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携帯電話と大甘カレー


『よし、出席確認する。今から3分以内に、送信するように! 確認するが、携帯を持っていない人はいるか? 3分を過ぎたら、欠席扱いにするぞ』


 大学に入ってから最初の危機……それは、携帯電話である。


 いや、正確に言えば持っていないわけはなく、こよなく使いこなしていたわけだが……メールとかのやり取りなんてほとんどしたことはなく、もっぱらメッセージのみだったわけで。


 何という横暴な教授なのかと文句を言いたい所だったものの、メールを送信するのに時間をかける奴などあまりいないだけに、訴える奴なんていなかった。


 それでもこれ自体が問題とかでは無く、前例を出したのがよりにもよって、可愛すぎる姉貴だったというオチがあるからだ。


 そんな話を聞かされたのは、昼のカフェでの遭遇でのこと。


「ブーブー!! 真緒くん、聞いておくれよ!」

「はい、どうぞ」

「おかしな奴……や、理不尽な先生がいるんだよー! どうしてくれる!」

「まずはその理不尽なスプーンを、桃未の口に戻してからにしてもらおうか」

「な、何ですと!? 真緒くんがグレた!? 悲しい、悲しいぞ!」

「いや、だから……ここは学内カフェなわけだ。そんで、そのカレーライスは大甘な味」

「うむうむ! 甘いぜぇ~大甘だぜぇ! 甘やかしてあげるっ!」

「それを俺に食べさせてくれようとする優しさは理解するけど、俺は辛口派。いくら桃未からの食べさせでも、無理なものは無理だ!」


 ガヤガヤと不特定多数の学生と先生もいる、昼時の学内カフェ。


 郊外立地なだけあって構内はもちろんのこと、その中に併設されたカフェという名の食堂は、半端なく広い。


 いくら広いといっても、自慢したくないが姉である桃未はとても目立つ女子である。


 その辺の男女とはちょっとばかり事情が異なることから、何故か周りにはナンパな男を含めて、見知らぬ女子の姿があったりする。


「いけず~だぞ! ちくしょうめ!」

「どこの時代から来たのやら……っていうか、理不尽な先生って?」

「それがさー携帯! 出席をメール送信させる奴がいるんだよ! ハイテク苦手なことを知らぬのかー!」

「ハイテクって……それに奴って。確かにメールは普段使わないけど、でも出来なくはないだろ? まさか、欠席扱いになったとかじゃないよな?」

「うぐぐぐ………」


 図星のようだ。

 もちろん救済措置はあって、そんな酷いことにならないようにしているらしいが、それにしたって。


「お姉さんはそんな理不尽な奴に、怒りなんてぶつけられないの! 分かるよね? 真緒くんなら!」

「……つまり、俺に怒りをぶつけたい、と?」

「そんなわけです。さぁ、大盛りなカレーを喰らうがいい!! ふはは!」

「くぅっ……」


 いわゆる『あ~ん』なことを堂々と、それでいて恥ずかしがることも無く差し出して来ているわけだが、俺にとって大甘すぎるカレーは、お仕置きに近い。


 携帯電話のメール問題が何故にこんなシチュエーションに飛ぶのか、それでも甘々すぎる姉貴の言うことには、今日も逆らえない自分だった。

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