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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
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覚醒

女の顔は髪で隠された。

だが、それでも梓は気付いた。

大事な親友であることに。


「人違いじゃない?」


黒服の女は否定する。

黒服の女が身体を少し動かすと黒髪の女の拘束が一瞬で解けた。


「上級魔術・茨地獄」


美女が魔術をかけ直すよりも速く魔術を発動させると、あっという間に先ほど素早い動きをしていた男はもちろん、全員の拘束を成功させた。

鋭い茨の棘が体に刺さり、あちこちから血が流れ、思わず苦痛の声が出る。


「幼馴染をこんなにする人はいないはず・・・私はデトロイト様に仕える組織、ダズの幹部兼作戦実行部隊、隊長のメレ。まぁ・・・一応は、紺野詩音って女だったけど」


傷だらけになった彰達を見つめながら詩音は眼帯をはずした。

眼帯の下の目は閉じたまま、哀れむように左目で幼馴染たちを見ながら詩音は彰の前に立った。


「やりたくなかったけど・・・仕方ないか。死なれても困るし」


詩音は彰を拘束する茨を気にすることなく彰に抱きつき、首筋を噛んだ。

詩音の歯は皮膚を食い破り、彰の首筋と自分の唇を血で汚した。

色素の薄い唇が赤く濡れ、薄笑いを浮かべた。

ゆっくりと彰を拘束していた茨が枯れ、彰の拘束を解いた。

彰が顔を真っ赤にしながら首の傷を抑えて詩音から離れると、詩音は薄笑いを消して戦っていた男に近寄った。


「キース・ソル・・・・仕事の邪魔ばっかしてたら、いくら恩人でも殺すよ?」

「フィー、いい加減に正気に戻ってくれないとまずいよぉ?」


閉じたままの右目を隠すようにまた眼帯をつけた詩音は男、キースを睨んだ。

だが、キースは怯えることもなく詩音を正面から見る。


「詩音、何が何なのか・・・ちゃんと話せよ」


伊槻が傷だらけになりながらも拘束から逃れると伊槻のだけでなく、他の茨も枯れていった。

伊槻は解らなかった。

伊槻だけでなく、彰も、海人も、俊也も、梓でさえも。

詩音が何を考えているのか。

普段、本気で怒る時の様な言葉使いを普段の表情で何の躊躇いもなく使っている。

そしてその言葉が冗談には聞こえない。

本気なのだ。

伊槻は人を簡単に傷つけられるととれる発言をしている詩音を許せなかった。

詩音は伊槻とよくつるんでいた。

仲のよかった友達であったが、本気で一発殴ってやりたいという考えが頭をよぎり、自然に身体がゆっくりと動いた。

服が破け、血があちこちから流れている身体で近づく伊槻を止めようと伊槻の前に出た俊也は伊槻の瞳を見て驚愕した。

普通の日本人らしい伊槻の黒っぽい茶色の瞳は紅くなっていた。

伊槻の体を流れる戦族ソルの血が、極度の怒りによって戦族ソルの能力を覚醒させたのだ。

そんな伊槻を見て詩音は無言で右手を伊槻と俊也に向けて突き出した手を握った。

白い光が集まり、白金のレイピアへと形を変えて詩音の手に収まった。

鋭い剣先が俊也の後頭部に触れる。


「関わるな。これ以上絡むようなら祐志は殺す。王族クラウだろうが万族オウルだろうがな」

「祐志は無事なんだろうな?」


伊槻の後ろにいた海人が足を進めながら真正面に突き出した手を握った。

銀の光が集まって刀の形を作ると海人の手にぴったりと収まる。

詩音を睨む海人の目は美しい翡翠色となっていた。

正族ジャティの純血は海人の髪色をも黒から青へと変えた。

海人は正義感が強い。

変わってしまった友のことを思い、いなくなってしまった友を思い、手に納まっていた刀を構えた。

元の友に戻ってもらうために、いなくなった友を助けるために、海人は刀を詩音に向けた。


「覚醒が思った以上に早いな。ちょっとってみたいが、警備隊ジャステインが来たなら逃げさせてもらう」


伊槻と海人の変化を見て笑うと、レイピアを地面に突き刺した。

レイピアが眩く光ると詩音は消えた。

遠くからサイレンの音が近づいてくる。


「やばいなぁ・・・ビュークゥ、僕達も逃げるよぉ」

「わかってるわよ。ちょっと不気味だけど我慢してね」


キースの呼びかけに答えて両手を合わせると、美女は目を閉じた。


「移動陣」


地面からたくさんの腕が伸び、全員を地面へと引きずりこんだ。





変ワッテシマッタノハ、誰?

オレ?真友?アイツ?

馬鹿ダッタ親友?

イヤ、変ワッテシマッタノハ世界ダ。

オレガ追イツケナイダケナンダ。

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