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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
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傀儡人形

「闇魔術・傀儡」


デトロイトが呪文を唱えた。

脳を叩かれたような感覚と共に、海人の自我は消えた。



デトロイトの右手が海人の頭を掴んだ瞬間、海人の目から生気が消えうせた。


「海人・・・?」

「オイ・・・まさか」

「不味いのでは?」


嫌な予感を感じながら海人の様子を窺う。


「下がれ・・・奴にもう海人の人格なんてない」


詩音が彰を守るように立ち位置を替える。

海人は詩音の想像通りに動いた。

右手に剣を作り出し、走りながら振り上げ、詩音と彰めがけて振り下ろす。

それを詩音は瞬時に術によって作った愛用の銃の銃身で受け止める。

すぐさま海人は距離をとる。

引き金にかかる指の動きに集中。

その間に、彰が動いた。

彰が守られている間に作り出した細身の剣が海人の剣と交わる。

だが、彰の剣はすぐに弾かれた。


「っ海人!」


彰の中にある海人への思いが邪魔をする。

武器を作り直す時間の与えないように海人は高速で斬りかかる。

彰はそれを避ける逃げの一方だった。

王の力は海人には効かなかった。

はっきりとした拒絶の意の前に、強力な支配は無意味だ。

ギリギリまでフェイントを巧妙に入れ続ける海人の剣を紙一重で避けるのがやっとの状態である彰。

そこに向かって銃を向けている詩音は引き金にかかった指を動かせなかった。

彰に命中する率が高い。

細剣で乱戦に持ち込む手もあるが、詩音はそれほどいい腕を持っていない。

伊槻も俊也や祐志も梓も誰一人、彰の掩護に回ることができなかった。

目の前の一番倒すべき存在が不敵に笑っていた。


「・・・フッ・・・フフフ」


俊也が突然に笑い出す。

ギョッと見る伊槻達だが、俯いた俊也の顔は前髪で隠れていた。


「畜生がぁ!!」


詩音が彰達から目を離し、俊也に発砲した。

だが、死の詰まった弾は無言で展開された術でできたシールドに当たっただけだった。

術の展開時に使い切れなかった魔力メイの起こした微風は顔を隠していた前髪を浮かした。

その下の俊也の目が、海人と同じ様になっているのを祐志は見た。


「俊也!」


祐志が俊也に手を伸ばす。

梓がその腕を掴み、全身の力を使って引き戻す。

入れ違いに伊槻が俊也との距離を一瞬で詰める。


「悪い!」


正面で腹を狙うフェイントを入れ、倍以上の速度で俊也の背後に回る。

最初から目的は首。

手加減して打ち、気絶させる。

俊也の術は敵に回すとかなり怖いだろう。

すぐに行動を止めるべきであり、伊槻はその考えに従って動いた。

だが、長いこと一緒にいた幼馴染・・・その中でも一番長くいた大切な親友は本能で動く伊槻の行動をしっかりと予測していた。


「上級魔術・触手林」


何が起こったのかわからなかった。

呪文を言う前に発動した術。

伊槻の足は得体の知れないモノに絡みつかれていた。

地面に縫いとめられた伊槻を狙い、次の術が発動されようとする。


「基本魔術・木矢」

「作成魔術・強固壁」


鋭く、殺傷能力が高い矢から祐志が即座に守る。

かなり低レベルの術だが技族クックの天才が作り出した壁はとても硬い。

いとも簡単に矢の先が折れる。


「アズちゃん!詩音!彰と海人を頼む!!」


祐志が梓と詩音に2人を託した。

その代わり、自分も2人を受け持つ。

大事な仲間を傷つけずに助け出し、その間大事な仲間を傷つけないように守る。

きっと戦闘向きな種族でない自分には無理だろう。

しっかりと現実を見た祐志は決断をする。

2人を信じ、守り続ける。


「作成魔術・透明要塞」


壁の存在を放棄キャンセル、新しく作り出すのは無色透明の頑強な要塞。

伊槻を守り、そして術に対抗する。

透明な要塞にはさまざまな仕掛けを施した。

術の解除をされないように、全ての魔力メイを要塞の存在を維持するために使い続ける。

解除するために必要な魔力メイの回路にたくさんのトラップを作り、解除困難にする。

炎や氷や雷、その他諸々の術に対する防御策は要塞につくった人工知能に全て任せる。

自分の頭と反射では間に合わないものが多いだろうが、自分以上の知能と機能をつくり出せる。

それに全て任せ、自分は要塞のエネルギーになる。

祐志傑作の要塞は、俊也とて壊せないだろう。

絶対の自信で目を閉じる。

瞑想し、伊槻の存在も忘れ集中し始めた。


あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

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