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アルバートと森の不思議な関係  作者: よし
2章 建国祭
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届いた声


 優しく、慈しむたくさんの声が僕に触れてきた。


(私たちの子)


(大丈夫)


(願って)


(お友達を呼んで)


(私たちの子)


 たくさんの意思が僕に染みこんで来る。どれも懐かしくて、優しくて……。また涙がでるけど、苦しみからのものではなくなった。


(さあ、願って)


(大切な人を呼んで)


 優しく促され、僕は触れた意思に近づき、重なると願いを口にした。


「助けて!! ラルヴァ!!」


(私たちの子)


(私たちに声は届いた)


(彼らにも届いた)





 僕を見ていた宰相は、目を見開き慌てて距離を取った。宰相が首から提げている高級そうな箱から光が漏れている。


「まさか!? 触れてすらいないのに宝玉の力を!?」


 窓もない部屋の中にもかかわらず、柔らかな風が僕を撫でてきた。

 突然、ゴゥッと音が弾けると、僕を中心に風が渦巻いた。

 びっくりして閉じていた目を開けると、机も椅子も、そして人も吹き飛んだみたいで、僕から離れた壁近くに倒れていた。


(アルバート!?)


「ラルヴァ!! どこ?」


 声が聞こえたけど、周りを見てもラルヴァは居ない……。


「ひっく、ラルヴァー。どこー」


(アルバート! 落ち着きなさい)


 声を掛けられて、少し落ち着くと胸の辺りが暖かいことに気づいた。

 首から掛けていた紐を引っ張り、お守りを服から取り出してみると、これから声が聞こえていることが分かった。


「ラルヴァ!! ラルヴァー!!」


(大丈夫。ちゃんと聞こえているよ。アルバートの居る場所が分かったから、すぐにみんなで向かう。だから、そこから動かないように)


「うん。動けないからここにいる」


(動けない?)


 ラルヴァに現状を伝えようとしたところで、吹き飛んで倒れていた人たちが起き上がって、宰相と呼ばれていた人を助けていた。


「大丈夫か?」


「ああ。それより状況は」


「どうやら、あの餓鬼に飛ばされたようだ。その後は、ぶつぶつと一人で話してるみたいだが?」


「まずい!! 外部に連絡をしている」


「眠らせて、運ぶか?」


「いや……。あれは危険すぎる」


「ならば口封じを?」


「ああ」


 宰相と話していた大柄な男が、口角を上げながら刃物を手に僕の方に近づいてきた。


「ひっ」


 逃げようとしたけど、怖くて震えて動けない。

 男が僕を切り裂こうとするのを、ただ見ていた。そのとき、ラルヴァの声が、意思が僕を包んだ。


(我が同胞を守りし、拒絶の壁を!!)


 キンッという音とともに、薄い膜が僕の周りに展開した。

 それは男の凶刃を容易く防いだ。それが気に入らなかったのか、顔を歪ませると、何度も刃を立ててきた。


「もういい!! 引くぞ!!」


 宰相の怒鳴り声がすると、男は舌打ちをしてから走り去った。


(アルバート!! 無事か!?)


「ラルヴァー!! もうヤダー!!」


 僕は叫び泣いた。





 誰も居なくなった部屋で、時間の感覚も曖昧に、でも泣き続けた。


「アルバート!!」


 僕の泣き声だけが存在していた中に、いきなり大きな声が割り込んできた。

 近づいて来るたくさんの足音に怯え、恐慌した僕は叫びながら逃げようとした。


「落ち着くんだ!! 俺だ、アルバート!!」


 聞いたことのある声に振り向くと、僕を包む膜を叩くウィルが居た。


「ウィル!! ウィルー!!」


 動けない僕は座り込んで、手を伸ばして名前を呼んだ。


「アルバート、これは魔法か? 結界のようになっていて、近づけない。解けるか」


「ヒック、ヒック……。ラルヴァ、じゃないと、無理」


 泣きながら、魔法のことをウィルに話した。

 ウィルはしゃがむと僕の足を見て、顔をしかめてから、ラルヴァがすぐに来ることを教えてくれた。

 あと、周りにいる兵士さん達も味方だから安心するように言われた。




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