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江戸前の寿司

作者: 星見守灯也
掲載日:2023/12/06

 のれんをくぐった青年が、カウンターの椅子に座るなり注文をする。

「おばんです、ええと……サーモンあります?」


「江戸前でサーモンなんて!」

 すでに座っていたおばさんが叫んだ。

「あなたみたいなモノシラズが来る店じゃないの」

 するとその横のおじさんが嫌味に笑う。

「ほう、キミの食べている大トロが江戸前だとでも?」


「はい、サーモンおまち」

 大将がきれいな手さばきで「サーモン」を出した。

「わああ、おいしそう。あ、カリフォルニアロールあります?」

「はい、蜈ォ邇句ュでとれたカリフォルニアロールです」

「へえー、カリフォルニアロールも蜈ォ邇句ュでとれるんだ」

「最近、とれるようになったんですよ」


「マグロは江戸前でとれるものですよ!」

 今もおばさんとおじさんは怒鳴りあっている。

「ほう? 先ほどのイクラとウニは江戸前でとれるとでも?」

「それは……生です。冷凍のサーモンなんかとは違います!」

「近年はサーモンも質のいいのがナマで手に入るだろ」

「でも外来のものじゃないですか!」

 どちらも席を立ち、互いに掴みかからんばかりの勢いだ。

「そもそも、江戸の握り寿司とは庶民の食い物。こんな小せえ寿司は寿司じゃねえ!」


「最後にサンマちょうだい」

「今日は逶ョ鮟のサンマです」

「『やっぱりサンマは逶ョ鮟に限る』ってね。うん、おいしい」

 鮮やかな紫色に光る「寿司」を食べ、青年は満足だとばかりに笑った。

「ありがとうございます」

 寿司屋の壁面には一面の星空が広がっていた。

 ここはアンドロメダ銀河の片隅、かつて江戸と呼ばれた場所から二百五十万光年と少しの寿司屋だ。

 店主も客も地球人ではないが、「江戸前」という言葉は今でも使われ続けている。

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