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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
28/38

幹部達

「うっわ、なにこれ」


彰の文句に答えるものはいない。

皆わかりきっていたのだ。

彰はみんなの言葉を代弁したに過ぎない。


「どんなのだよ」


2~3ヶ月に一度あるらしい特別任務に駆り出された彰達はとある町外れに来ていた。

今回の任務の内容はダズの戦闘兵器の破壊。

だが_____


「あたり一面機械って言うのはさすがにないだろ、おい」


木の葉を隠すなら森の中、機械を隠すなら機械の中とでもいいたいのか。

ただここは廃棄物置き場なのだが、とにかくすごい。


無力世界ヴェールよりも酷いんじゃ・・・」


梓が呟く。

それこそ地平線が見えるほどの広さが故障した機械で埋もれている。

電力が残っているのか、歩いているとまれに機械が突然動き出したりするらしく、かなり危険である。


「はぁ、やるしかねぇだろ」


詩音がため息まじりに歩き出す。

その直後。


「うわっ!」


錆びた部分に乗った伊槻の足元が崩壊。

見事に顔面を機械のパネルにぶつける。


「ダサすぎです。放っておいて大丈夫です。行きまわっ!!」


軽蔑的に倒れた伊槻を見ていた俊也も数歩歩いてすぐ同じ運命を辿る。


「行きまわっ!ってなんだよ・・・ってか足元見てりゃあ大丈夫だろ」

「それは甘いんだな、海人」


慎重に歩き出した海人の背中を彰が悪戯を思いついたような目で見る。

その前にいた詩音に目をやると、視線に気付いた詩音が振り返る。

目で合図を送ると詩音は銃を手に作り出す。

狙いを一瞬で定めて今降ろされようとしている海人の足の下を、踏まれる運命だった機械を打ち抜く。


「わっ!?」


バランスを崩す海人に必死で笑いを堪えながらも彰が歩き出し、そして。


「ぃっ!」

「にょ!?」

「またかよ!!」


海人同様に詩音によって転ばされる。

それも、3回連続。


「ここまで引っかかるのはどこの大馬鹿野郎だよ」

「目の前の馬鹿です」

「俺以上に酷いな」


海人に馬鹿にされ、俊也にバッサリ切り捨てられ、伊槻に哀れまれた。

そして_____


「普通3回も引っかからないよ」

「クスッ」


梓にまで呆れられ、詩音に真っ黒な笑みのまま笑われた。

日常茶飯事の悪戯だったが、今回は彰も怒った。


「いい加減にしやがれえぇぇ!!」


ただし、最初に思いついたのは彰。

実行犯は詩音だが、主犯は紛れもなく彰で、詩音が気まぐれで彰を狙っただけである。

彰がやらせなければ防げたこと。


「貴方がほとんどの原因でしょう?若干はメレが悪いかもしれませんけど」


突然降ってきた声に空を見上げると、宙に時亜がいた。

相変わらず時亜はローブを着ている。

その色はいつもよりどす黒い。


「メレ、この人たちとここにいるとは思いませんでしたよ。てっきり私達を裏切ってここの兵器を壊しにきたのかと思ってたのですが・・・違うようですね」


時亜が口の端をぐっとあげて笑みを浮かべる。

対照的に詩音は先ほどまで浮かべた笑みを消し、無表情になる。


「そうだな、もうすぐだからな」

「・・・詩音?」


淡々とした声で詩音は時亜と会話を続ける。


「そうですね、もうすぐ夢が叶うのですから」

「お前の夢と、アイツの夢がな」

「おや、貴女も望んでいませんでした?」

「ああ、自分アリュリーもだったな・・・」

「あまり嬉しくなさそうですね」

今の自分(アルセイディ)は望んでないからな」

「軽く私にはショックな言葉ですが・・・それでも、やるのでしょう?」

「やるしかないだろ。アイツの命令は絶対だ。逆らえた例がない」

「でしょうね、だからあの方についていけるのですから。さあ、やりましょう」


時亜は機械の上に下り、足元の機械を蹴った。

奇怪な音を機械は出す。

動いたのだ。

咄嗟に彰達は身構えるも、変化は彰達の周りで起きる。

妖しい色の結界が張られ始め、彰達を覆おうとする。

結界が完成するまでの数秒にも満たない時間。

その間に新たな人が完成前の結界に飛び込んで来た。


「弱冠不利?でも、幼馴染を攻撃できるのかな?」


聞きなれた声、見慣れた顔。

祐志だ。

髪と瞳の色が少し褪せた様な気がする。

だが、それ以外は相変わらずだった。


「祐志、やっぱりダズにいたのですね」

「俊也か。腹の調子はどう?」

「セルビアのおかげで傷も残ってません。それより」

「戻る気なんかさらさらないよ。それに」


祐志はどす黒い笑みを浮かべる。


「自分の意志で、ダズに入ったんだ。あの方に気に入られてこのラルと言う名を与えてもらってこうしてお前たちのところに来てる。もう、お前たちが苦しもうが死のうが可哀想だと思わない自信があるよ。もうお前たちとの関係はないよ。ダズに入って、すごく楽しいことばかりだったよ。その楽しいことの続きが、今回の仕事だよ」


祐志は機械の山に手をつく。

魔力メイを注ぎ、機械を変化させてゆく。

機械を結界に触れるぎりぎりの高さまでの鋼鉄の壁に変え、その壁で結界の中は迷路のように複雑になった。

もちろん、その壁を壊されないように魔力でありとあらゆる耐性を持たせる。

技族クックの天才であるがゆえに、それらを一瞬で作り上げた。


「一人ずつ、追い詰めてやるよ!」

「覚悟してください」

「いくぞ」


ダズの幹部3人は迷路の中を歩き始めた。

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