まずはキャラをアピール‼
「母さん、ばぁちゃんがテレビ見て泣いてるよ。」
お母さんが認知症になった為一緒に暮らしはじめてはや五年。育児に介護に大変だったが子どもも成長し高校生になる。
お母さんの口癖は昔死んでしまった友だちの名前。まだ認知症が進んでいなかった頃からいつもその話をしてくれた。何回も何回も。おかげであった事もないのに彼女のことに詳しくなってしまった。
「テレビ?いつもみてる情報番組で泣いてるの?」
何かの映画の予告で泣いたのかなと思ったら違った。
いつも通りの情報番組。いつもと違うことといえばゲストがいるということ。
「恵華ちゃん、恵華ちゃん。」
恵華。この名前を私はたくさん聞いた。お母さんの昔死んでしまった友だちの名前。
当然、テレビに映っているのは恵華ちゃんではない。でも、なぜお母さんが恵華ちゃんの名前を呼びながら泣いているのかわかってしまった。
恵華ちゃんの癖。
何か企んでいるとき、気分が上がっているとき、彼女は顎を引き、きれいに立ち、手は後ろで組む。他の人もやる動作だが、それだけではない。片方の口角だけをあげ、相手を煽るような目をする。
お母さんは認知症になっても、恵華ちゃんのことだけははっきりと覚えている。
正直、私や息子(孫)のことを覚えていて欲しいと思ったけど、どんな人よりも一緒にいて、仲が良くて、自分の目の前で死んだ友だちを忘れることは出来ないだらう。仕方ない。
恵華ちゃんの生まれ変わりだと思われる、御坂季楽。今日デビューか。
お母さんに長生きしてもらうため、応援していくことを決めた。
この子がこれからどんな活躍をするのかワクワクしながらお母さんに話しかけにいった。
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「ここで、ゲストをお呼びします。2週連続1位のアルバムを発売した姉弟と、今日から芸能界デビューする妹、御坂柚楽さん、蒼空さん、季楽さんです!!」
仲良く手を繋いで階段を降りていく。ねぇねとにぃには笑顔で前を見ながら、チラチラと小さな妹を見守りながら私の歩幅でゆっくりと進んでいく。
私はえっちらおっちらと足元を不安そうに見ながら、ねぇねとにぃにの顔を見て安心するような顔をしながら進んでいく。
事前に知らされたところに立って声を揃えて笑顔で元気よく挨拶をする。
「「「おはようございます!!」」」
さぁ、どれだけ皆の記憶に残ることができるのかな?
ニヤつきそうな頬を我慢しながら考える。
御坂季楽のキャラは前世の記憶を活かして頭が良く、だけど3歳児らしく可愛く、あざとい気味悪がられない子ども。
ここで前世の記憶を活かすだけにすると皆から気味悪がられてしまう。
「まずは今日からデビューの御坂季楽さんに自己紹介をお願いします。」
ニコニコと進行通りにすすめてくれる。とてもやりやすい。ここは前から用意していたセリフを言う。
「みさかきらです‼きのう3さいになりました!しょうらいのゆめははいゆうとせいゆうとモデルになることです‼これからおうえんよろしくおねがいします‼」
言ったあとはドヤ顔になってねぇねやにぃにの顔を確認する。
二人とも笑顔で頷いてくれた。
ここでアナウンサーがなぜ私たちをゲストに読んだのかの説明をはじめる。
「先日御坂柚楽さん、蒼空さんのCDについて新しい情報を発表して頂きます。」
ねぇねがカメラに映る。
「テレビの前の皆様おはようございます。先日発売したCD『家族』についてお知らせします。」
にぃにもカメラに映る。
「今回は初回限定盤を制作していません。なぜなら明日から追加特典を作るからです。初回限定盤を制作しても良かったのですが、多くの皆様に手にとって欲しいのでこの様な運びとなりました。」
「今回の特典には私たちの妹、季楽が出演しております。季楽のデビューに合わせるようにするという色々と予定に支障がきたす可能性があった為今回の特典にしました。」
「わたしがたくさんうつっていたり、ねぇねとにぃにのオフのようすもうつっているので、ぜひ!!おてにとってください‼」
そして、ニコッと可愛く笑顔。前世の私がやったらキモいだろなぁーと思ってしまった。ま、今世の顔は可愛いことを知っている。安心である。
笑顔になった後、二人と顔を見合わせる。とっても仲良しアピールである。癒やされるー。
さて、ここから最後まで番組に参加する。
食レポは詳しく言わないで大丈夫。美味しいだけでOK!
最後に出演者皆さんで最後の挨拶をして終わり。
今日のところはこれで終わりで、明日からドラマなどのオーディションを受けていく。コネも使おうと思ったらいけるが、これはやっぱり自分の実力を試してみたい。
ねぇねとにぃには次の現場があるので母と帰宅する。後はつまらないと思うので今日のところはここで終わりである。