容姿の変化
詩音が正界に居ついて1週間。
敵としていたのはたった2~3日だったのに、とても早く時間は過ぎていくようである。
その間に全員の能力の覚醒が完了していた。
彰は茶髪の髪の色がだんだんと変化していき、金に美しく光るようになっていった。
瞳の色も髪と同じ、美しい金へと変化した。
真の王とバレやすくなった為に彰はビュークの助言で元の茶色より明るめの色に染め、茶色のカラーコンタクトをつけた。
海人は既に覚醒が終わっている。
伊槻も覚醒が終わっていたが、髪の色がまた黒に戻っていた。
キースによれば血に似た髪の赤での興奮を抑えるための身体の機能ということらしい。
そのために瞳の紅はずっと変わらず、今もなお紅のままである。
俊也は毒々しい紫の髪と、美しい紫水晶の瞳をもつようになった。
俊也はかなり気に入らないようで彰と一緒に元の髪色に似た黒に染め、黒のカラーコンタクトをつけた為に以前と変わらぬ姿にはなっているのだが。
梓は綺麗な青みの強い緑の髪と瞳を持つようになった。
詩音は幼少時に覚醒が終わっている上、元から髪色の黒に黒の瞳の色で変化はない。
「うーん・・・正直まだ違和感たっぷりだよ」
覚醒による変化を嫌って元と同じような色に染めた彰と俊也や元と変わらない詩音はいい。
ほんの少しの変化だから簡単に慣れてしまう。
だが、海人は随分と感じが変わったし、梓の髪は長くてかなりよく目立つ。
全然違う人に見えてしまうのだ。
「この一週間で一番変わったのはアズちゃんですが、ここに来てからは一番伊槻がおっかなくなりましたね」
「しょうがねぇだろ・・・彰や俊みたいにカラコンはつけたくないし」
「あ~、確かに伊槻は手入れとかしなさそうだな」
「俺だって真面目なときはあるし、結構綺麗好きなんだぞ」
「嘘つけ、伊槻は絶対気にしない」
「・・・殴っていいか?」
「ごめんなさい・・・だから睨むな!それが怖い!!」
紅い目は結構威圧感を与えられるらしい。
そして睨めば相当な威圧感を与えられるらしい。
現に今、彰が縮こまっている。
最強と呼ばれる王の情けなさ過ぎる様子に詩音とビュークが揃って笑いを堪えていた。
「フィーだったらぴったりじゃない?」
「・・・そうか?」
「似合うだろうけど俺等・・・特に俺の命が危ねぇ」
「彰なんか寿命どの位縮むんだろうね」
「5年くらいは縮んじゃうんじゃないのぉ?」
「一応特殊生命体の特性で生まれるときに戦族の天性を授かったから赤眼にはできるけど?」
「怖い理由がわかった気がする」
海人がぽつりと独り言のように言った。
悪気はない海人の呟きだった為に、詩音は少し真面目に訊ねた。
「・・・そんなに怖いか?」
「うん。喧嘩してるのとか見てると正直怖いもん」
即答。
しかも梓にされれば詩音も傷つく。
そっぽを向いて、「あっそう」といじけてしまった。
あの詩音をいじけさせるなんて梓が7人の中で最強なのかもしれない。
「ボス!緊急事態です!」
「地獄世界との絶縁空間がダズに破られ、獄竜が現れました!」
いきなり部屋に飛び込むように入ってきた男2人の報告にビュークはわかったと答えるとキースに目配せをする。
キースはいつも以上の笑みを浮かべて部屋の隅においてあった大剣をとる。
「皆ぁ、行くよぉ!!」
訳が分からない彰達も行くことは決定されていたみたいだった。