プロローグ
僕の名前はアルバート。
年齢は8才。本当は違うけど。
いつもは学園長と一緒に、ルークが戻るのをずっと待っていたけど、今日からは、ルークのところでお勉強できるようになった。
ルークとずっと居たいからすごく嬉しい。
ルークは学校の先生で、とっても背が高くてかっこいい! 学園長も、ルークは生徒からも人気があると教えてくれた。
ルークと居るのはすごく嬉しいけど、一緒に歩くのはちょっと大変。ルークは普通に歩いてるのに、僕はちょっと走らないと追いつけないから……。
もっと背が高くならないかなーと思ってると、ルークが僕を見下ろして声を掛けてきた。
「アル坊、もうすぐ教室に着くぞ。挨拶はできるな?」
「できるよー」
だけど、本当は学園長とルークとしか話したことがないから、ちょっと不安かも……。
しばらくして、僕とルークが目的の教室に着くと、話し声が廊下まで聞こえてきた。
気になってそわそわしていると、ルークが軽く笑いながら僕を抱っこして窓から教室の中を見えるようにしてくれた。
僕が窓からこっそりと覗くと、2人の生徒が椅子に座って話していた。
男性の生徒は、明るい茶色の髪を短くしており、快活な表情をしていて楽しそうな感じ。女性の生徒は、まっすぐな黒い髪を肩まで伸ばし、落ち着いた雰囲気だと思う。
「なぁ、ミーシャはどんなかわいい子が来ると思う? 俺は、さらさらな髪で、丸めのやさしい顔つきで、かわいいしぐさをする人とみた!」
「何それ。そもそも女性かも分からないじゃない。それより、今日は確認テスト何だから勉強したら? 次に合格しないと補習でしょ」
アホなこと言ってるのがマークで、突っ込んでる方がミーシャだとルークが教えてくれた。
「なに言ってんだよ。転入生なんだから、相場は美人と決まってるじゃないか。それと、補習のことは思い出させないでください!」
マークは、よく分からない持論を力強く展開してる。けど、最後に何故か敬語になって、頭を下げてる。へこんだマークに、ミーシャは容赦しない。
「でも、私も転入生は気になるけど。少人数制とはいえ、バカと私で2人だけだし……」
「ちょっ、ひどくない!?」
僕を下ろすと、呆れながらルークが教室に入っていった。僕もどきどきしながら足を踏み出した。
教室に入ると知らない2人が僕をじっと見てきた。どうすればいいか分からなくなって、とりあえずルークの足にしがみついた。
ルークからため息が聞こえると、自己紹介をするように言われた。ルークのため息は深くなる一方だ。
「えっと、アルバートです。よろしくお願いします?」
僕は、ルークのズボンから離れられないけど、がんばった。けど、ルークからは何で疑問形なんだよと言われてしまった。
しばらく2人は、目をまん丸にして固まってたけど、こそこそと何か話し始めた。でも、しっかり聞こえるけど。
「マークが言った通りの子が来てよかったね。」
「どこが!?」
「さらさらな髪で、丸めのやさしい顔つきで、かわいいしぐさをする人」
「確かに!? でも違うんだ!!」
ひそひそから、叫び声になったやり取りを僕はボケッと眺めてると、ふとマークと呼ばれた青年が僕を見て、それからルークを見た。なんだろうと思って首をかしげた。
「奥さんに逃げられたんですか?」
「んなわけないだろ。というか、俺は独身だ」
「じゃあ、隠し子ですか?その子は5歳くらいだし、ルーク先生は25歳でしたっけ?なら、子供がいても全然おかしくないし」
ニヤニヤしているマークに、ルークは口の端を吊り上げながら反撃を行った。
「マークの確認テストは、合格点を80点から90点に変更な」
「申し訳ありませんでした」
マークは、速攻で頭を下げた。僕はよく分からなかったけど、とりあえずルークは強いんだーと感心した。
ミーシャはあきれながら、僕に関する質問をした。
「それより、本当にアルバート君が転入生なんですか? 確かに5歳くらいに見えますけど」
「ああ、そうだ。同じ内容の勉強をさせるわけではないが。アル坊、年齢くらい自分で言え」
僕はルークを見上げながら、答えた。
「えっと、えっと、8歳?」
「いや、何で俺に聞く?」
それを見ていたミーシャが突然叫んだので、びっくりして僕はルークの足をぎゅっと抱きしめた。
「かわいいー。なにこれ。なにこれ。ルーク先生、抱きしめてもいいですか? 抱きしめますね」
「ああ」
ミーシャは屈みこみ、ルークにしがみ付いている僕を引っぺがして抱きしめると、かわいい発言を連発した。僕はどうすればいいのか分からず、首だけ動かしてルークを見たが、微妙な表情で首を横に振って「諦めろ」と言った。
「よし、アルバートについて話をするから席に着け」
マークとミーシャが席に座るのを待ってから、ルークは説明を始めた。僕はミーシャから離してもらえず、膝に座らされている。
「まず、アルバートは『森と在る者』だ」
「えーと、『森と在る者』って世界意思を聞くことができる人ですよね?」
「そうだ。世界意思についても、聞く者も稀な存在だからな。ほとんど分かっていないのが現状だ」
マークは僕を見ると不思議そうに尋ねてきた。
「じゃあ、アルも世界意思の喜びや悲しみとかが分かるのか?」
良く分からないから首を傾げると、またミーシャが可愛いと叫びながら抱きしめてきた。びっくりしてルークを見て助けてもらおうと思ったけど、目を逸らされた。
ルークの態度に、ちょっと悲しくなった。
「まあ、学園長が言ってたんで本当だろう」
「学園長って、存在したんですか!?」
「ここは学園なんだから、学園長が居るのは当たり前だ」
学園長は、出張でここにはほとんどいないからなと、苦笑しながらルークが答える。だけど、僕は学園に来る前からずっと一緒にいたから、居ないことが多いことにびっくりした。
「あと、アル坊を拾ったのは学園長だ」
「「拾った!?」」
「どこかは知らんが、出張先で拾ったといっていた。親もなく1人らしいのと、『森と在る者』であることに気づいたから連れて来たらしい」
僕は、マークとミーシャになんとも言えない表情をされたけど、学園長とルークがいるから1人じゃないよと答えた。




