料理のあれこれ
2人からバレンタインを貰った次の日今度は、何故か2人がお弁当を作ってくれると言いってくれ、今日のお昼は2人のお弁当となった。
「白木さん教室にいないと思ったら、もう来てたんですね」
「2人とも話してたみたいだったので、僕は葉月と少し話してからこっち来ました」
2人とお昼を共にするようになってから、この学校の伝統のようにやってきていた、毎日告白は2人がなかなか来なくなったことで、回数は減った。運がいいことに僕達がここで食べているのはバレていない。
「白木さん今日は楽しみにしてましたか?」
「めっちゃ楽しみって程じゃないですけど、それなりには楽しみにしてましたよ」
この間貰った花鶏さんのチョコは美味しかったから、お弁当もどうなるのかという点で楽しみにはしていた。
て言うか、花鶏さんを見てるとこの間の花鶏さんの家に落ちてたアレが頭の中を、高速通過してくな。
「はい白木さんどうぞお弁当です」
いつもと同じように、僕の隣に座った花鶏さんから猫柄の入った濃いピンクのランチクロスに包まれた、お弁当が手渡された。
「ありがとうございます」
「翠々花も持ってきてるんでしょ、なら私なよ」
「わ、私のは…」
十山さんは、先程から自信なさげに花鶏さんの後ろから着いてきて、いつもよりも会話が少ない。
「と、とりあえず千夏の見てからでいいかな?」
「て言うか、そもそも1人分を2つ渡すのが間違ってますもんね、1回私の食べちゃいますか」
て言うか言われてから気づいたけど、僕今から2人前の食事をするのか。
「それじゃあ花鶏さんのお弁当オープン!」
とりあえず先に貰った花鶏さんのお弁当箱を開けると、中身は肉巻きにお米、そこにその他いくつかの副菜達といったラインナップになっている。
「おー、これまた美味しそうと言うか見た目がいいと言うか」
「いやーそこまで言われると、朝早起きしたかいがありましたよ」
「それではお先にいただきます」
十山さんからも貰うわけだし、早めに花鶏さんのも食べてしまって2個の弁当を食べれる時間を確保しよう。
「美味しいですか?」
「僕の語彙力が低くて申し訳ないんですけど、普通に美味しいですよ」
「白木さんの舌にあったようで良かったです」
多分こんな感じというのであれば、花鶏さんの料理よ味付けはそこで言う優しい味付けという感じだと思う。
「ごちそうさまでした」
「じゃあ次は翠々花だね」
「私はやっぱいい」
「え、でも白木さんにあげるため朝から頑張ったんでしょ、見ればわかるよその指とか」
花鶏さんに指摘されて、十山さんの右手を見ると絆創膏が数箇所貼られている。
恐らく、料理が苦手で包丁使いになれていないから手を何度か切ってしまったのだろう。
「と、とりあえずいいのこの2つは私が食べるから」
そう言うと、僕と花鶏さんにはお弁当が見えないように反対向きになってお弁当を食べ始めた十山さん。
白木の弁当
「ごちそうさまでした!私はもう行くから」
「なんでそんなに怒ってるの」
自分の作った弁当を食べ翠々花は、少し怒りながらこの場を後にして行った。
(情緒不安定な奴だって思われちゃったかな)
翠々花は昼を食べていた所を後にしたその足のまま、屋上へ続く階段の踊り場で1人反省会をしていた。
(だって、しょうがないよな千夏のあんないいもの見たあとだと絶対見劣りするし、何より私の弁当あんなんだもんね)
翠々花の頭の中で自分の作ったお弁当の内容物が思い出された。卵焼きはかたちが崩れスクランブルエッグのように、ハンバーグは焦げて黒目になっていたり。
さらにそれらを作るのに、3回ほど再挑戦しての結果だということがさらに翠々花の心を攻撃する。
「あ!いた十山さん」
1人静かに泣きそうな心を収めつつどうにか心を前向きにしようとしていたら、階段下から白木の声が聞こえた。
「白木君か、どうかしたの?そんなに息切らして」
翠々花のもとにやって来た白木は、肩で息をしている。
「十山さんを探してたんですよ。つ、疲れた」
「ここで寝ると汚いよ」
残った体力で頑張って階段をのぼり、翠々花の横に倒れ込んだ。
「十山さん大丈夫ですか、さっきからどうも調子がおかしい気がするんですけど」
「逆に白木君が大丈夫?死にそうだけど」
(急にキレながら帰って行ったらそりゃ変だと思われてるよね)
「僕は大丈夫ですいつもの事なんで。十山さんこそ、なんでさっきから物腰柔らかなんですか」
「白木君は私をなんだと思ってるの」
「いや、なんて言うんですかね。十山さんいつもより覇気がないというか、いつもの接しやすいような喋り方じゃないんですよ」
翠々花の声は今日の間ずっと、いつものような聞き取りやすい大きさの声と言うよりも、清楚寄りの優しい声になっていた。
「ほんとに、白木君は私をなんだと…」
「で、僕は考えたわけですよ恐らくというかほぼ確お弁当のせいだと」
「そ、そうだけど…」
珍しく感の働いた白木に不調の原因を言い当てられてしまった。
「そこでなんですけど、十山さんのお弁当食べていいですか?」
「私の不調の原因知ってるんだよね!?」
「いやー、やはりしっかりと原因と向き合った方が治ると思って」
「で、でも、だからと言っても…」
「まあまあいいじゃないですか」
さっきからなぜか、自信満々の白木に完全に押され気味の翠々花。
「もう!わかった!はいどうぞ」
「ありがとうございます」
翠々花のお弁当を受け取った白木は、その場でお弁当を開封。翠々花は、白木の顔が見えないようそっぽを向いている。
「おお、これはなんとも…」
「だから言ったでしょ、だから返して」
「いただきます」
「ちょ、ちょっと」
早く返してといった翠々花の言葉は無視して、翠々花のお弁当を食べようとする白木。それを止めようと、白木の腕を掴む翠々花。
「1口、1口だけでいいので」
「それも嫌なの、てかなんでそんなに強腰なの!」
白木は力がないのか、翠々花が腕を掴んだだけで簡単に動きを止めることができた。
「お願いします、十山さん1口でもいいので。僕は十山さんのお弁当が食べたいんですよ!」
「…」
白木の一言に負け、何も言わずに掴んでいた手をゆっくりと離した。
話された瞬間、白木は急いでお弁当からひとつおかずをとって口に入れた。
「これは…」
「美味しくないでしょ?」
「普通に味は美味しいですね」
白木に言われたことが嬉しかったのか、顔が一気に赤くなる翠々花。
「で、でも見た目とか」
「見た目はそうですけど、味は普通なんですよハンバーグは少し苦いですけど。バレンタインのチョコだって、形は崩れてましたけど味は美味しかったですし」
「そ、そう?」
白木の繰り出す褒め言葉たちに、下を向いていた気持ちが段々と上向きになっていく。
「それに、このお弁当そんなに悪いものじゃないと思いますけど」
「嘘でしょ、千夏の弁当見て言える?」
「そう言われるとって感じですけど、じゃあ僕がお返しに弁当明日作るので食べてください」
「急になに?」
「まあ、とりあえずそういう事で」
白木は強引に締めくくって、階段を降りてどこかに行ってしまった。
何がなんだかわからないまま、次の日がやってきてしまった。結果的に昨日白木にお弁当のことを聞いそびれた、翠々花は白木が何を狙っているのかもわからないまま日常をすごしていた。
「十山さん、これどうぞ」
「あ、ありがとう…」
「えー翠々花ずるい。白木さん私のはないんですか?」
「僕のは数量限定なので、もうないですね」
「えー」
千夏には特に何も無いことに、軽いマウントをとりつつ白木の渡してくれたお弁当を開封した。
「す、すごいね」
白木のお弁当の中身は、翠々花のものと同じようなラインナップではあるものの、翠々花の最寄りも酷くほぼ全てが焦げているか形が崩れまくっている。
「白木さん、凄いですね」
「そうなんですよ、僕も料理苦手でそうなっちゃうんですよね」
千夏と翠々花は白木のお弁当に度肝を抜かれている中、白木はお恥ずかしながらみたいな感じの表情をしている。
「だから、十山さんはまだマシな方なんですよ」
肩に手を置いて安心しろよ、みたいな感じで翠々花に笑いかける白木。
(やっぱりこの人は…)
「じゃあ貰うねいただきます」
「ちょっと待ってください!それはサンプルみたいなもので味が本当に…」
白木の静止は聞かずに、白木作のお弁当を口に運ぶ翠々花。
「うん、まずいね」
「だから言ったのに」
「私も食べていいですか?」
「花鶏さんもですか、別に十山さんにあげたものだからいいですけど。ほんとに、気をつけてくださいね」
「そんなに言いますか…まず」
白木は、この後翠々花に菓子パン等を奢ってから、3人で白木のまずい弁当を間食しきった。




