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仕立て屋〜世界の舞台裏〜   作者: tismo
少年は、そして、勇者を夢見る
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第七話 森の騒乱(2)

第七話 森の騒乱(2)



一方後方では


騎士兎ナイトラビット


の群れが襲い掛かっていた。騎士兎ナイトラビット女王兎クイーンラビットに統括された兎の群れで活動する。騎士兎単体では単に角の生えた兎のようなものであまり強くないのだが、それが群れでしかもその群れに女王兎が加わったとき、恐るべき強さを発揮する。

騎士兎の何よりもの厄介さは、その鋭利な角と俊敏な動きである。10センチ程の角は人間の臓を貫くには余りあるものである。単体であれば俊敏とは言っても直線的に向かってくるだけなので対処は簡単である。

しかし、群れとなると直線的であるのは変わらないが、多角的に囲んでから攻撃してくる。動きが早いので囲まれる前に逃げるのはなかなか難しい。その点から甲殻獣よりも厄介とされる。

そこに女王兎が加わると、甲殻獣の群れですら敵わないほどの強さを誇る。女王兎は兎の魔獣の中でも頂点に君臨する魔獣で、騎士兎や兎の魔獣達を従える。女王兎は鳴き声を出すことで命令し、その命令は非情に優秀で群れの動きが体系化する。群れでも女王兎がいるかいないかで強さに相当差が出るのだ。非情に魔法に長けているため、群れを操っている間に高位の魔法を構成する。騎士兎の半分程度の大きさしかないにもかかわらず騎士兎よりも更に俊敏であるため、兎達を掃討する間に既に女王兎は逃げ去っていることも多い。唯一の救いは自分から手を出さない限り、あまり襲い掛かってこないことである。



その女王付きの群れが後ろで沸いていた。

子供達が騎士兎を相手に戦っている。激しい乱戦となっていた。


「てやああ」「むきゅ」「兎さんごめんなさい!」「むきゅきゅー!!」「兎の二陣目来たぞー!!退避―!」「「「「むきゅきゅきゅきゅー」」」」


そんな中冷静にネオとみぃちゃん、ルゥ&ネイが作戦を練っていた。



「私たちが後ろを任されている以上、どうにか対処しなくてはいけませんわよ」


連戦で疲れているみぃちゃんは、周りの戦況を確認している。

大人達はこれが女王付きの群れとは気づいていないが、兎達の戦い方を見て異常に気づいたらしく戦いに加わっている。

そのおかげで前線は盛りなおしたが、なにせ数が多い。

場は膠着している。


「そう、だね。でも、なんでここに、女王兎が。あと、何で、襲われたんだろ」


「わかりません。普段は気性の穏やかな兎族が突然襲ってきましたからね、何かあったんでしょうか。まったく厄介なことになりました」


「そうだにゃー。魔物といえど好戦的じゃにゃい相手とやりあいたくはにゃかったのにゃー。増してや兎にゃん。可愛いにょににゃんで戦わなくちゃいけないのにゃー」


ネオが途切れ途切れ且無感情に疑問を呈し、甘える姉がいない場ではしっかりしているルゥがきちんと答える。同じく今姉がいないネイもぶらぶらとマイペースに自分の考えを述べる。



「ネイ、そんなこと言っちゃ駄目だよ。襲ってきたのはあっちだし、ここで逃したら私たちの村を攻撃するかもしれない。女王付きの兎族の群れの危険さはおねえちゃんから聞いてるでしょ」


「わかってるニャー。大人達も気づいてないみたいだし、にゃんでおねえちゃんは女王兎にゃんて知ってるのかニャー。やっぱりおにゃーちゃんは凄いのにゃー」


「それはもちろんだよ!」



本人がいないときでも姉の話につなげる双子に苦笑しながら、みぃちゃんは双子に質問をする。


「実際、女王兎ってそんなに厄介なのかしら?」


「みゃー。厄介にゃんてもんじゃにゃいにゃー。正直今も焦ってるのにゃー」


「そうですよ。とりあえずネオさんはお姉ちゃんに女王兎の報告と援軍の要請をお願いします。正直、このままじゃきついですよ」


「わかった」


「他の人に行かせられませんの?ネオを今失うのはなかなか痛手ですけれど」


「ネオさんに残っていてほしいですが、他の人に行かせると更に援軍が遅くなりますからね」



確かにネオは身体強化を使った移動をすれば、この中の誰よりも遥かに早く報告ができる。


ネオは足に筋力増加魔法を構築し、さらに風力魔法を体中にまとわせる。風の抵抗も和らげているのでスピードはより速くなる


そして、地面の落ち葉を巻き上げながら走っていった。



「それでこれからどうしますの」


「・・・みゃー。あいつらはおにゃーさまの話によると相当厄介なのにゃ。早い上に、場合によっては一撃必殺の角、統率の取れた動きにあの小回りも相当面倒なのにゃ。時間かけたら魔法兎とか女王兎が魔法も撃ってくるにゃ。そしたらこっちは防ぐ術を持つのは少にゃいにゃ」


「魔法も使うんですのね・・あとその魔法兎というのは・・?」


「魔法兎は魔法力の高い兎にゃ。初級とは言え魔法が使える魔獣だにゃ。兎族の魔獣は体の大きさだとかその特性の多さから種類がめちゃくちゃ多いのにゃ。一般的には騎士兎と小人兎が有名だけど、相当に多いのにゃ。女王兎の下にしかいにゃいのもいるのにゃ。、魔法兎はそのタイプなのにゃ。早く倒さにゃいとやつらも陣列を組んで魔法を打つのにゃ。波状に打ってきたりするとかいってたのにゃ」


「・・・兎だからといって舐めてはいけませんわね」


「兎族は群れで戦えば魔獣の中でも強い一族ですよ。それより、ネイ説明ばかりしてないで何か策は?」


「まあ・・・、一応にはあるのにゃー。だけど面倒だにゃー。援軍が来るまで待たにゃいかにゃー」


「もう報告は終わった」


「あら、ネオ早かったわね」


「いや、近い」


「まあ、そうでしょうけど」


報告も含めて五分以内に済ませたのだろうか。

それは早すぎる気がした。


「エルから、今は無理だ、なんとか頑張れ、だって」


「え?」「え?」「なんですって」


三人は一様に驚く。

援軍ぐらいすぐによこしてくれると思っていたからだ。


「な、なんでなの。女王兎の危険さをおねえちゃんが注意していたのに」


「そ、そうだにゃ。冗談じゃ済まないのにゃ」


「冗談、じゃない。私は、先頭の状況を見た」


無表情にそう言っているが、ネオの顔が少し焦っているのを幼馴染達は読み取っていた。

そして、その口から今自分達が思ったよりも切羽詰った状況の中にいることを知らされる。


本当は七話と八話はまとめられていたのですが、一話あたり二千字を基準にしているので分割しました。

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