてすらいないのに宝玉の力を!?」
窓もない部屋の中にもかかわらず、柔らかな風が僕を撫でてきた。
突然、ゴゥッと音が弾けると、僕を中心に風が渦巻いた。
びっくりして閉じていた目を開けると、机も椅子も、そして人も吹き飛んだみたいで、僕から離れた壁近くに倒れていた。
(アルバート!?)
「ラルヴァ!! どこ?」
声が聞こえたけど、周りを見てもラルヴァは居ない……。
「ひっく、ラルヴァー。どこー」
(アルバート! 落ち着きなさい)
声を掛けられて、少し落ち着くと胸の辺りが暖かいことに気づいた。
首から掛けていた紐を引っ張り、お守りを服から取り出してみると、これから声が聞こえていることが分かった。
「ラルヴァ!! ラルヴァー!!」
(大丈夫。ちゃんと聞こえているよ。アルバートの居る場所が分かったから、すぐにみんなで向かう。だから、そこから動かないように)
「うん。動けないからここにいる」
(動けない?)
ラルヴァに現状を伝えようとしたところで、吹き飛んで倒れていた人たちが起き上がって、宰相と呼ばれていた人を助けていた。
「大丈夫か?」
「ああ。それより状況は」
「どうやら、あの餓鬼に飛ばされたようだ。その後は、ぶつぶつと一人で話してるみたいだが?」
「まずい!! 外部に連絡をしている」
「眠らせて、運ぶか?」
「いや……。あれは危険すぎる」
「ならば口封じを?」
「ああ」
宰相と話していた大柄な男が、口角を上げながら刃物を手に僕の方に近づいてきた。
「ひっ」
逃げようとしたけど、怖くて震えて動けない。
男が僕を切り裂こうとするのを、ただ見ていた。そのとき、ラルヴァの声が、意思が僕を包んだ。
(我が同胞を守りし、拒絶の壁を!!)
キンッという音とともに、薄い膜が僕の周りに展開した。
それは男の凶刃を容易く防いだ。それが気に入らなかったのか、顔を歪ませると、何度も刃を立ててきた。
「もういい!! 引くぞ!!」
宰相の怒鳴り声がすると、男は舌打ちをしてから走り去った。
(アルバート!! 無事か!?)
「ラルヴァー!! もうヤダー!!」
僕は叫び泣いた。
誰も居なくなった部屋で、時間の感覚も曖昧に、でも泣き続けた。
「アルバート!!」
僕の泣き声だけが存在していた中に、いきなり大きな声が割り込んできた。
近づいて来るたくさんの足音に怯え、恐慌した僕は叫びながら逃げようとした。
「落ち着くんだ!! 俺だ、アルバート!!」
聞いたことのある声に振り向くと、僕を包む膜を叩くウィルが居た。
「ウィル!! ウィルー!!」
動けない僕は座り込んで、手を伸ばして名前を呼んだ。
「アルバート、これは魔法か? 結界のようになっていて、近づけない。解けるか」
「ヒック、ヒック……。ラルヴァ、じゃないと、無理」
泣きながら、魔法のことをウィルに話した。
ウィルはしゃがむと僕の足を見て、顔をしかめてから、ラルヴァがすぐに来ることを教えてくれた。
あと、周りにいる兵士さん達も味方だから安心するように言われた。




