冬
2024年 1月 1日 投稿開始
1月 4日 次回投稿予定。投稿時間は “午前11時” です ←
冬だった。
例年のように乾いた、部屋。
部屋の中の冷気。
張り詰めた空気感。
呼吸というものが息継ぎであることに気づかされる時期。
「出来たらいいね」が年末まで延期されて、
来年への持ち越しになる季節。
「もう少し、貯金をしたらよかった」
「明るい気持ちで来年を迎えたかった」
今年で解決できなかった問題をそのまま抱えて、
年を越してゆく不安さ。
「これでいいのか…?」と、自分を振り返ってみた。
上手くいきかけたことがあった。
恋人ができた。
30歳過ぎてからの恋人。
この年齢になると、将来を見越して考える。
それで選んだ人。
良い人だった。
人格的に、良くできた人だった。
ただ、自分とは異なる幸せを通じて生きてきた人だと思った。
生きた経験が異なる人。
僕には孤独感や、独りに馴れてしまった生き方があった。
彼女がそれに「うん」と、うなずいてくれるのかが心配ではあった。
言葉足らずの思いに悩まされて、僕からメールをすることが多かった。
僕の焦りや、コミュニケーションの下手さ、いらない気遣い…。
居心地を悪くさせているのかな?と、常に心配があった。
職場での出会いがあって、しばらくして奥手の僕から告白をした。
初めは食事に誘って、3回目のデートで想いを告げた。
3回目のデートは遊園地だった。
恋愛技術に不安な僕は「3回目ではキス」
それを達成しなければならない。
そんなマニュアル重視の使命感を持っていた。
観覧車に乗り、手をつなぎ、想いを告げて…。
一通り、遊園地のアトラクションを終えた。
最後に残しておいた観覧車へと誘い向かった。
ゴンドラが到着し、手を取り、観覧車の座席に2人横並びに座った。
観覧車の中、一通りのアトラクションを終えた僕らの会話は静かになった。
徐々に、僕らを乗せたゴンドラは地面から頂上へと向かっていた。
会話に困りながら、そろそろか…と思ったとき。
僕らとは逆に下がってゆく迎えのゴンドラに、子供の姿が見えた。
子供と目が合った。
その瞬間、僕の頭の中での達成目標が不純な行為に思わされた。
これからゴンドラの中で行うことは子供にとっては、やや不純な行為。
僕の達成目標は、そこではストップされた。
そんな思い出があった。
何回目かのデートで、それは無事に達成できたのだが。
なのに
「ぺしっ」
僕は、黒い帽子を床に投げ捨てた
それは響きもしない
絶望的な軽い音で、
絶望的な薄っぺらさだ
僕の代表作は、
恋した瞬間、世界が終わる -地上の上から-
現在、連載中です。
もし良かったら、読んでください!