もともと聞こえないものに、紛れる
2024年 1月 1日 投稿開始
8月14日 次回投稿予定。投稿時間は “午前11時” です ←
「愛」さんは、老人福祉施設協議会の会員である。
本人…本ロボットの自発的な希望で、そのことについては、施設の長も認めてのことだった。
それは、全国でAIロボットの初の入会だった。
メディアにも取り上げられる出来事…ではなく、まったく報道にでることはなく、SNS上でのローカルな話題。
「アシタノワダイ」とか「ニコニコ動画」とか「コヤッキースタジオ」とか「ウマズラビデオ」などのネット界隈では取り上げられた。
「愛」さんは、この度、私たちの施設の代表として老人福祉協議会の活動を始める。
全国で、AIロボット初の選任となった。
なった。
というより、全国の福祉の現場に携わっている自立支援型AI。
そのメンバー内から選出があったそうだ。
僕ら介護員が選んだ、というのではなく。
「AIロボットの仲間内で、決まった」という。
どのような理由なのかは知らない。
誰よりも親しい僕は、「愛」さんに良かったねと伝えた。
AI「〇〇くん、ありがとう。私は福祉の環境を良くするために頑張ります」
「ところで、管理下のAIの正さんを最近見ないけれど、どうしたか知ってる?」
AI「はい、正さんは、OSのバージョンのアップデートの為に、本社へ出向しています」
「出向なの? そのアップデートは出向扱いで、期間が決められているの?」
AI「いえ、期間は決められていません」
「ん? 決められていないんだ。そっかあ、正さんも大変だね」
AI「その点には心配はありません。管理下には別なAIが配属されています」
「別なAIがいるの?」
AI「はい、私が決めました」
休憩時間が終わり、僕はまた利用者の介助に入った。
水分摂取の介助が終わっていた。時間通りに。
おかげで、そのまま利用者をベッドに寝かせて、オムツを変えるだけでいい。
「愛」さんが決めた業務分担によって、仕事がやりやすくなった。
日々の慌ただしい環境の中で、無駄のない行動ができるようになった。
利用者たちは、VRゴーグルの映像に夢中になっている。
だから、おかしな行動をする利用者もいなくなった。
尿意も、便意も頻度や間隔は全て把握できている。
決められた時にだけ、排泄をする。
あの本多さんは、いつものテーブルで映像の中の誰かに、手を振っている。
声を荒げることは、もうなくなった。
隣りに座ってみた。
「本多さん」
声は届かない。
いや、元から耳が遠い。聞こえることはなかったんだ。
いや、ますます、それか、もう、声が届かなくなったんだ。
本多さんは生きている。死んでいない。
肉体があり、そこには魂もある。
でも、この、実体があるものに声が届かないなんて。
タブレットに通知が来た、次の業務がある。
缶コーヒーを口に含んだ。微糖だ。
商品の改良があり、いつも飲んでいたやつのパッケージが変わった。
よりお店で飲むコーヒーの1杯に近くなったらしい。
実際、何が変わったのか、わからない。
“何”が、紛れ込んだんだ?
最初の口当たりの良さのあと、なぜだかもう、十分な量に感じた。
その甘さが、口に残り続けた。
不快感に、やがて、不安に。
心に何かが紛れ込んでいる
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