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非現実世界《ヴェルメン》  作者: Tries
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再会

忍び笑いが聞こえたほうに目をやると、少し離れたところに生えた木の下に祐志が立っていた。


「まさか本当に来てるとは・・・嬉しいな」


祐志は嬉しそうに笑うと7人のほうへと向かってきた。

俊也が一番に祐志へと駆け寄った。

少し服や顔が汚れてはいたが目立った傷もなかった。

無事でよかったよ。

俊也はそう言おうとしたが言うことは叶わなかった。


「グッ・・・」

「おかげでこっちから向かう必要がなくなったから」


祐志は一瞬で作り出した短剣で俊也の腹を刺した。

俊也の白い戦闘衣が鮮血によって真っ赤に染まり、俊也の足は力を失い崩れ落ちた。


「急所は外したよ。次は心臓狙うけど」


崩れ落ちた俊也を片手で無理矢理立たせると空いた手でまた短剣を作り出した。

短剣を胸に突きつける。

俊也の荒い呼吸で上下する胸が切先に触れる。


「彰。一緒に来てもらおうか?それとも、全員殺してから無理矢理連れて行こうか?」


できれば後者がいいけどねと心の中で笑う祐志。

痛みに耐えながらどう逃げようかと頭を悩ます俊也。

隙を探すセアンとキース。

術の発動準備をするセルビア。

「どうする」と無言の相談を始める海人と伊槻。

予想不可能な未来を考える彰。

沈黙の時間が生まれ、一瞬のうちに変化は起きた。


「うああぁぁぁ!!」


祐志の手に黒い光が生まれ祐志は激しい痛みに襲われた。

短剣と俊也を支える力を手放し、結果として俊也は刃から逃れられる。

黒い光はすぐに消え、痛みのなくなった手で短剣を拾い直される前に俊也はなるべく遠くへと地面を滑らせる。

海人がそれを足で受け止め、隣では戦族ソルの十八番である身体強化を使った伊槻が俊也の腕を掴んで祐志と距離をとるために跳躍。

伊槻と俊也が着地したところでセルビアが俊也の傷の回復のために準備していた回復術を発動させる

人質も武器もなくなった祐志に向かって隙を窺っていたセアンとキースが剣を抜いて飛び出す。

だが、剣は祐志に届くことはなかった。


「ゼノ・・・」

「邪魔ぁ」


祐志に向かって飛び出した2人を見て彰は2人を上回るスピードで走り出し、先回りして祐志を庇うかのように腕を広げた。

無言で体中に防御印を発動させた彰は斬撃を防ぎ、真っ直ぐに目の前の2人を見る。


「俺の親友だ。傷つけるな」


多分止めなくても祐志は死ななかったと思う。

でも、見ていられなかった。

甘いことだとは思う。

けれど、心の声に身体が勝手に動いた。

思考を全て無視して彰は祐志を守った。


「甘い。真の王と呼ばれるお前が言う言葉じゃない。時には正義でも殺す。今の場合、殺しておいた方が後々安全だった」


セアンがいつもの口調を捨てて彰を睨む。

彰は怯むことなく、逆にセアンを睨んだ。


「殺すことが正義か?」

「違うだろうな」

「それなら、なぜ?」


彰の問いに答えようとセアンが口を開こうとした。

だが、それよりも早く祐志が叫んだ。


「こうなるからだよ!!」


祐志が先ほどよりも大きめの剣を作り出して彰の背を狙って振り上げた。

しかし、その動きはそこで止まってしまった。


「・・・ラル、任務失敗。一回帰れ。後始末は私がやる」


祐志の後ろに突如詩音が現れ、祐志に触れて祐志をその場から消した。

詩音は昨日と変わらぬ格好をしているのだが、昨日とは違う雰囲気を出していた。

昨日のように冷たく殺伐としていた感じではなく、いつものような、幼馴染達といるときのような平和な感じがした。


「俊也、生きてる?」


心配そうな声で詩音は尋ねた。


「生きてます。セルビアが回復術が使えたのでなんとか」

「そう、よかった。梓は?」

「都合上置いてきた」

「そうなんだ・・・。まぁいいや、一応言っとく事があるけど、祐志は完全に洗脳されてるから自分でも助けられなくなっちゃったから。救出から組織壊滅だなんて面倒なことしてないでさっさとダズを壊滅させてくれる?」


昨日とは違う詩音に彰達はもちろん、キースまでもが呆然としていた。

そんな詩音を怪しく思い、伊槻は尋ねた。


「まさか、今日のが本物で昨日のが偽者だったのか?」

「両方本物だけど?昨日は監視がいたからああしただけ。今日は自分が監視役だからいつものに戻しただけ」


何も危害を加える気はないからと言いながら詩音は腰に差していた銃を抜いた。

とっさにセアンと海人が剣を構える。

だが、その銃を詩音は伊槻に投げた。

伊槻は片手でキャッチして、その銃を見た。

何の変哲もないただの拳銃である。


「彰の魔力メイが暴走したらそれで撃ちな・・・銃弾は麻酔弾。撃てば自分こっちへ連絡がくるから魔力メイを止める。昨日かけた術を理解してるなら、キース、伊槻、撃つことに躊躇はしないだろ?」


詩音が真剣な眼差しで伊槻を見る。

伊槻はしばらく銃を見つめた後、腰に差した。

頷くことはしなかった。

やっぱりまだ信じきれない。

一応は敵である詩音の言うこと全てを鵜呑みにしてはいけないが、少しは信じてみようと思う。

疑うような表情の伊槻から警戒を解かずにいるキースへと詩音は顔を向けた。


「いくつか、謝らなきゃいけない事があるんだけど・・・なんかいい隠れ場所はない?」

「この近くにある正界レジスタンスの第3支部はぁ?あそこならダズも来ないんじゃないのぉ?」

「駄目だ。・・・あそこには正界レジスタンスの情報網目当てのダズのスパイがうようよいる」

「街な・・・・フィーは警備隊ジャスティンにも見つかっちゃ駄目だしねぇ」

「外じゃ見つかりやすいし・・・自分の行くところはダズに握られてるだろうし・・・」

「それならぁ・・・」


2人がいろいろと案を出しては却下していく。

その隣で海人が案を出した。


「移動魔術で正界レジスタンス本部の部屋に直接行けばいいんじゃないか?ビュークはボスなんだから専用の部屋持ってそうだし、鍵もついてると思うんだけど?」

「あぁ!確かにビューク(ボス)の部屋ならダズはいないしぃ・・・ビュークもミュースもいるねぇ」

「・・・そういうところは術体制がしてあるんじゃないか?」

「うん。確かにしてあるけどぉ、部屋の前なら大丈夫ぅ。俺がいれば開けてくれるよぉ」

「それじゃ、行きますか」


俊也が移動魔術の準備として精神統一を静かに始めた。

8人を一斉に移動させることにはあたりまえだが大量の魔力メイを必要とし、それを身体中から急いでかき集める。

自分の体の中に気を集中させて魔力メイの溜まっている所を探し出してそこから少しもらう。

その間にも魔力メイの溜まっているところを探し出していく。

そうして集めた魔力メイを俊也は一気に地へと放った。


「陣・長距離移動」


俊也を中心に大きな円を描くような緑色の紋様が彰達の足元に浮かび上がり、そして眩く光った。

次の瞬間、紋様の上にいた彰達はいなくなった。

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