冬場の昼食
「白木さんおはようございます」
「白木君おはよ」
「おはようございます、千夏さん翠々花さん…やべ」
昨日の感覚のまま、2人の名前を呼んだことに気づいて急いで口を塞ぐ。
「白木お前いつの間に、2人のことを下で呼ぶ男になったんだ。ここに来て進化か?進化なのか?」
「違う違う、ちょっとしたミスだって」
「そうか、ついに白木も感動するな…」
葉月が何に感動してるのか知らないけど、言い方的にあまりいい方向では無いのは分かる。
「にしたってお前急にあの2人と距離近くなったよな」
「そ、そう?」
「まあ前に何度か強制的に近づくことはあったかもだけど、最近は結構普通めの距離近いっていうか」
それに関して僕も少し感じてるけど、別に今のところそれで困ったことはないし。それに僕は僕で、2人とは普通に話したいから全然嬉しい。
「ま、俺は普通に羨ましいけどな。あの2人と一緒だなんて」
「でも葉月はあの2人に告白とかはしないんだね」
あの2人に告白している人達はだいたい、可愛いからとかステータスとして見て告白してるけど、葉月は2人を可愛いとか言いつつも特段行動はしている印象がなかった。
「まあ、そりゃ付き合えたら嬉しいとは思うだろうけど。特段告白しようとは思わないな、そもそもの話雲の上の人すぎて告白する気が起きんわ」
「確かに…」
僕は告白する訳では無いけど、あんな美人に告白と考えると怖気付いてしまうかも。
てか、そうなると告白してる人達は精神力強すぎないか。
「白木さん一緒に食べません?」
「いいですよ」
4時間目の授業終わり花鶏さんがすぐに僕の机まで来て、お昼に誘ってくれた。これで、前回分合わせて2回目のお昼となる。
ちなみにあの日以降から今日まで、一緒にお昼を食べていないけれどあの日、告白来なかったことはどちらかが体調不良だったという感じに片付けられている。
「でも、どこで食べましょうか。白木さん食堂嫌なんですよね」
「そんなに行きたくないですね。他の場所で言うとやっぱり…」
僕が思いつく範囲だと、やはりあの校舎裏の放置されたベンチぐらいしか思いつかない。あそこは見た感じ、そこそこ綺麗に保たれていたし昼食を食べる分には全然入れる場所だと思う。
「校門前とかいいんじゃない?」
「げ、翠々花いつの間に…」
僕がどうしようか悩んでいると、いつの間にか横に十山さんが立っていた。
「校門前って何かありましたっけ?」
「ほら、ベンチがいくつか並んでるでしょ」
「そういえばあったような」
見慣れた景色すぎて、頭から消えてたけどそういえば校門から学校までの一本道の所に、ベンチがあったような。
「じゃあ今日はそこにしましょうか。いいですか、白木さん」
「僕は大丈夫なんですけど…早めに移動しませんか」
「あ、おっけー」
この2人と長い間教室で立ち話しているのも、そこそこ周りから目を引くらしく少しではあるけれど、何人かがこっちを見てヒソヒソ話をしているのがわかった。
「やっぱ寒い外」
「冬場はやっぱりキツイですね」
十山さんの提案してくれた、校門前に行くと言っていた通りベンチが設置されていて、なおかつ人が誰も座っていないと言った好条件だった。
「ていうか、ここ3人で座れますかね?」
ベンチは見た感じ、2人用よりも少し大きいぐらいで3人ギリ座れても、すし詰めになってしまような広さをしている。
「まあまあ、いいじゃないですかどうせ寒いんですし。白木さん真ん中でいいですよ」
「2人がいいなら僕もいいんですけど…」
そう言われてベンチに座ってみると、案の定すし詰め状態になった。僕の両片側は、2人に温められて少し暖かいけど。
「狭くないですか」
「だ、大丈夫動けない程じゃないしさ」
「本当ですか?」
聞いてみると十山さんは、僕から顔を逸らして何かに耐えているような声をしている。
「まあまあ、お昼食べましょうか」
「十山さんきついならちゃんと言ってくださいね」
「このキツいは、いいほうだから大丈夫」
やっぱりキツかったらしい。一応本人も大丈夫そうではあるし、そのままお弁当を食べ始めた。
冬場だとたまに冷たい風が吹いて、人の体を冷やしていく。僕が嫌いなやつだ。
「さむーい!」
やっぱ外だと、人目はないものの体に風が当たって馬鹿みたいに寒い。でも、僕は2人に守られていて比較的正面の風しか当たらないけど、2人は普通に当たると考えると、気が引ける。
「僕変わりましょうかどちらか、風寒そうですし」
「別にいいって、私耐えれるし。それに白木君の方が
まずいんじゃないの?」
確かに僕の方が体が弱いかもしれないから、風に当たった時ダメージが大きいのは僕かもしれないけど。
「でも、それで2人のどちらかに風邪ひかれると、僕も心配なので」
「白木君…」
「白木さん私寒いです!位置交換してくれませんか?」
「別にいいですけど…」
唐突に寒いと言った左どなりの花鶏さんと僕の位置を交換して、僕と十山さんで花鶏さんを挟む感じとなった。
「白木さんの言う通り、やっぱ暖かいなー」
「千夏私も寒いんだけど」
「十山さんさっき大丈夫って…」
「今寒くなったの」
寒いなら最初っから我慢せず言ってくれれば良かったのに。
「千夏交代してよ。知ってる?肥満の人は熱中症なりやすいんだってね」
「なんのこと言ってんの?」
「え?千夏ちゃんはーここに沢山脂肪を蓄えてるから、少し温まれば十分でしょ?」
「あ、ごめん翠々花はスレンダーだから寒いのかごめんごめん」
唐突に始まった煽り合戦に2人の語気がどんどん強くなっていく。
「そうなの、私千夏と違ってスレンダーだから変わって欲しいなー」
「でもごめんね、私冷え性だから寒いの苦手で」
「じゃあ教室戻れば?それに、私今まで聞いたことないんだけど」
「最近なったの」
とってもまずい気がする、僕は傍観しながら黙々とご飯食べてるけど2人の攻撃速度がどんどん上昇してってるし。
「あ、あのー」
「「なに」」
邪魔するように、横から声を挟むと2人は先程からの語気をそのまま僕の方を向いた。
「僕真ん中でいいですか。2人の喧嘩はさすがにやめて欲しいので」
「ま、まあ白木君が行きたいなら私はいいけど」
「でも私寒いから真ん中がいいなー」
「ここは和解する流れでしょ!」
花鶏さん寒いのか僕に何かできることって言うと、カイロは今持ってないし、正直僕の手で温めるぐらいしか思いつかない。
「花鶏さん僕と手繋ぎますか?さすがにじょうだ…」
「いいんですか!」
えー、そこまで食い気味で来るの?
「それなら変わります」
「あ、はい」
冗談で言ったのに、本当になって僕と花鶏さんの位置替えで元の状態に戻った。
「はい、白木さん手」
「わかりました…」
冗談だったのに花鶏さんと手を繋ぐことになってしまった、特段手汗とか出てないよな。
「私も手冷たいなー、白木君手繋がない?」
「そしたら僕お弁当食べれない…」
「まあまあ」
半強制的に残った僕の片手と十山さんの手を繋いで、僕は両手が塞がることとなった。
「じゃあはい白木君、お弁当あーん」
「そうなるんですね」
僕の手が使えなくなる代わりに、十山さんが口に運んでくれるらしい。というか、なんで2回中2回自分でお弁当が食べれなくなるんだ。
「ご、ごちそうさまでした」
その後は、十山さんに続いて花鶏さんも僕に食べさせてくれることとなって色々大変だった。
ていうか、今気づいたけど僕に食べ物渡してた箸2人それぞれのだから、無限に関節キスしてたことになるのかなんだか気づくと恥ずかしい。
「どうしたの?白木君顔赤くして、風邪?」
「だ、大丈夫です。僕ちょっと飲み物買って戻るので先にどうぞ」
ちょっと気を紛らわせるために、おしるこでも買ってから戻ろう。




