表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/58

15.真相

 ラファエルという人物は医者だった。


 訓練場に駆けつけたラファエルは「誰だ?」と言う目でナディアを見てから、バーナードに、セレスティンを寝室へ運ぶよう依頼した。


 ナディアはそのままカトリーヌに連れられて自室へと戻り、結局セレスティンの身に起きた事は分からず仕舞い。日課となりつつあったセレスティンの訪問も一応待ってみたけど、その日扉がノックされる事はついぞなかった。


 翌日。セレスティンは疲労感が漂う表情でナディアの元へとやってきた。


「昨日はすまなかった、ナディア殿」


 ——いや……、それよりも大丈夫なのか、閣下? ああいう事は度々起こると聞いたけど。


「ああ、もう大丈夫だ」


 意図的なのか、セレスティンは前半の質問にしか回答しなかった。普段のナディアであればそのまま引き下がっただろう。だけど今日は、セレスティンが困るだろうと思いながらも質問を続けた。


 ——治るのかい?


「……その為にラファエルに頑張ってもらっている」


(言い方からして、治らない可能性が高いという事じゃないか)


 ——命に関わる?


「……残念ながら」


 薄々感じていた事だけど、セレスティンは嘘をつかない。その代わり自分からはなにも言わず、聞かれたら渋々答える事にしているようだ。


 ——いつまで……。


「十年以上はまず難しいと言われた。そもそもが治療法どころか、原因すらも分かっていないんだ……」


 余命十年。いや原因も分かっていないような病なら、それ以下だとしても不思議ではない。


(何故だかとても裏切られた気分だ。別に閣下は私を騙したりはしていない。だけど……)


 だけどこれは。


 ——契約違反ではないけど、こんな重要な事を黙っていたなんて。


「本当にすまない。……もし貴方が望むなら、契約を解除しても良い」


 ——そういう事じゃない! そういう事じゃないんだよ、閣下。……契約は解除しない。だけど今はこれ以上話したくない。


 ナディアが指差した最後の一文字を確認し、それからもう一度「すまなかった」と謝罪をしてセレスティンは部屋を出て行った。


(閣下はなにが悪かったのか分かって謝っているんだろうか。いや、それよりも私は一体なにに腹を立てているんだろうか……)


 別にセレスティンが自分の病の事を隠そうが隠すまいが、契約上セレスティンがナディアを守るのは、魔力を取り戻す時までのせいぜい数年。十年近く生きられるのであれば契約の履行にはなんの支障もないはず。それなのにナディアの中には、もやもやと言いようのない感情が広がっている……。


 でもこれでやっと分かった、とナディアは小さく呟いた。セレスティンがナディアを養子に迎えた本当の理由が。


 ずっと気になっていたのだ。セレスティンは「別に後継者さえ絶やさなければ血族である必要はない」とナディアに説明した。だけどナディアの髪色を見て自分の血族だと判断し、初代公爵に最も近い、とも言った。


 つまり初代公爵からセレスティンまでの数百年間、傍系であろうが直系であろうが、必ず血族を後継者にしてきたはず。いくら血族じゃなくても良いとは言っても、優先度が高いのは一目瞭然だった。


 それなのに養子を迎える理由がどうしても分からなかった。公爵はまだ若い、せいぜいが二十五やそこらなはずだ。たとえ第二皇女や他の貴族の下心のせいで夫人捜しが難航したとしても、決して焦るような歳じゃない。


 養子を迎えようとしたのは、圧力に弱く、いつ裏切るか分からない家門と結びつきたくなかったからだろう。それならいっそ、平民から天涯孤独の夫人を選ぶという手もあったはずだ。


 だけどそうしなかった、否、そう出来なかった理由は……。


(今から結婚して子供を産んでもらっても、十歳になる前に自分が死ぬから、か……。残った夫人と子供だけでこの家を守れる保証はない。だから外部から跡取りを迎えようとしたんだね)


 あの日、ナディア以外の子供達は皆そこそこ年齢がいっていた。セレスティンは当初、十年後に確実に成人している年齢の子供を探していたんだろう。だけどナディアの髪色を見て気が変わった……。赤子でも良い、と思うほどに。


 ナディアが赤子じゃなかったと知って、セレスティンはむしろ喜んだだろう。むしろ魔女なら、なにがあっても公爵家を守れる、とすら思ったのかもしれない。道理で待遇が良いはずだ。


 家族と呼ぶには短くて、だけど他人だと言い張るには情が芽生えるほど長い時間。そんな中途半端な期間しか一緒に居られないと最初から知っていたら。


(知っていたら……なんだと言うんだろう。森から解放される為には、あの時点では契約を交わすのが最善の策だった。知っていたところで私の選択は変わらなかったはず……)


 そう、思うのに。何故かナディアの気持ちはいつまで経ってももやもやしたままだった。

面白い!続きが気になる!と思った方は良ければブックマーク、いいね、感想、評価よろしくお願いいたします。作者が泣いて喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こちらもよろしくお願いします!

2024年4月20日2巻発売!

吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

二巻表紙


1巻はこちら

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ