閑話
今日もマークお兄ちゃんと一緒に教室へ入った。
そのあとは、僕の机と椅子があるからそっちに座ろうとしたけど……。ミーシャお姉ちゃんに捕まって膝の上に乗せられた。
降りようとしては、抱えなおされを何度も繰り返し、疲れて動けなくなった……。諦めてぐてーっとすると、マークお兄ちゃんに笑われた。
マークお兄ちゃんに助けをお願いしようとしたら、ルークが教室に入ってきた。
「ルーク、おはよー!! 助けてー!!」
「ああ、おはよう。今日は建国史からだな」
ルークは僕をそのままにして、授業の準備を始めた。
僕は「がーん」とショックな顔で打ちひしがれていると、ルークにも笑われた。マークお兄ちゃんはずっと笑ってる。
「じゃあ、始めるぞ」
そう言って授業が始まると、僕はやっと降ろされたので自分の机に座った。
今日は読めるようになった文字の書き取りのお勉強。ルークから渡された紙を見ながら、同じ内容を別の紙に書き写していった。
半分くらい書き写したあたりで、ルークの授業が終わった。ルークは僕のところに来ると、僕が書いた紙を手に取った。
「おっ。結構できたな」
僕は頷いて、「がんばったー」と言った。
「ああ、良く頑張ったな。今日はここまでで、続きは今度な」
褒められて嬉しくなりながら「うん!!」と元気に答えた。
ルークは僕の頭を撫でると「ああ、そうだ」と呟いた。
「マークはしばらく忙しいから、ミーシャのところで寝ることになったからな」
ルークがそう言うと、マークお兄ちゃんが不思議そうな顔をした。
「俺、別に忙しくないですけど?」
「お前は補修だ」
マークお兄ちゃんは「うあぁー」と変な声を出して、机にべちょっと倒れた。
溶けたようなマークお兄ちゃんを見ながら、「今回は仲間もいるぞ」とルークが伝えた。
「仲間? でも、この学年の担当はここだけじゃないんですか?」
「そうだが、アクセルも呼んだ」
「えっ、ルーク先生はあいつの授業に何も関わってないじゃないですか?」
「今回は職権乱用してみた」
「職権乱用って、何でそんなことを……。あー『お父さん事件』の報復かー」
「あいつには、しっかりと教育しないといけないからな」
ルークはちょっと怖い笑みを浮かべてた。そんな様子を見ながら「あいつも大変だなー」と呟いた。
「まあ、話を広めまくった奴にもしっかりと教育が必要だしな。丁度いい」
マークお兄ちゃんはそっとルークから目をそらした。
二人のやり取りを見ていると、ミーシャお姉ちゃんが「これを自業自得と言うのよ」と教えてくれた。
そうして解散すると、僕はミーシャお姉ちゃんと手をつないで寮に連れて行ってもらった。
ミーシャお姉ちゃんの部屋に入れてもらうと、お花のいい匂いがしてきた。クンクンと匂いを嗅いでいると、いきなり鼻を摘ままれた。
「ふがっ!!」
「ふふっ。変な声ー」
「ミーシャお姉ちゃん、酷いー」
僕がほっぺを膨らませて文句を言うと、「ごめんねー。お菓子あげるから」と頭を撫でられた。
「お菓子!!」
「用意するから椅子に座ってまっててね」
僕は「うん」と頷いてから、椅子によじ登った。
椅子の上に立つと、食卓の上に色とりどりのお花が花瓶に生きてあるのが見えた。綺麗だなーってお花を見てると、いい匂いがしてきた。
背伸びして、お花の近くに顔を頑張って近づけて匂いを嗅いでいるとミーシャお姉ちゃんが戻ってきた。
「何してるの?」
「いい匂いがするのー。甘い匂いだから、美味しいのかなぁ?」
「お花は食べちゃダメよ……」
ミーシャお姉ちゃんは呟きながら、お菓子と飲み物を並べていった。
僕はお花からお菓子に視線を移すと、ジーッと見つめた。
「食べたい?」
お菓子からは目を離さずコクコクと頷いた。
ミーシャお姉ちゃんは食卓の真ん中にお菓子のお皿を置くと、一つを摘まんでゆっくりと口まで運んでから「美味しー」と言って食べた。
僕も食べたくて、また背伸びしてお菓子の方へ手を伸ばしたけど、お皿まで届かない……。
頑張ってつま先立ちして、腕をピーンと伸ばしてお菓子を取ろうとしたけど、やっぱり届かない……。
「ミーシャお姉ちゃん! お菓子食べたい!」
ミーシャお姉ちゃんは笑いながら僕を見てるだけで、お菓子を取ってくれない。
じわーっとなって泣きそうになると、ちょっと慌てて一つ摘まんで僕の口に入れてくれた。
「どう? 美味しい?」
「うん。美味しい」
微笑みながらお菓子のお皿を僕が届くとこに置いてくれた。今度は自分でお菓子を摘まんで食べ始めた。
お菓子を頬張っていると、「たっだいまー」と言って知らない女の人が部屋に入ってきた。
「おかえりー。焼き菓子あるけど食べる?」
「うん。食べる」
そう言って、上着を脱ぎながらこっちに来ると、僕と目が合った。
僕が固まってると、「この子がアルバート君?」とミーシャお姉ちゃんに聞いていた。
「そうよ」
「へー。この子がルーク先生の……」
まじまじと僕を見てきて、ちょっと居たたまれない感じでいると「美味しそうね」と言われた。
びっくりして「えっ!?」と言うと、「ほっぺとか柔らかそうで美味しそう」と返された。
僕は怖くなって、急いで椅子から降りると、女のひとから離れた。そしてミーシャお姉ちゃんのところに駆け込んだ。
「どうしたの?」
いきなりしがみついてきた僕に、首を傾げながら聞いてきた。
「ほっぺが美味しそうって!! 食べられちゃう!!」
僕は半ベソになりながら、ミーシャお姉ちゃんにしがみついて隠れた。
「あはは。可愛い反応!!」
ミーシャお姉ちゃんは僕を抱きかかえると、優しく声をかけてきた。
「アルバート君を食べたりしないから大丈夫よ。この子は同じ部屋のサラ」
僕はサラの方を向くと、ちょっと怯えながら「食べない?」と聞いた。
「食べないわよ。私はサラ。よろしくね」
「アルバートです。よろしくお願いします」
挨拶をしてからは、新しいお友達のサラとミーシャお姉ちゃんと一緒に遊んで過ごした。




