闇の兆し
今日はミーシャお姉ちゃんとサラ、そしてウィルと出かけることになった。
マークお兄ちゃんとアクセルは頑張って水飴を作る係らしい。また食べたい……。ルークは今日も警備だけど、明日は一緒に居られるらしいから楽しみ。
「期間限定の焼き菓子はいかがですかー?」
元気で明るい声がお店から聞こえてきた。焼き菓子、美味しいのかなぁ? 期間限定って聞いたことないけど、どんな味なのかな?
僕の服の服を掴んでるウィルを見て聞いてみた。ちなみに服はウィルが何回も引っ張るから、よれよれだ。
「期間限定って美味しいの?」
「どうだろ? あれは食べたことないな」
食べてみたいなー。やっぱりダメかなぁー。さっきも、もうすぐお昼だから我慢しなさいって言われたし……。
とりあえずお願いしようと思ったところで、ミーシャお姉ちゃんがウィルに話しかけた。
「ウィルさん、違いますよ」
「違う?」
「ええ、アルバート君は焼き菓子の名前が、期間限定と思ってますよ」
「そうなのか?」
僕はウィルに「違うの?」と聞いた。そしたら、ウィルの代わりにサラが答えてくれた。
「違うわよ。期間限定は今しかないって意味よ。それにしても、ミーシャよく分かったわね」
「まあ、一緒に居る期間が長いからね」
今しかない……。ということは、あのお菓子が今しか食べられない!!
「食べよう!! 食べなきゃ!!」
服が掴まれてるから、ウィルを必死に引っ張ってお店に行こうとした。でも、ウィルは笑ってるだけで動いてくれない。
「ウィル!! 早く行かないと!! 食べられなくなっちゃう!!」
「ダメだ。これからお昼に向かうんだから」
「でもでも、えーっと期間限定なんだよ!! 今しか食べられないんだよ!!」
必死にお願いしたけど、ウィルに「ダメだ」って言われた。泣きそうになっていると、ミーシャお姉ちゃんが頭を撫でてきた。
「ふふっ大丈夫よ。期間限定は建国祭の間って意味だから。お昼の後でも食べられるわよ」
見上げてミーシャお姉ちゃんに「本当?」と聞くと、「本当よ」と返してくれた。僕は名残惜しくお店を見た。
「あははっ、お目々にいっぱい涙を溜めちゃって。かわいいー」
期間限定の焼き菓子は、お昼が済んでから食べることになった。
お昼を食べ終えてから、大通りをみんなでぶらぶらして、見てまわることになった。期間限定の焼き菓子はしっかり食べました!!
きょろきょろしながら歩いていると、家族連れがいっぱいいるところを見つけた。
よく見ると、野外の広い範囲に囲いが設置されており、入口と出口が用意されているみたい。僕と同じか少し大きい子が、囲いの中から出てきては何かを貰ってるみたいだ。
「あれって何してるの?」
「うーん? あそこが受付かな? ちょっと聞いてくるね」
サラはそう言うやいなや、囲いがある方へ走って行った。
「みんな何か貰っているね」
「そうね。たぶん、あの催しに参加して景品を貰ってるんだと思うんだけど」
「そうだろうな。毎年、子供向けに色々やってるからな」
僕たちが話してると、サラが戻ってきて説明をしてくれた。
「あれは宝探しをしてるんだって」
「宝探し?」
「あそこ、ぐるっと囲まれてるでしょ。あの中は迷路になっていて、宝が置いてあるんだって。それを見つけて、お菓子やおもちゃと交換してもらうんだよ。参加してみる?」
サラのお話を聞いて、とっても楽しそうと思っていたので、すぐに「うん!!」と答えた。
受付を済ますと、ウィルが「出口で待ってるからな」と言ってきた。
「なっ、なんで!!」
一緒に来てくれないことにびっくりして、慌てて呼び止めた。
「なんでって? 宝探したら、出口から出てくるんだろ?」
僕が「そうだけどー」とうじじしてる横で、ミーシャお姉ちゃんとサラが面白そうにしていた。
「勝手にあちこち行くのに、これはダメなのかしら?」
「たぶん、一人でいってらっしゃいと言われるのがダメなんじゃない?」
「あー、そうかもね」
「どうするんだ? やめるか?」
僕はぶんぶんと首を振った。
「じゃあ、しっかり宝を見つけてこい」
頷いてから、しょんぼりしつつ入口の中に入った。
中は狭い通路が作られていて、くねくねした道で、分かれ道もいくつかあった。道を作る壁は高くはないけど、僕よりは十分に高くて周りは見えない。
早くみんなの所に帰りたくて、走りながら宝探しをしていると、突然大きな音と振動が僕を襲った。
周りの壁も吹き飛んだり、ひしゃげたりしている。僕も爆風に煽られて壁にぶつかった。壁自体は柔らかかったから、怪我はしなかったけど。
「鼻が痛い……」
壁にぶつけた鼻をさすりながら立ち上がると、突然、後ろから口を押さえられた。その後、すぐに目を開けてられなくなって意識が落ちていった。




