04話 mob、知らぬ間に世界を変える一歩
朝靄の中、村の入り口でシドニーと翔太が向かい合っていた。
「本当にありがとう、翔太君。君との会話は、私にとってかけがえのない経験になった」
シドニーは微笑みながら言った。
翔太は少し照れくさそうに頷いた。「こちらこそ、たくさんのことを教えてもらって...」
シドニーはポケットから小さなノートを取り出した
「これは私の旅の記録だ。君にプレゼントしたい」
驚きの表情を浮かべながら、翔太はそれを受け取った。「大切にします」
「翔太君」シドニーは真剣な表情で言った。
「君から聞いた話は、きっと多くの人の助けになる。私も、できる限りのことをしてみるよ」
二人は固く握手を交わし、シドニーは旅立っていった。翔太は、遠ざかる後ろ姿を長い間見送っていた。
***
数週間後、王国の城内—
シドニーは緊張した面持ちで玉座の間に立っていた。
「陛下、私の調査結果をご報告いたします」シドニーは一礼してから話し始めた。
「人間とエルフの共存は、今後も続けていくべきです。彼らは決して脅威ではなく、むしろ我々の重要な協力者となり得ます」
王は眉をひそめた。「しかし、一部からはエルフの力を警戒する声も上がっているぞ」
「はい、そのような懸念は承知しております」シドニーは答えた。
「しかし、エルフとの協力こそが、我々の王国を更に発展させる鍵となるでしょう。実際に、人間とエルフが平和に暮らす村を見てまいりました」
シドニーは、翔太から聞いた話を基に、魔法に頼らない新しい技術の可能性について熱心に語った。馬なしで動く車、遠くの人と話せる機械、夜を昼のように明るくする光...
王は驚きを隠せない様子だった。「そのような技術が本当に可能なのか?」
「はい」シドニーは自信を持って答えた。
「私自身、これらの技術の研究に取り組みたいと考えています」
王は深く考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。
「よかろう。シドニー、お前にその研究の許可を与える。エルフとの共存政策も、これまで通り続けていくことにしよう」
その後のシドニーは、何かに取り憑かれたかのように研究に没頭した。
彼の工房からは、日々新しいアイデアが生まれ、少しずつ形になっていった。
最初の成功は、簡単な歯車機構だった。それは簡素な作りだったが、重い荷物を簡単に持ち上げることができた。次に、風の力を利用した羽根車。そして、ついに...
「動いた!」シドニーは興奮して叫んだ。
彼の前には、蒸気の力で動く小さな模型が、ゆっくりと前進していた。
シドニーは翔太のことを思い出していた。
「翔太君、君の話してくれたことが、本当に現実になりつつあるんだ」
彼は窓の外を見た。
はるか遠くに、あの村があることを知っていた。
「いつか、この技術をあの村にも届けたい。そして、エルフと人間が共に歩む未来を...」
シドニーの目は、新たな発明のアイデアで輝いていた。
彼はまだ知らない。この小さな一歩が、世界を大きく変えていくことになるとは。