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オーディション会場からバラエティー収録現場までの移動時間で私は考えていた。
私には前世の記憶がある事、奇跡的に芸能一家に生まれたこと以外に他の子役たちから勝っていることはない。
だからこそ芸能界で生き残るにはどうするか考えなければならない。
「はるちゃん、芸能界で必要なものって何?」
はるちゃんは、初めてあったときから私を子どもと思わず接してくれる。だからこその質問。
「1番は礼儀正しくすること、次に話せることですかね?礼儀正しくすることで他の共演者の方や、スタッフの方たちから気に入られ、こういう言い方はだめなのですが、使ってあげようと思われます。話すことはバラエティーやインタビューで上手く、面白く話すと話を振っていただけるのでその分テレビにも映りやすくなります。」
やっぱりそうよねぇ。
「演技とかはどうなの?」
「演技の上手さも必要ですがやはり先程話したことの方が大事になります。ですが、季楽ちゃんは今のままで大丈夫だから心配しなくてもいいですよ。成長していくにつれ話していくことも重要になってきますがそれは慣れですので。礼儀については既に満点です。」
「そっか。」
私は泣くことが上手くない。喜怒哀楽の演技の中で哀が1番できない。その為不安になっていたが信用できるはるちゃんにそう言ってもらうととても安心した。
泣くシーンは大人よりも子どもの方が多い。大人は我慢するが、子どもは我慢できないからというのが私の中の考察だ。だからこそ子役の泣くシーンは大事になってくる。私は悲しくなることはできても泣くことができないため毎日家族の誰かに協力してもらい練習している。この情報は練習をしなくていい理由ではなく、今はまだ大丈夫だが、頑張れよという意味である。
そんな似たようなことを考えている間にテレビ局に到着。周りの人に挨拶をして髪型をセットしてもらう。あまり必要ないが化粧も少しだけ行う。
その全てが終わりスタジオに入り、他の共演者の方に挨拶をしてまだ来ていない人を待つ。この時にポツンと座って待つことは無い。小さい為周りのスタッフの方や、共演者の人たちががあれよあれよと世話を焼いてくれる。その為絶好の猫かぶり時間、媚びを売る時間である。
「季楽ちゃんって呼んでいいかな?なにわの芸人橋本橋の橋本と本橋です。知ってるかな?」
「はい、しってます。あのさいごのほうにいくと、すぴーどがはやくなっていってるところがおもしろいです!!」
「めっちゃコメント上手いやん!ミスってもフォローするから安心しなよ。」
「おっちゃんたちがフォローしてやるからなー。」
「はい、ありがとうございます‼」
「『記憶の在処』っていうドラマに出てる俳優の新樹花って言います。季楽ちゃん、よろしくね‼」
「あの、にぃにといっしょにどらまでてたはなさんですよね?にぃにとかわいいねってはなしてました。よろしくおねがいします‼」
「あら、嬉しいわ。今日は頑張ろうね。」
「季楽さん、飲み物は何がいいかな?ぶどう、オレンジ、りんご」
「リンゴジュース‼」
「りんごね。はい、どーぞ。」
「やったー!リンゴジュースね、いちばんすきなあじなの!!」
「季楽ちゃん、言葉遣い。あと、貰ったら?」
「あ、はるちゃんありがとう。すたっふさん、ありがとうございます‼」
「いえいえ。喜んでくれてよかったわ。」
と言ったふうに始まるまで様々な人と話していた。
「では、始めまーす。タイトルコールまで3、2、・」
始まった。
「さぁ、今回のゲストは先日デビューしたばかりの御坂季楽ちゃんでーす。季楽ちゃん、緊張してる?」
ここは賢く。
「はい、でも、このばんぐみにでてみたかったのでたのしみにしてました‼よろしくおねがいします‼」
カメラに向かって手を振る。うん、掴みはバッチリ!!
「今回のテーマは、御坂季楽ちゃんについて‼」
パチパチパチパチ
「まずはこちら『自己紹介』」
予想通り。
「季楽ちゃん、自己紹介よろしく‼」
「みさかきら3さいです、すきなたべものはいもけんぴ、きらいなたべものはまだありません。」
チラッ
MCの人を見てこれでいいか確認する。もちろん、カメラに写っていることを分かって可愛く、あざとく行う。こうする事によって、年相応に見られる。
「好きな食べ物は芋けんぴかー、しぶいなぁー。季楽ちゃん、困っていることとか、目標とかはある?」
楽しかったこととかじゃないの?まじかー。こんなのでいいかな?
「えーと、こまっていること?こまっているのはねぇねとにぃにとのじかんがへったことでー、もくひょうはなくえんぎをかんぺきにすることです‼」
よし、行けたと思う‼
「「「かわいい」」」
「そこ、可愛いのは分かるけど、俺が我慢したのに一緒に我慢しようよ‼」
ワハハハハ
首を傾げて、不思議そうな顔をする。すると、自分は可愛いと思っていないので、ワザとっぽさがなくなる。
「あ、ごめんね、季楽ちゃん。お姉ちゃんとお兄ちゃんと遊ぶ時間が減ったの?」
悲しそうに
「はい、まえまではしごとについていってたり、いえでずっといたからあそぶじかんがあったけど、いまはれんしゅうとか、あえてなかったりとかでへったんです。」
ここで切り替え。
「でも、そのかわりかぞくとテレビにでれたり、これからでるかもってかんがえたられんしゅうがんばろうっておもえたり、かなしいのがなくなります‼」
無邪気な笑顔を作ってみると、
「皆さんに言っときますねこれ、撮影前とかにこれ聞くよって言ってないんですよ。イコールアドリブ、本心ですよ。天使ですかね?」
「え?天使ですね」
「新樹さん泣いてるじゃん‼」
「だっ゛で、がわ゛い゛い゛じ、な゛げる゛ん゛だも゛ん゛。」
「「「ハハハハハハハハ」」」
ここであざとく、
「はなさん、はんかちどーぞ‼」
「あ゛り゛がどう゛。」
よし、大成功‼
そんな調子で続いていき、私の演技力披露のコーナーになった。
「では、皆さんお待ちかね、御坂季楽のアドリブお芝居のコーナーです‼」
これは聞いていた。お母さんがお題を出してるはずだからそれにあわせて演技すればいいだけだ。
「では、お題を見てみましょう。」
さぁ、みんなに私の演技を見てもらう時間よ