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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
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戦闘開始

目の前の地獄絵図に8人は呆然としていた。

建物は燃え、人は肉片となってあちこちに散らばっている。

黒い煙が目を傷め、血と人肉が燃えているらしい匂いが鼻をつく。

吐き気を覚えながらも空を見上げれば、黒い竜が2体、灰色の竜が1体。

自分等が作り出した地獄の上を悠然と駆けている。


「酷い・・・」


誰からかそんな呟きがもれる。

1時間もしないうちに平和な都市が死の都市へと変わってしまった。

最悪な状態だった。




_____数十分前


ビュークはすぐに司令塔に入って慌しく指揮を執り始めた。

たくさん飛び交う情報や指揮の内容から詩音と俊也が自体を確認。

詩音は獄竜ヘルト・ドラゴンが現れて、戦えるかもしれないとしかわかっていないキースに説明、準備を始めた。

俊也は彰達に話す。


獄竜ヘルト・ドラゴンが人を喰らっているそうです」


非現実世界ヴェルメンは絶縁空間と呼ばれる見えない空間によって隔てられている。

ただ、この空間はヴォルメスが長い間維持できるようにと強度は紙からしてみればかなり低く、非常に脆くなっている。

そのために、絶大な量の魔力メイを当てれば穴を開けられてしまう。

それを利用して詩音が魔力世界デメイースから無力世界ヴェールに行ったり、彰達が無力世界ヴェールから魔力世界デメイースにきたりすることができる。

マーモが言っていた「魔力メイがないから帰せない」というのもこのことであった。

ダズが超巨大な穴を開け、そしてそこから獄竜ヘルト・ドラゴンという恐ろしい魔物が現れたのだ。

魔の神(フィリール)の魔の力を大量に受けて進化した地獄世界スカルアース最強の魔物、獄竜ヘルト・ドラゴンが3体。

その3体が近くにある都市を襲撃中、既に死者が都市の人口の半分はいっているだろう。

今、セアンとセルビアが絶縁空間の修復を実行中。

正界レジスタンスの精鋭部隊が退治を試みたが、あえなく全滅。

全員が喰われてしまった。


「私たちが出る!準備を持ってきて!」


ビュークとキースの手に戦闘衣が渡される。

普段着ている服の上からそれに着替えると、さらに液体の入った瓶をも渡された。

キースが受け取ってポケットにしまいこむ。


「ゼノリー様たちも行かれるのですか?」

「行くって話みたいだし。行くっきゃないだろ」


下っ端らしき人がおずおずと彰に話しかけ、彰の返事がくると同時に彰達にも戦闘衣が渡される。


「メレさんも」

「イーフィ。メレはダズでのコードネームだ。それに・・・邪魔なだけだ」


詩音は戦闘衣を突き返すとその場でくるっと回った。

普段着のような服が一瞬光り、次の瞬間にはあの短いスカートに肩だしのシャツになっていた。

右目の眼帯はいつものようについたままだ。


「私と俊也ラフィール海人エースで1体。キースと伊槻ラディミュースで1体。詩音フィーゼノで1体。必ず退治するわよ」

「OK!」


そうして8人は飛び出した。




8人が都市についた頃には人の姿が確認できないほど壊され、喰い尽くされてしまった.

8人の使命は、獄竜ヘルト・ドラゴンをこの場で全て退治することだった。

他所の都市でこの地獄絵図を展開させてはならない。

キースはポケットに入れていた瓶を天高く投げた。

詩音が瓶が落下を始めてすぐ銃で撃ち、中の液体を辺り一面へ振りまく。

中の強力な動物の油の匂いに獄竜ヘルト・ドラゴンが集まり、そして8人に気付いた。


「私たちは灰色のを、キースたちは黒の大きい方を、フィーたちは残る黒の小さいのを!」

「「「「「「「了解!!」」」」」」」


8人が一斉に散った。

戦闘開始だ。


ビュークが灰色の獄竜ヘルト・ドラゴンに、梓が大きな黒い獄竜ヘルト・ドラゴンを、詩音が小さな黒い獄竜ヘルト・ドラゴンを魔術で攻撃。

竜を挑発した。

怒って突っ込んでくる獄竜ヘルト・ドラゴンから逃げるように、ビュークを海人が抱えて地獄と化した都市へと走る。

梓も伊槻に抱えられる。

大きく海人とは逆方向へと跳躍して獄竜ヘルト・ドラゴンから逃げると、狙い通りに大きな獄竜ヘルト・ドラゴンは追ってきた。

詩音はその場から離れずに獄竜ヘルト・ドラゴンを睨む。

狙い通り、獄竜ヘルト・ドラゴンは3体ともばらけた。

後は各個撃破するだけだ。


「デカイな・・・」

地獄世界スカルアースの竜ってこんなに大きいの?」

「腕が鳴るねぇ」


20mはゆうに越える巨大な竜に追われながらも、伊槻とキースは笑う。

己の血が過剰に反応している、戦族ソル特有の感情せんとうきょう

それに挟まれている梓はいたって冷静に上空の獄竜ヘルト・ドラゴンを眺めていた。

梓の髪が輝き始める。

梓の天才の能力が封じられた扉が開き始めた。


「この辺で行くぜ!」

「連携ぐらいできるよねぇ?」

「掩護します」


梓をおろした次の瞬間、2人の戦闘狂が獄竜ヘルト・ドラゴンとの戦いへと身を投げた。




「正直私は近距離戦は苦手なのよ」

「じゃぁ前線は俺だけだな」

「海人、無理だけはしないでください」


都市の中にある大量の廃墟の一つに身を潜めた3人は作戦の確認をする。

地獄世界スカルアース獄竜ヘルト・ドラゴンと戦うときは普通近距離からだ。

だが、このメンバーでは近距離戦は無理がある。

海人の負担を俊也とビュークでサポートして倒す、もしくは他の獄竜ヘルト・ドラゴンを倒した別のグループの掩護が来るまで持ち堪えるか。


「ちょっときつかったかしら・・・」

「さて、やりましょう」

「行ってくる!」


廃墟から獄竜ヘルト・ドラゴンがよく見える位置へと海人は飛び出した。




「基本魔術・雷」

「基本魔術・炎」


詩音は目前に迫った獄竜ヘルト・ドラゴンめがけて術を放つ。

基本の術だが、詩音に流れる万族オウルの血が持つ魔力メイは特上。

かなりの威力で獄竜ヘルト・ドラゴンにヒットする。

彰も獄竜ヘルト・ドラゴンに炎の塊を投げつける。

だが、魔力メイの使いすぎによる暴走を防ぐためにあまり魔力メイが使えなかった。

炎でのダメージはあまり期待できない。


「・・・足引っ張るなよ」

「うるさい!」


早くも喧嘩一歩手前となってしまった2人であった。

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