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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
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ダズの幹部と正界のボス

爆発音、サイレン、雄叫び、悲鳴・・・

たくさんの音が、声が、耳に一斉に届く。

その中でよく響いた音が高笑い。

扉の奥にいた男、時亜キャレの笑い声だった。


「ハハハハハ!!さぁ、共に行こう!高みへと!!」


狂ったように笑う時亜に詩音は呆れたように背中を見せて室内に戻る。

時亜は詩音の肩を抱くかのように腕を回した。

詩音は嫌そうに顔をしかめるが腕を払うことはなく、時亜を受け入れた。

彰の心の中に靄が生まれた。

なんだか、気に入らない。

気安く幼馴染(しおん)に触るな。

何でそんな風にお前(しおん)も時亜を受け入れるんだ?

わざと足音を立てて2人に近寄ると、詩音はいっそう顔をしかめた。

その事がより一層彰の靄を大きくした。

俺がそんなに嫌いなのか。

まだ時亜の方がいいのか。

そう思うと「嫉妬」という靄がどんどんと膨れ上がっていた。


「はぁ・・・一応正界(レジスタンス)ボス(ビューク)の抹殺を頼まれてるんだろ、キャレ」

「えぇ、まぁ。でも、簡単に勝てますよ。未来の夫の力ぐらい、貴女なら知っているでしょう?」


海人にはプチッと何かが切れる音が重なって聞こえた気がした。

詩音の唇の端がヒクヒクと動いている。


「キースがいるから注意しろと言っているだけだ」

「おや、心配してくれているのですか?」


______ブチィッ

海人だけではなく、梓も、俊也も、セアンも、セルビアも、ビュークも、キースも、確かに聞こえた。

詩音が、彰が、伊槻が、我慢できなくなってキレた。


「誰がてめぇの心配すると思ってる・・・さっさと終わらせろってだけだ」

「さっきから馴れ馴れしいぞ、てめぇ!穢れた手で大事な幼馴染に触ってんじゃねぇ!!」

「も~ぅ我慢の限界だぁ!何が未来の夫だぁ!!詩音が恋愛や結婚に興味ねぇの位知ってるだろ!!」


怒鳴り声に耳を塞ぎながら部外者たちはその場から離れ、扉へと向かう。

3人が時亜に怒鳴り終えると一瞬で修羅場と化した。


「早くどけ! 上級魔法・鎌鼬嵐」

「ムカつくんだよ!! 銃弾強化・死弾」

「危ないですね・・・ 印・無力」


彰が鎌鼬の嵐を呼び、伊槻が両手に漆黒の銃を作り出して、銃弾の威力を最大まで強くした。

2人は同時に時亜へとぶつけるが、その前に時亜は2人を無力化させた。


「お前がな。 印・聖域」


詩音がつま先でとんとんと床を叩くと、白銀の光が現れた。

光は時亜を吹き飛ばし、詩音はそのまま扉へと向かった。

時亜は尻餅をついてしばし呆然としていたが、静かに妖しく笑うと立ち上がった。


「いいんですか?ここに来た軍隊だけでも危険ですが、そこにメレの指揮が入ってしまえばここは30分もしないうちに壊滅しますよ」

「いいわけないのら~♪」

「でも、ボスが殺されるほうが困りますわ」


時亜の発言にセアンが剣を抜き、セルビアが手に淡い青の光を集めて杖を作り出した。


「キース!ゼノたちを連れてダズの軍隊をどうにかしなさい!」

「フフフゥ、身体が疼くねぇ!!皆ぁ、キャレはセアンたちに任せて行くよぉ!!」


キースが扉からものすごいスピードで出て行くと、海人がついていく。

伊槻は俊也の腕を掴み、キース以上のスピードでキースたちを追いかけた。

彰は有無を言わさず梓を抱き上げると飛ぶように扉をくぐった。

その様子を見ていた時亜はクツクツと妖しく笑うと、目の前にいる3人を見た。

才能のある証拠である青髪の正族ジャティが睨み殺されるのではないかという位時亜を睨んでいるが、時亜はその鋭いにらみを飄々と流して、隣で古そうな杖を持った幼げな王族オウルと美人な正界レジスタンスのボスを見た。

2人とも、いい魔力メイを持っているなと思った。

それでも時亜の勝利は動かないと見た。

だからこそ思う疑問が一つ。

なぜ、さっきキースと呼んでいた戦族ソルを一緒に戦わせなかったのか。

今最初に出て行った戦族ソル正界レジスタンスのボスが組めば時亜が勝つことができなかっただろう。

馬鹿なのか、それとも何かあるのか。

後者だと予想して時亜は3人が視界に入るように動く。

3人も人数が多いところを勝利の希望と考え、誰か一人でも時亜の視界に入らないように無言で3人が調整をかけ合う。

しばらく、無言の時間が流れる。

時亜が3人の動きが絶対に見えるのは部屋の角だが、それでは咄嗟の時に回避ができない。

やはり地道に位置を変えるしかないのか。

ふと視線を3人から部屋へと移したその隙を、セアンは待っていた。

生暖かい息が時亜の頬に当たり、時亜の目の前には剣とセアンの顔が迫っていた。

剣はもう一つの剣、時亜の剣で受け止められていた。

魔族ジックである時亜だが、剣がまったくできないわけではない。

瞬時に作り出した剣をとっさに顔の前でやや斜めに構えた。

嗜み程度の為に不慣れな剣だったが、なんとかセアンの剣を受け止めた。

セアンが移動のために吸っていた空気が衝突と共に吐き出されて時亜の頬が生暖かい息を感じたのだ。

だが、力も技術も差は歴然。

すぐに時亜は剣を手から離して距離をとる。

ガランと金属が床に落ちる鈍い音と同時に時亜は腕の痺れを感じる。

セアンも、剣を通じてきた手ごたえに驚く。

予想以上だ。

見切りは完璧だ。

気を抜けば一瞬でやられてしまう。

長期戦は難しい。

後ろの2人がどうなのかわからない。

ビュークやセルビアはいつ動く?

疑問や不安が徐々に溜まっていく。

セアンはぎゅっと剣の柄を強く握り締める。

時亜は両手に術を展開し始めた。

ビュークやセルビアも、術の展開の準備をはじめた。

そして、動いた。

眩い光が部屋を包み、光が消えたときには部屋の中に動くものはなかった。



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