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柱の陰に鬼(自称嫁)がいた


 果梨についていくと、どうやら洒落たカフェと書店というブックカフェなる店の前に冴木の姿があって、俺に気付いて寄って来た。


「あっ塚野くん!」

 何やら可愛い服装をしているが、そういう格好をしないと入れない店なのだろうか。


「冴木も大変だな」

「え?」

「小姑みたいな奴が友達とか、しかも俺に代行電話して苛つかせるとか……苦労してんだな」

「え、電話?」

「――それよりも、杏! 中に入って適当に本を読もうよ!」

「あ、う、うん……塚野くんも」

「お、おー」


 意思の疎通が出来ていないままで俺に電話して来たのかと文句を言いたかったが、気にしないことにする。


 女子二人と俺一人。

 絵的に珍しくないはずなのに、どこからか冷気ならぬ痛い視線が注がれているのは何故だろう。


「塚野! 失礼だと思わないのか? 杏がお前なんかに熱視線注いでんだぞ! 杏を見なよ!」

「ん? って言われてもな。そういう果梨は見てないのか?」

「自惚れるなっての!」

「果梨、言い過ぎ。塚野くん、このお店来たの初めて?」

「来たことないな。よく来るのか?」

「うん、まぁまぁかな。あのさ、塚野くん――」


 トイレに行きたい……これは行くべきか悩むが、冴木なら許してくれるはず。

 それもあるし、さっきから誰かに見られている気がして後ろが気になるし、やはり席を立つしかない。


「……塚野、さっさと行け!」

「んん? よく分からないけどそうしとく」


 冴木に断ろうとしたら、どういうわけか果梨に何かの空気を読まれた。

 もしやコイツは、俺の心でも読めるのだろうか。


 それはともかくとしてもだ。


「……そこで何をしていたのか、聞いても?」

「おっおぉぉ! 奇遇だね、真緒くん!」


 誰かに見られていると思っていたが、まさかカフェと書店の境目となっている柱に隠れているなんて、ただでさえ目立つのに、よくもまぁやるものだと感心してしまう。


「桃未も周りの人にめちゃくちゃ見られてるって、気付いてんの?」

「モチのロンだよ、キミぃ。それよりも、言ったはずだよ? 桃未さんはハーレムと浮気は容認していないのだよ! 言い訳は聞かないぞ! さぁ、さぁさぁ!」

「……つまり頭を黙って差し出せと?」

「カモンカモン!」

「いや、何もここでしなくても……」

「場所なんて関係なーい! 桃未さんだけを意識すれば、周りなんて見えなくなるぜ! さぁ!」

「うぅぅ」

「おぉぉぉぉぉ……癒されるぜ! 真緒くん最高! しかーし、鬼嫁さんに二言は無いんだぞ? よい?」

「あーうん……気を付けるから、だからもういいですか?」

「よいよい。うふふっ……余は満足じゃ! じゃあね、真緒くん」


 昨日のうちに頭を撫でさせていればこんなことには……。

 こんな恥ずかしい思いをさせておきながらも、姉貴はブレないとか、何でこんなにも可愛すぎるのか。

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