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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
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運命の日

卒業式、7人にとって散々な日となっていた。

特に彰・海人・梓は特に酷い迷惑なことが起こる。

残りの4人にも酷いことが起こる。


「市川先輩!私にボタン下さい!!」

「新崎先輩!!私と付き合ってください!」

「アズ先輩、このあと一緒にどこか行きませんか?」

「紺野先輩、幼馴染を誰か紹介してくれませんか!!」


毎回恒例となってしまった後輩からのラストアピールが、卒業式の終わったお昼少し前から始まった。

3人を中心に群集ができ、一人離れている詩音の周りには詩音のファンや3人のファンが集まって詩音に必死になってお願いをしている。

残された伊槻・俊也・祐志はラストアピールと群がった後輩たちにもみくちゃにされ、7人が解放されたころには既に夕日がほぼ完全に沈んでいた。


「疲れた・・・」

「何で断っても断ってもくるのかな・・・」

「アズは分かるけどよ、他はどこがいいんだよ・・・」

「知るか・・・」


海人も梓も彰もいつもと変わらない笑顔で「丁重にお断りします」と全てを断っていったが、それでも人は減るどころか増える一方であった。

人付き合いが苦手な為にいつも以上に不機嫌な目つきで詩音は群がってくる後輩を睨んでいた為に早くに人は減ったが、やはり結末は伊槻や俊也達と一緒だった。


「まぁ、気を取り直して僕の家に集まりませんか?」


俊也が解散するよりはいいと笑いかけると伊槻と祐志が頷いた。

梓も私も行くと宣言するように手を上げる。

それによって自然と彰と海人が加わり、残る詩音も行くことになった。


俊也の家は普通の一軒家である。

俊也は10離れた妹が一人いるが長期出張中の両親について行ってる為に誰もいない。

誰も生活していないために少し埃っぽくなって入るが、幼馴染たちにとって都合のいい溜まり場となっている。

人数分の毛布があるために度々泊まることもあった6人は寮の次に馴染みのある宿泊場でもある。

もちろん、高校生男女が同じ部屋というのはいろいろと不味い為、鍵付きの俊也の部屋に梓と詩音が入る約束である。

極稀に詩音はリビングで平気で寝ているが・・・

興味がない上に恐ろしい為に手を出すことは120%ない。


「疲れた、っつーか飯ぃ。腹減った」

「荷物、家に送っちゃったの失敗だったかも」


家に着いてリビングに入るなり女二人の不満発生。


「アズちゃんは俊也の服着れるんじゃない?男の服って少し大きめだし」

「ジャージでいいなら貸すよ?余分に持ってるから」


海人が俊也を指差した隣で彰が持っていたバッグを探って梓に差し出した。

数秒迷ったあげく手を伸ばした梓の手に詩音が自分のジャージを握らせた。

梓に握らせたジャージのほかに1着、制服の下に着ていた詩音は梓をつれて洗面所へと向かっていった。


「覗いてたら殺すからな?」


リビングを出て行く直前の詩音の脅し言葉に不機嫌オーラがたっぷりと宿っていた。

こんな調子では就寝前に八つ当たりタイムが発生するだろうと察知した男たちは顔を見合わせて犠牲にするものを考えた。


「・・・ここはやっぱ彰でしょ、原因作りナンバーワンの」

「いや、ここはマゾで喧嘩の仲介役の祐志だ」

「無理無理」

「皆の平和のために逝って下さい・・・伊槻」

「まさかの流れ弾ぁ!!しかも漢字違う!まだ死にたくねぇ!!」

「うるさいよぉ」


着替え終わった梓と詩音が戻ってきた。

梓の着ているジャージにはもちろん紺野と書いてあるが、まぁ気にしないでおこう。

その後、他の5人も持っていたジャージに着替えるなり、下に着ていた普段着になるとリビングの中央に固まって座った。


「・・・やっぱ詩音がスカートっていうのは違和感あったな」

「確かに」

「合わないよね」

「自分もそう思う・・・」

「アズちゃんは可愛らしいんですが、詩音はちょっとおかしいです」

「同感」

「男の子用のほうが似合うよね」


そんな普段と変わらぬ雑談をしていた7人だった。

いつもと同じように、明日が来ると思っていた。

だが、それは裏切られる。


______過酷な運命の歯車は、動いた。


突然床が黒く染まったと思うと大きな穴へと変わった。

一瞬で地を失った7人はそのまま重力に引っ張られ暗い闇へと落ちていった。


「!?」


突然のことに戸惑うが、何もできることはない。

ただただ、重力の虜となって落ちていく他なかった。


「わっ」

「うおっ」

「グヘッ」

「いっ・・・て」

「っつぅ」

「ィタィ」

「・・・着地成功」


真っ暗な闇が突然に光を受け入れ、どこかの森の中の小屋の前へと変わった。

うまく着地できた詩音を除く6人は地面に落ちた。


「ここは・・・」


詩音がすっと立ち上がると小屋に触れた。

まったく意味の分からない6人はただ黙って顔を見合すだけである。


「・・・イーフィ、か?」


小屋の戸が開き、中から老人がでてきた。

杖を突き、白い髭を生やし、茶色の襤褸を纏った優しい雰囲気のお爺さんであった。


「マーモ爺さん。お久しぶりです」

「あぁ、久しぶりじゃの。なぜ、ここに?」

「よく分かりません」

「そうか・・・」


知り合いらしい詩音とおじいさんが数回言葉を交わすとお爺さんは小屋へ入るように促した。

よく分からないままに6人は小屋へと入っていった。




モウ、後戻リハデキナイ。

タダヒタスラ前ヘト進ムシカナイ。

既ニ運命ノ糸ハ脱ケ出スコトガデキナイホド、キツク絡ンデイルノダカラ。

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