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08話 恐怖を超えて、ゴブリンたちの選択

ギルの案内で、翔太たちは北へと進んだ。

森は次第に深くなり、木々の間から差し込む光も少なくなっていく。


「この辺りが、野生ゴブリンの縄張りだ」

ギルが、低い声で言った。


「だが、妙だな......」


「どうした?」


「静かすぎる。本来なら、もう見張りに見つかってもおかしくない」


翔太は、周囲を見回した。確かに、生き物の気配がほとんどない。


「隠れてるのか?」


「おそらくな。人間の討伐隊が来たと思って、警戒してるんだろう」

ギルは、苦々しげに舌打ちした。


「このままじゃ、接触すらできん」


「なら、俺たちから姿を見せるしかないな」


「待て、危険だ。怯えた魔物は、何をするかわからん」


「でも、このまま隠れられてても仕方ないだろ」

翔太は、一歩前に出た。


そして、大きく声を張り上げた。


「聞こえているなら、出てきてくれ! 俺は敵じゃない!」

森に、翔太の声が響き渡る。


しばらく、沈黙が続いた。


「......無駄だったか」

翔太が諦めかけた、その時だった。

茂みが揺れ、小さな影が姿を現した。


ゴブリンだ。だが、ギルとは明らかに違う。体格は一回り小さく、目には怯えの色が浮かんでいる。


「に、人間......!」

ゴブリンは、翔太を見るなり後ずさった。


「待ってくれ。俺は——」


「来るな!」


ゴブリンが叫んだ瞬間、周囲の茂みからさらに多くのゴブリンが現れた。

十匹、二十匹......いや、もっといる。

全員が、木の棍棒や石を手に持ち、翔太を睨みつけている。


「人間が来た! 殺せ!」


「待て!」

ギルが、翔太の前に飛び出した。


「俺を覚えているか! ホブゴブリン族のギルだ!」

野生ゴブリンたちが、動きを止めた。


「ギル......? あの集落の......」


「そうだ。俺の集落は人間に滅ぼされた。だが、この人間は違う」

ギルは、翔太を指差した。


「こいつは魔王だ。人間でありながら、魔物を従える者。人間と戦う意志を持っている」


「魔王......?」

ゴブリンたちの間に、動揺が広がった。


「嘘だ! 魔王様がこんなちんちくりんのはずがない!」


「人間は皆、俺たちの敵だ!」


「騙されるな!」

口々に叫ぶゴブリンたち。その目には、恐怖と憎悪が入り混じっている。


翔太は、静かに前に出た。


「信じられないのは、わかる」


「来るな!」


「俺も、人間に大切な人を殺された」

翔太の言葉に、ゴブリンたちが一瞬黙った。


「エルフの女の子だった。人間の兵士に撃たれて、俺の腕の中で死んだ」


「......」


「だから俺は、人間と戦うことを選んだ。彼女を取り戻すために、どんなことでもする」

翔太は、ゴブリンたちを見渡した。


「お前たちも、仲間を失ったんだろう。家族を、友を、人間に殺された」

何匹かのゴブリンが、目を伏せた。


「俺は、お前たちに無理強いはしない。従いたくなければ、従わなくていい。ただ、知っておいてほしい」

翔太は、拳を握りしめた。


「俺は人間と戦う。お前たちの仇も、俺の仇も、同じ敵だ。もし俺と一緒に戦いたいなら......力を貸してくれ」

長い沈黙が、森を支配した。


ゴブリンたちは、互いに顔を見合わせている。


やがて、一匹の老いたゴブリンが前に出た。


「......お前、本当に魔王なのか」


「ああ」


「証拠を見せろ」

翔太は、少し考えた。


そして、プルンに目を向けた。


「プルン、降りてきてくれ」


プルンは、翔太の頭からぴょんと飛び降り、地面に着地した。


「これは、俺の従魔だ。スライムのプルン」


老いたゴブリンは、プルンをじっと見つめた。


「スライム......確かに、人間に従う魔物は見たことがない」


「他にもいる。グレートボアのグラン、ハニービーストの群れ、カジリスクたち。そして、ホブゴブリンのギル」


ギルが、一歩前に出た。


「俺が証人だ。この人間は、俺を力で従えたわけじゃない。俺が自分の意志で従った」


「ギル......お前ともあろう者が」


「俺も最初は信じられなかった。だが、こいつは本物だ。人間を憎み、魔物と共に戦おうとしている」

老いたゴブリンは、しばらく黙り込んだ。


そして、深いため息をついた。


「......我々は、もう限界だ」


「限界?」


「人間の討伐隊が来るたびに、仲間が減っていく。このままでは、遠からず全滅する。人間が我々を忌み嫌う限り、またどこかで個体が発生して種としては存続するだろうが、今ここにある平穏は脅かされ続ける」

老いたゴブリンは、翔太を見上げた。


「お前が本当に魔王なら......我々を守ってくれるのか」


「守る約束はできない」

翔太は、正直に答えた。


「俺はまだ弱い。レベル14、従魔も少ない。今すぐお前たちを守れるほどの力はない」

ゴブリンたちの間に、失望の空気が広がった。


「だが」

翔太は、続けた。


「俺は強くなる。魔物を従え、力を蓄え、いつか必ず人間と戦える軍団を作る。その時、お前たちが俺と一緒にいてくれるなら......一緒に戦おう」


老いたゴブリンは、翔太の目をじっと見つめた。


「......お前の目は、嘘をついていないようだな」


「当たり前だ。嘘をついても、意味がない」


老いたゴブリンは、周囲の仲間たちを見回した。


「皆、どうする」


ゴブリンたちは、互いに顔を見合わせた。

怯えた表情、迷いの表情、そして......わずかな希望の表情。


やがて、一匹のゴブリンが前に出た。若い個体だ。


「俺は......従ってもいいんじゃないかと思う」


「おい、本気か」


「このまま隠れていても、どうせ殺される。なら、戦って死んだ方がマシだ」


続いて、もう一匹。

「俺も従う。仲間の仇を討ちたい」


「俺も」


「俺もだ」


一匹、また一匹と、ゴブリンたちが前に出てきた。


最終的に、三十匹以上のゴブリンが、翔太の前に集まった。


「......これが、我々の答えだ」

老いたゴブリンが言った。


「魔王よ。我々ゴブリン族を、従魔として受け入れてくれ」


翔太は、静かに頷いた。


「わかった。お前たちの力、確かに受け取る」

その瞬間、翔太の身体に温かい光が流れ込んできた。


ステータスに変化が起きる。


────────────────────────────────────


【魔王ショータ】


Lv. 14 → Lv. 18


【スキル】

・溶解耐性(微)

・突進

・物理耐性(微)

・短剣術(初級)

・罠作成(初級)

・夜目 ←NEW!

・群れの連携 ←NEW!


【従魔】

・プルン(スライム) Lv.11

・グラン(グレートボア) Lv.15

・ハニービースト Lv.8

・カジリスク Lv.6

・ギル(ホブゴブリン) Lv.12

・ゴブリン族 (ゴブリン) Lv.6 ←NEW!


────────────────────────────────────


「レベル18......それに、新しいスキル」


「ゴブリンは夜目が利くからね。群れで行動するから、連携のスキルも得られたみたい」

ランマが解説した。


ギルが、翔太に近づいてきた。


「魔王様、これでゴブリン族も戦力になる。といっても、野生のゴブリンは戦闘力は高くないが......」


「数がいるだけでも心強い。それに、斥候や見張りは得意だろう?」


「その通りだ。さすが魔王様、わかっている」


翔太は、集まったゴブリンたちを見渡した。

怯えた目をしていた彼らの表情が、少しだけ変わっている。

絶望の中に、わずかな希望が灯ったように見えた。


「これからよろしく頼む」

翔太が言うと、ゴブリンたちは一斉に頭を下げた。


「「「よろしくお願いします、魔王様!」」」


その声は、まだ弱々しかった。

だが、確かに意志のこもった声だった。


***


ゴブリン族を従えた翔太は、この森の一角を拠点とすることに決めた。


「ここを本拠地にする。ギル、ゴブリンたちを取りまとめてくれ」


「承知した。しかし、このままでは人間の討伐隊が来たら持たんぞ」


「わかってる。だから、俺はさらに強くならないといけない。今は、少ない戦力だが、森に住むグレートボア、ハニービースト、カジリスクとも連携して守りを固めてもらいたい」


翔太は、森の奥を見据えた。


「この先には、何がある?」


「北に進めば、大森林に出る。そこには、より強力な魔物がいるはずだ」


「よし、そこに向かおう」

翔太は、プルンを頭に乗せた。


「ギル、ここは任せた。何かあったら、俺を呼べ」


「どうやって?」


「......そういえば、連絡手段がないな」


「魔王と従魔の間には、精神的な繋がりがあるの」

ランマが口を挟んだ。


「強く念じれば、簡単な意思疎通はできるわ。危険が迫ったら、ギルから翔太に伝わるはずよ」


「なるほど。じゃあ、それで頼む」


「了解だ、魔王様。武運を」


翔太は頷き、ランマと共に森の奥へと歩き始めた。

背後では、ゴブリンたちがこちらを見送っている。


レベル18。従魔六種。


まだまだ弱い。

だが、仲間は確実に増えている。


リリアを取り戻す日まで、まだ遠い。

でも、一歩ずつ、着実に近づいている。


翔太は、前を向いて歩き続けた。

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