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42.儀式中の出来事

「僕のせいなんです、すみません!!!!」


 意識不明状態のセレスティンを公爵城まで連れ帰ってきた青年は、事情を聞く為に集まった面々に向かって開口一番そう言った。身なりからして儀式に参加していた六大公爵家の誰かだろうに、そんな事は関係ないとばかりに頭を下げている。地面につくのではないかとこちらが心配になるほどだ。


「……それはどういう意味ですか? いえ、それよりもまず貴方の名前を伺っても?」


 七歳の子供が場を仕切るといういささか奇妙な状況ではあるものの、この場で青年と同等の立場なのは多分、公爵代理の委任状を持つ自分だけだろう。そう当たりをつけたナディアはバーナードを始め、後ろに控えている者を代表して質問した。


「あっ……大変失礼いたしました。私はトワイライト公爵家が嫡男、ヴェスペリオン・エルデン・グローミングと申します。……その……、実は閣下が倒れたのは僕の魔術が未熟なせいなのです。儀式が終わる前に私が担当していた箇所の結界が消失してしまいまして……」


「それは……つまり儀式が失敗したという事でしょうか?」


 「結界が消失した」という言葉に眉を跳ね上げて追及すると、ヴェスペリオンは慌てて否定した。


「いいえ! 魔法陣の修復自体は無事に終わりました。……ええと、魔法陣は普段皇城で厳重に護られており、近寄る事は許されません。ですがこの儀式には『皇都の護りが強固である事』を見せつける側面もあるので、あえて皇都の広場で行い、誰もが近くで見れるようになっています。その為、六大公爵家筆頭の閣下が魔法陣修復を行い、私を含めた五家は周囲に結界を張り、国民に危険が及ばぬよう、そして外部の人間が妨害をせぬように護る事になっているのです」


 ヴェスペリオンの説明にナディアは頷き、続きを促した。


「修復が完了したら、魔法陣を再び皇城へ戻してから結界を解除する、というのが本来の流れ……なのですが、今回初めて儀式に参加した緊張からか、魔法陣の修復か完了したタイミングで気が抜けてしまい、私が担当していた区域の結界を消失させてしまったのです。……近くに居た国民が魔法陣の強い魔力に当てられ倒れていく中、私は……パニックになり、どうする事も出来ませんでした」


「なるほど……それで閣下が……」


「はい。私の区域が皇城のほぼ真ん前だった事もあり、魔法陣と共に移動中だった閣下がいち早く気付いて助けてくれました。魔法陣を皇城へ戻しながら、並行して私の代わりに結界を張り直し、市民の避難と治療を警備や神殿の者に指示してくださったのです。……そのお陰で儀式は無事に済んだのですが、疲労からか、陛下への完了報告直後に閣下はお倒れになり……。全ては私の責任ですので状況説明も必要だろうと、こうして参上した次第です」


「状況は分かりました。今日はグローミング卿もお疲れでしょうからお休みください。……バーナード、案内を」


「かしこまりました」


「お気遣いありがとうございます。……あの、それで閣下のご容態は……」


「状況を聞く限り閣下がご自分で行動を起こしたようですし、卿に責任はありません、気に病む必要はありませんよ」


 遠回しに「お前には関係ない事だ」と言ったのが伝わったのか、ヴェスペリオンは傷ついた表情をしたもののなにも言わず、バーナードとカトリーヌと共に応接室をあとにした。


「……ヴェスペリオン・エルデン・グローミングか……どう思う?」


「怪しいところはないように見えたけど……」


 イノセントの言う通り、嘘をついている様子は見えなかった。だがトワイライト公爵家と言えば皇太后の実家。嫡男、且つ儀式にも参加したとなれば次期公爵の可能性が高く、油断は出来ない相手だ。


「ラファエルからの報告待ちにはなるけど、状況的に持っていった魔力ポーションじゃ足りなくて、通常の魔力ポーションに手を出した結果倒れた、って感じかな」


 ラファエルとナディアは、前もってセレスティンに病状が悪化する理由を説明し、それを回避する為に開発した安全な魔力ポーションを渡していた。それなのに倒れたという事は、それ以上の魔力を必要としたという事だろう。


 もしこの状態を故意に作り上げたのだとしたら、トワイライト公爵家には高い情報収拾能力だけでなく、セレスティンの人となりまで把握して緻密に計画を立てるだけの頭脳役が居る事になる。果たしてそこまで出来るものだろうか。


「彼の話が事実で、かつ意図的なものなら厄介だね……。ひとまずは儀式中の状況の裏取りはしておこうか」


「そっちは僕に任せて、伝手があるから。……なににせよ、これからはより一層気を付けて。皆の前で倒れたなら、今頃貴族全員が閣下の不調を知っていると思った方が良い。誰かの仕業にせよ偶然にせよ、この機会に色んな思惑が動くはずだ。例えば君の命を狙うとか、その逆に次期公爵として取り入ろうとするとか……ね」


「そうだね……、肝に銘じておくよ。どちらにせよ、こうなった以上子供の姿じゃ不便だ。元の姿に戻るよ、その方が自衛も出来るしね」

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