町
途方に暮れていた6人だったが、海人がふと思い出した。
「マーモさん、確か詩音にまた会えるって言ってましたよね?」
「どうせイーフィのことじゃからの。あちこちを飛び回っておる。アヤツは幼くして天空世界にも行ったことがあるからのぉ。適当にウロウロしておればいつか会えるじゃろ」
「そんな確率低いものに賭けられません・・・」
会える確率はとんでもなく低い。
会えたらそれは奇跡としかいえないだろうことに賭けれるほど6人はお気楽ではない。
「いや、ウロウロしておれば向こうから現れるはずじゃ。小屋を出たら道なりにひたすら進むと大きな町に出る。その町のある場所にいると思うがの?最近のアヤツを知っているのはお前たちじゃろ?」
にっこりとマーモは笑ってヒントをだすと、6人は考えだした。
6人の考えがまとまる前にマーモは6人分の旅用の服を用意した。
少し色合いの違う茶色ベースの丈夫な服にと男用のマント、梓にはローブに近い上着が用意された。
「いろいろとすみません」
この世界の情報から能力、旅の服まで用意してくれたマーモに海人は頭を下げた。
後から梓や俊也、祐志も丁寧に礼を言うと彰と伊槻が慌てて頭を下げた。
そんな彼等を見て微笑むマーモに見送られて6人は老人の住む小屋から旅立っていった。
「いい才能じゃ・・・もうすぐあの日がやってくるのう」
マーモの呟きは6人には聞こえない。
半日ほどかけて歩いた末に6人は大きな町へと出た。
梓がすぐに詩音のいそうなところをまわって詩音を探すために人込みの中へと入っていった。
「アズちゃん!待って」
「置いてぐなよ!」
見失うまいと彰と海人が人込みを掻き分けて梓を追い、その後ろを伊槻と俊也と祐志がついていく。
「俊、ちっさいんだからはぐれるなよ!」
「大丈夫です。そんなに小さくありませんし伊槻がいれば遠くても分かりますから」
「人込みの中じゃ見えないだろ・・・おてて繋ごうか、ボク?」
「余計なお世話です」
コントのような会話をしながらも伊槻と俊也は進んでいく。
その後ろを祐志がついて行く。
そのはずだが、祐志はそこにいなかった。
人込みというたくさんの人の中、少し距離が開いただけでもはぐれてしまう。
祐志は人の波に飲まれて、完全に迷子になってしまったのである。
先を行く梓とそれを追っていた彰と海人はそんなことは知らない。
そして伊槻と俊也も、後ろにいるはずの男の存在が消えていることに気付くことはなかった。
梓達は人の波の中を進み、狭い路地へと入った。
伊槻と俊也がしばらくして同じように道を外れて路地へと入った。
「やっと追いついた・・・」
「人酔いする・・・って、だあぁ!祐志が迷子かよ!!」
伊槻がふっとため息をついて周りを見渡し、やっとそこで祐志がいないことに気付いて叫んだ。
ずっと少し後ろをついてきていると思っていた5人は顔を見合わせた。
「仕方ありません、探しましょう」
俊也が呆れた顔で呟くと海人が指示を出し始めた。
「詩音も探さないといけないしな。2つに分かれて・・・詩音と祐志が見つかっても見つからなくても日没までに町の入り口に。はぐれても同じだからな?」
「了解」
「あっ、ついでに魔の力についても調べといたほうがいいんじゃない? ここで詩音が見つかるって保証はないし」
「そうだな。じゃぁ、調べれることはなるべくな」
「んじゃ、いったん解散!」
彰の掛け声で彰と海人と梓のグループと伊槻と俊也のペアで詩音と祐志の捜索が始まった。
オレ達ハイマダニ分カッテイナカッタ。
コノ世界ノ恐ロシサモ、コノ運命ノ酷サモ、自分達ノ能力モ。
ナニモカモ・・・少シモ分カッテイナカッタ。