帰還
僕は「嬉しい」気持ちを一番感じる木を探して、走り寄った。
見上げると、木の葉に水滴がたくさんついていて、降り注ぐ光りを浴びてきらきらしていた。
(大丈夫? 上手くできた?)
(私たちの子。ありがとう。今は淀みも歪みも消えている)
僕はホッとしながら(本当!!よかったー)とはしゃいだ。
(私たちの子。お友達にこれを渡してあげて)
目の前に淡い光が現れると、その中から澄み切った宝石が3つ、僕の手に落ちてきた。
(わー! キレー! これ何?)
(私たちが願いを聞いて、力を貸す過程を通ったもの。お友達が媒体と呼んでるもの)
(あっ!! ミーシャお姉ちゃんが探してやつだ)
(これは何度も願いと力を通したもの。だから力が強い。お友達の願いに対して、私たちから送れるもの)
(うん。わかったー。ちゃんと渡すね)
(私たちの子。あなたにはこれを)
一枚の葉が降ってくると、僕の前で結晶のようになって、手の上に触媒と一緒に乗ってきた。
(これはお友達があなたを大切にする願いから、私たちの力を通して生まれたもの。きっと、あなたを守るものとなる)
(うん。ありがとー。大切にするね)
(さあ、お友達が待ってる。行きなさい)
(うん。またねー)
僕はもらった触媒とお守りを両手で落とさないようにしながら、みんなのところへゆっくりと戻った。
みんなの元に戻ると、ルークが「どうだった?」と聞いてきた。
「綺麗な、えっと、触媒?をもらったよー!!」
僕が両手を前に出して「ほらっ」と見せた。
「アル坊、よくわからん。何で触媒を貰うことになったんだ?」
「あっ、瘴気が無くなったんだって。それで、これがお礼だって」
僕は触媒をみんなに一つずつ渡した。
「アルのおかげで探さずにすんだなー」
「ええ。それにこれはとっても綺麗ね」
ルークがちょっと難しい顔をしてるのが気になって「どうしたの?」と話した。
「これは国宝級なんじゃ……」
「「えっ」」
ルークは難しい顔のまま、マークお兄ちゃんとミーシャお姉ちゃんはすごくびっくりした顔で触媒を見てる。
「ダメだった?」
「いや、ダメじゃないんだが。マーク、ミーシャ、学園長に相談するから言いふらすのは自重してくれ」
「はい。でもこれ、私たちがもってるより、ルーク先生が持っていたほうがいいかしら」
「それはお前たちが持ってろ。『世界意思』から頂いたものになるのかもしれないからな」
「うわー。どうやって保存しとくかなー」
マークお兄ちゃんが触媒を見て、おっかなびっくりしてる。
「確かに。持ってるのもちょっと怖いかしら……。あらっ、アルバート君、何を持ってるの?」
僕は葉の形をした水晶を摘んで、「お守りを貰ったのー!!見て見て、綺麗なんだよー」と言いながら腕を上げた。
「綺麗ね。よかったね」
「アル坊、落ち着け。そろそろ学園に戻ろう」
ルークはそう言うと、帰る準備を始めた。それを見て、マークお兄ちゃんとミーシャお姉ちゃんも触媒をかばんに入れてから、移動の準備を始めた。
ルーベルクの森から学園に戻ると、ルークが今日は解散とだと言った。
「アル坊、俺は学園長の所に行くが、お前はどうする?」
「行くー!!」
「分かった。マーク、今日はアル坊を学園長に渡すことにする」
「了解です。アル、また明日な」
僕はマークお兄ちゃんとミーシャお姉ちゃんにバイバイをした。
「今日は学園長のとこにお泊まりできる?」
「ああ。今日はいるらしいからな」
僕は久しぶりに学園長と一緒になれることから、「やったー!!」と舞い上がった。
「嬉しそうだな?」
「うん。本を読んでもらうんだー」
「それは、『ルーベルクの森』での報告が終わってからな」
僕とルークは、お話しながら学園長の部屋まで向かった。
学園長の部屋に着くと、「おかえり」と学園長が迎えてくれた。
「ただいまー」
僕は挨拶をしながら、学園長の所に向かった。そうすると、僕を抱きかかえて膝の上に乗せてくれた。
「学園長、『ルーベルクの森』での事について、報告します」
「ああ、頼む」
「まず、アル坊が受けた依頼は瘴気の排除でした」
学園長は少し顔をしかめながら「そうか」と頷いた。
「お前たちには危険な目に合わせてしまったな。なにもできず、申し訳ない」
「『世界意思』が関わっていれば、断るわけにもいきませんし、学園長に責任はありませんよ。それに、瘴気に対する対応をできる限りしていただけたと思います」
「いや、私は『森と在るもの』だ。瘴気に関しては責任が存在するんだ」
「そうなんですか? ただ、今回は瘴気の排除については問題なく解決しました」
少し疑った感じの声音で「解決できたのか?」と呟いた。
「ええ。アル坊にも確認してもらいましたから。あと、相談したいことがあります」
ルークはそう言うと、森で光に包まれたこと、触媒をもらったことを詳しく学園長に話した。
学園長は少し考えて、ゆっくりと答えた。
「森での光は、恐らくだが『森』の力が具現した形だと思う。以前、アルバートを見つけた時に一度だけ見たことがある」
「力の具現……ですか?」
「ああ。光からは意思を感じたから、魔法の根源に近いものかも知れない」
「そうですか。とりあえず、問題は無さそうですね」
「そうだな。それより触媒については対策が必要かな」
「国などに提出が必要ですか?『世界意思』からの物と判断したので、マークとミーシャにはそのまま持ってるように言ったんですが……」
おお!!ちょっと困った感じの声だ。めずらしい!!
「それで問題ないが、国に登録を申請しといたほうがいいだろう」
「登録ですか?」
「ああ。それで自身のものである証明とすることができる。それに、万が一に盗まれた場合でも触媒の特定ができたほうがいい」
ルークがなるほどといった顔で頷いた。おお!! またしても珍しい!!
僕がさっきからびっくりしてルークを見てると……睨まれた。
「アルバートの貰ったお守りを見せてもらえるかい?」
僕は「いいよー」と答えてから、マークお兄ちゃんに買ってもらったかばんからお守りを出した。
「これもらったのー。見てー、すごくきれーなんだよ!!」
「ほぉ、綺麗だな」
「いいでしょー」
「ああ。ふむ、これからアルバートを守る『意思』を感じるな。確かにお守りになるな」
「守る『意思』ですか?」
「瘴気を和らげる効果のあった水晶の魔道具と似たようなものだよ。あれには、瘴気を防ぐといった『意思』が込められているんだ」
「ほー。それでは、このお守りも魔道具の扱いになるんでしょうか?」
「いや。これには具体的な効果があるわけではなく、あくまでアルバートを守る『意思』が込められているものだから、魔道具ではないな」
そう言って僕にお守りを返してくれた。
「アルバート、後で紐をつけて首から掛けられるようにしよう。そうしたら、いつでも身に着けていられるし、失くさないだろう?」
「うん!!」
「それでは私はこれで失礼します。明日、アル坊を迎えにきます」
「ああ、頼む」
ルークが部屋から出ようとしたので、手を大きく振って「バイバイ」と言った。そしたら、「じゃあ、明日な」と言いながら出て行った。
僕は、学園長とルークの難しいお話が終わったので、本を読んでもらうと思って、お願いをした。
「いいよ。読みたい本を持っておいで」
学園長が僕を膝から降ろしたので、面白そうな本を探しに本棚に向かった。
そのあとは、寝るまで学園長に本を読んでもらって過ごした。




