捕らわれた力
暴力描写があります。
堅くて冷たい感触を頬から体全体で感じて、意識が浮上してきた。
ボーッとしながら、目を開けてみると、何故か床に転がってた。
とりあえず起き上がろうとしたら、ジャラジャラと音が聞こえてきた。音の元を辿ると、僕の足が鎖に繋がれていた。
「えっ、なにこれ!?」
上半身を起こしてから、どうにか鎖を外そうとしてみたけど、ビクともしない。
どうすればいいか分からなくて、「ヒック、ヒック」と止まらないしゃっくりをしながら鎖をいじっていると、「起きたか」と低く冷たい声が聞こえた。
鎖を外すのに夢中で気づかなかったけど、3人の大きな人たちが近づいてきていた。
「ヒック、これ取ってー!! お願い!!」
3人とも僕の言葉を聞かず、それぞれが話を始めた。
「本当にこんな餓鬼が必要なのか?」
「さぁな。貴族様の考えることは分からん。ただ、長も重要視してるからな。さすがに長の指示は蔑ろにはできん」
「そうだな。この後は……」
鎖に繋がれて、知らない場所と人、怖くて何も考えられなくなった。
「ヒック、ラルヴァー、ラルヴァー、うぁー」
心のまま声を出して泣いていると「チッ」と舌打ちが聞こえて、バンッと音とともに顔に衝撃を感じて倒れ込んだ。
頬がジンジンとして、頭もガンガンしている。殴られたと気づいて、恐怖でいっぱいになって、叫びそうになった。
「騒ぐなら、黙るまで殴る」
静かに、低い声で、怒気を含みながら警告をしてきた。
恐怖で泣き叫びそうになるのを必死に押さえ込んだ。
「ヒック……」
「そこで、黙っておとなしくしてろ」
そう命令すると、僕から少し離れていった。
声を押し殺して、倒れたまま泣いていた。
気づくと、綺麗な服を着た人たちが僕を見下ろしていた。
「この子供ですか?」
奥の方から、低い声が聞こえた。さっき、僕を殴った人たちの誰かだ。
怖くて、涙がどんどん出てくる。我慢できなくなって、小さく震えた声をあげた。
「うぁ、あっ。助けて。ラルヴァのとこに返して」
必死に、見上げながら手を伸ばした。
でも、僕の手も願いも届かず、きびすを返して離れていった。
耐えきれず、泣き声が出る。
「城で見たから間違いないだろう」
「では、その子供が謁見の間の惨状を?」
「ああ。詳しい話は宰相殿が来てからだな」
「それにしても、子供の泣き声は不愉快ですな」
「そうだな。ここからは声は漏れないだろうが。おいっ、こいつを黙らせろ。ただし、絶対に殺すな」
上半身を起こされて、後ろから猿ぐつわをかまされた。
頭の後ろで布を結ばれるのが分かって、慌てて僕は暴れて外そうとした。
そのとき、ドッという音とともに、衝撃がきた。すぐにお腹から痛みを感じて、苦しくなって、猿ぐつわをされた口からうめき声が出た。
僕は、息ができず苦しくなって崩れ落ちて、お腹にめり込んでいた足が引かれた。
床に転がり、膝と背中を丸めて痛みに耐えてると、少しずつ痛みが引いてきた。
そうすると、若干落ち着いてきて周りを見る余裕が出てきた。まだ痛くて体は動かせないけど。
僕は部屋の角っこのほうに転がっているみたい。目の前に見える床は、古そうな木でできていて、ほこりがたくさん溜まってる。
部屋自体は広いけど、椅子や机、それに大きな箱がたくさん置かれていて、狭く感じる。
怖くてあまり見れないけど、部屋の中心から向こう側にかけて、椅子や床に座ってぼそぼそと話をしている人たちがいる。
さっきの綺麗な服を着た人はいなくなったけど、いつ部屋に入ってきたのか、今は10人くらいに増えてる。
それを見て、また怖くなってくぐもった小さい声を出しながら泣いてると、さっきの綺麗な服を着た人が部屋に入ってきた。その後ろから、確か王城で陛下の隣に居た人が続いて、僕の方に近づいてきた。
「宰相殿、これで必要なものはすべて揃いましたな」
「ああ。ただ、こいつが浚われたことで、陛下が思いの外、多くの兵を動かした。内通者を使った案でなく、彼らの伝手で砦まで移動した方がいいだろう」
「彼らの長の指示で、移動に関しては問題ないようです。ただ……」
言葉を句切ると、僕を見下ろしてきた。それにならって、宰相と呼ばれた人も僕を見た。
「これの移動が困難か」
「はい。彼ら、あと私兵で確認しましたが、兵も多く検閲も厳しいようです」
宰相は僕を見ながら少し考えると、顎を触りながら話し始めた。
「偽装した商隊で運ぶのが無理そうなら、検閲は強行突破で運び出せ。戦力的に問題ないだろう」
「では戦闘となる準備もさせておきましょう。しかし、この子供にそこまでの価値がありますか?」
「ある。宝玉を使うには『森と在るもの』が必要だ」
「砦には既に捕らえた者がいますが?」
「通常、宝玉を使うと力に耐えきれず、死ぬことになるそうだ。1回でも使えれば十分な効果だが、その子供は何回かは使えるだろうとのことだ」
冷たく、ただ道具を見るかのように僕を一瞥してきた。死ぬと言う言葉と、話してる人たちの目を見て、震える体を一生懸命に動かして、少しでも離れようとした。
宰相は2歩だけ歩いて僕に詰め寄ると、しゃがんで僕の顎を無理矢理に持ち上げてきた。
「お前はおとなしく私たちの命令に従え」
怖くて止まらない涙を流してると、優しく懐かしい声が聞こえた。




