1000まんもじ かいた ねこ
あるところに しょうせつかになりたい ねこが いました。
100まんもじの しょうせつコンテストで きんしょうをとって
プロのしょうせつかに なるために
ねこは とくいな SFしょうせつを かいていました。
ねこの かいている SFしょうせつは
ニャームストロングせんちょうが なかまたちと
うちゅうで ぼうけんする おはなしです。
せんちょうと なかまたちは
まいかい なぞの わくせいを はっけんするのですが
しょうせつかになりたい ねこは
せっていにこだわった ふしぎなわくせいを
50こ かんがえたところで
ついに あたまが ばくはつしそうになり
51わでは やけくそになって
こんなふうに あらたな わくせいの
おはなしを かきなぐりました。
わくせい“ああああ”の じゅうにんは
「ああああ」としか しゃべりません。
“ああああ”せいじん いがいにとっては
ことばのいみが さっぱりですが
“ああああ”ごでは しっかり いみが とおっているので
「ああああ」とさえ かいておけば
りっぱなセリフになります。
ニャームストロングせんちょうと なかまたちも すぐに
“ああああ”ごを まなんだことにすれば
おはなしは ああああ ああああ ああああ…… だけで すみ
100まんもじどころか 200まんもじでも
500まんもじでも つづけられました。
ねこは いままで まいかい ざんしんな せっていや
てんかいを つくりだそうとして なやんでいたのが
あほくさくおもえて おおわらいしました。
ながながと しょうせつを かいたからって
それが なんだというのでしょう?
おうぼじょうけんの 100まんもじなんて
しょうせつを せいほんするときのための つごうにすぎません。
コンテストへの あてつけのつもりで
1000まんもじの “ああああ”しょうせつを おくりつけましたが
しんさけっかが はっぴょうされると
ねこの しょうせつは ぎんしょうでした。
ねこは あきれはてました。
いっそ こくひょうされたり らくせんすればいいと おもっていたのに
しんさいんたちときたら 「このしょうせつは すばらしい」
「これまでにない はっそうだ」と ほめちぎります。
そして きわめつけが
きんしょうをとった しょうせつの あほくささでした。
さいゆうしゅうさくひんは なんと すべてのページが まっしろでした。
きんしょうの じゅしょうコメントで さくしゃは いいました。
「かんがえなしの まっしろと
かんがえぬいたすえの まっしろとは ちがいます。
“A”ではじまる しょうせつの かきだしは
どうじに “B”ではありません。
“B”ではじまる しょうせつの かきだしは
どうじに “A”ではありません。
おはなしの ほうこうせいが きまったじてんで
それいがいの おはなしは かけなくなってしまいます。
ですから なにもかかないことが けっきょく あらゆる どくしゃにとって
さいこうに じゆうどのある 100まんもじとなるのです」
ねこは 「とんだ へりくつだ」と おもいました。
さくしゃにとっては かんがえぬいたすえの まっしろかもしれなくても
しんさいんたちが さくしゃのへりくつを うけいれ
いずれも 100まんもじいじょうの りきさくたちの てっぺんに あろうことか
0もじのしょうせつを すえたという じじつが しんじられません。
けれど ちょっと かんがえてみれば SFしょうせつの しっぴつだって
へりくつをこねている というてんでは おなじです。
つまり へりくつしだいで
なんでも しょうせつと いいはることが できるのです!
むなしいですね!!
しょうせつの じったいが へりくつなら
そんなことを わざわざ もじに おこして
みんなに つたえるひつようが あるでしょうか?
へりくつが たのしければ あたまのなかで すきなだけ
じぶんにとって さいこうの おはなしを こねくりまわし
ニヤニヤ わらっていたらいいのです。
ねこは さいゆうしゅうさくひんの まっしろなページを
いちまいずつ やぶりとり くしゃくしゃにまるめては とおくへ ほうりなげ
それきり にどと しょうせつかなんて めざしませんでした。
しょうせつかたちよ! ペンをすてて そとへ でかけよう!!
せかいは ひろい!
しょうせつなんか かいているヒマに できることが たくさんある!!
すがすがしい きぶんで おさんぽしていた ねこは
いつのまにか どうろを おうだんしていたことに きづかず
くるまに はねられて しにました。
おしまい