起きて初めてのご飯
泣き止んだわたしは冷静に女と男の様子を見ることにした。
二人とも、雑に扱ってこないし、丁寧だ。
そして、女はイザで、男はナギムという名前らしい。
わたしの眠る前の世界は、とっても子供に優しくなかった。
呪いによる人口減少に抗うため、たくさん造られてたくさん死んでいった。
わたしは運良く生き残れてもう少しで10歳で大人というところで眠ってしまった。
「ベイビィ、ドリンキット」
そう言って、白い液体が入った小さな器をわたしの口に近づけた。
わたしは警戒して口を開けない。
「ミルク、ドリンキット」
イザが白い液体を口に含む。
「ホワイ、ベイビィ、ドンドリンク。ディスグッドテイスト」
ナギムもその白い液体、ミルクを舐めた。
普通に食べていいものか。
なら食べたい。
そう言いたくても言葉にならない。
「あー、あー」
「オケ、ベイビィ」
それに気づいたナギムがわたしに器を傾けてミルクを飲ませてくれた。
何これ、美味しい。
二人が何食わぬ様子で飲んでいたから、水のように無味無臭のようなものかと思ったら、ほんのり甘くて美味しい。
こんなの初めてだ。
夢中になって飲んだら、あっという間に器は空になった。
もっと食べたかったが、お腹がいっぱいと言ってくる。
こんな経験誕生月でもしたことがなかった。
そうして、お腹いっぱいになったあと、眠気が襲いナギムの腕の中で眠ろうとした。
気持ち悪さがきて眠れない。
どうしようさっき飲んだミルク吐きそう。
「ベイビィ、プリーズ、バーフ」
ナギムはわたしの背中を優しく下から上へと撫でたり、叩き出した。
「けふ」
ゲップが出ると気持ち悪さが消えた。
それをみて二人は嬉しそうだった。
眠たげなわたしをナギムはイザに引き渡した。
イザはわたしを抱っこすると、慣れた動作でナギムの背中に紐を使って、さっきのおくるみごと、結びつける。
ナギムに背負われるかたちとなる。
「ベイビィ、タイド」
「リビングフォアザビレッジドクター」
そう言って、何やら天井と同じ繊維でできた靴を履いて、外に出た。
背負っている時に、解析を使ってこの家のことを調べたら、何とほとんど植物の繊維で構成されている。
私の眠る前の時代、長ったらしいから旧世界としよう。
旧世界では、こんな弱い素材で作られた家なかった。
世界は平和になったのか。
ところで言語がわからないのは結構ネックだ。
『シバ、言語解析と学習に魔力を回したい』
『ご主人様、それをすると思考低下して、一歳くらいの思考力と一時的な記憶喪失になります。さらにご自身の体の回復が10年遅くなります。』
少し気まずそうな声でシバが答える。
『構わないわ。危険時以外は続行で』
正直、赤ん坊に近い体で、大人一歩前の心が入っていることはきつかった。
一人でできたことがいきなり、人の補助がないとできなくなってストレスを感じていたところだ。
できていたことを忘れよう。
自己洗脳魔法使う前に言語を選んでよかった。
余計な脳容量と魔力の消費が避けられる。
『わかりました。十秒後に切り替わります』
そう言って、私の脳と魔力は、状況解析から言語、コミュニケーション特化に切り替わる。
ねこさんのもふもふしっぽとヘビさんのきらきらしたうろこさわりたい。