血と才能
地面へと皆が引きずりこまれた後、サイレンの主である警備隊がやってきた。
ダズの幹部の一人が現れたという情報を得てここにやってきた警備隊だったが、そこには誰もいなかった。
ほんの数分前には術を使っている者の反応があったのだが、消えてしまい、後には地に刻まれた文字だけが残された。
『I receive true King to my whole families soon!
(我は真の王を近いうちに我が一族に迎え入れる!)
真の王、最強の王族を一族へと取り入れ、魔力世界の支配へとダズは乗りだす
魔力世界は我が一族のものだ! 』
彰達はキースとキースと一緒にいた美女__ビューク・ジックと一緒にある山の洞窟にいた。
小さな灯りのおかげでお互いの顔は見ることができるが、周りの様子は見難い。
正直、梓と俊也は半分そのことに不安を感じていた。
だが、キースとビュークはそんなことを無視して5人に向き直った。
「いろいろと訊きたいんだけどぉ?」
「貴方達何者なの?」
「そう言われても、私達もなにがなんだか・・・」
「髪色が変わる構造はこっちが訊きたい位だ」
質問にまったく答えることのできないことにビュークはため息をついた。
「仕方がないわ。お互い、持ってる情報だけでいいから出しましょう。早くしないと大変なことになってしまうし・・・キースもいいわね」
ビュークは隣にいるキースを見た。
キースは手を頭の後ろで組みながら、いつもと変わらぬ表情で答えた。
「ん~、まぁ反対はしないけどぉ。万族の子なんかはショックだと思うよぉ?」
「何億もの人の命と、一人の精神を比較してみなさいよ!!人の精神はいつか回復できるのよ!あなたはまだ人の命を背負ってる自覚がないの!?」
語尾が延びるような口調で、くつろぎモードに完全に入ってしまったパートナーにビュークは怒鳴った。
「何億の命を守る子の精神は壊したくないってだけだよぉ・・・話さなきゃ意味ないってこと位分かってるよぉ。だからぁ、話すよぉ。
この世界にいる死族のリーダーが一族を中心に魔力世界の支配を始めたんだぁ。その組織の名前はダズっていってねぇ、リーダーは史上最悪の男のデトロイトォ」
言いづらそうな顔をしたキースに変わって、落ち着きを取り戻したビュークが続きを話す
「自分と万族の融合を成功させて一人の娘を生んでる。それがイーフィ・デスト」
「嘘だ」
伊槻が即座に否定した。
小さい頃から自分たちと一緒にいるのだ。
そして、詩音の家族にも会っている。
「残念ながら彼女には血が繋がっている親はこの魔力世界にしかいないわ。私達も一度無力世界に言って彼女を監視したときに彼女の家族を見てきたわ」
「フィーの家族は全員が技族だったぁ。フィーは血縁的には死族になるしぃ、低い確率でも万族なんだよぉ。つまりぃ、フィーの家族が技族ということはフィーの本当の家族じゃないって事だよぉ」
2人はあくまで冷静に現実を突きつける。
少しでも厳しい態度を緩めれば、情が出てしまう。
昔から役目として背負っていた自分と、突然に突きつけられる彼等とは感じる重みが違う。
そして、それを辛いだろうからと庇ってしまえば自分だけでなく、結局は彼等までもが危険な目に遭ってしまうのだ。
「デトロイトの目的は真の王になって魔力世界全土を支配下に置くことよ。最強の王族の子と、自分の創り上げた娘の融合によって最強の人間兵器を生み、そしてそれを使った恐怖政治によって支配するつもりよ。放っておけば無力世界や地獄世界はもちろん、天空世界や竜神世界も支配されるでしょうね」
「フィーはデトロイトの目的に感づいて正界にやってきたんだぁ。まだ物心ついたばかりだと思うよぉ・・・ここにいても危険だから無力世界に逃がしたけどぉ、同じ頃に王族も感づいてゼノを無力世界に逃がしたんだぁ」
逃亡先である無力世界、そこで2人は会ってしまった。
それだけならよかった。
会うだけならば、お互いの血筋について触れることはないから。
だが、2人は仲良くなってしまった。
詩音はたぶん最近になって気付いたのだろう。
彰が父親の目的の為に自分と融合させられる相手だと。
同時期に監視をしていたビュークも気付いた。
だが、デトロイトの狙っている王族とデトロイドの娘が一緒にいてはあちらも監視をつけている可能性は高い。
その2人の近くに、覚醒の始まっていない純血である正族や天才の血筋である万族がいた。
正族と万族とも仲良くなってしまっている今、派手に動いてしまえばダズに殲滅され始めている正族はもちろん、危険視されている万族までもが殺されてしまう。
それだけでは終わらなかった。
そのまわりにいる他の人の血筋を調べてみれば戦族も魔族も技族もいた。
しかもそれが世界が一つだったときにたまたま無力世界の区域に入っていた、非現実世界で知らない人はいない位の天才の家系。
7部族全て、部族一の天才である代表が揃ってしまっていた。
「だからもうねぇ、手遅れ何だぁ」
一息ついて、キースとビュークは重たい口を開いて言った。
______彰、海人、伊槻、俊也、祐志、梓、詩音。7人の中で、誰が死んでも乱は必ず起こる。
罠ニ向カッタノハ自分。
仕掛ケタノハ、己ノ運命。
進マセタノハ、己ノ血。
ダッタラ、作動サセタノハ誰ダ?
ソシテ、戦争ヲ起コススイッチヲ押スノハ誰ナンダ?