いざ、魔大陸へ
ネット小説大賞 2次選考だめでした!
もっと、勉強して皆様に楽しんでもらえるような作品にしたいと思っておりますので、
今後ともよろしくお願いいたします。
ガレイスの屋敷を後にした俺達は、まずはララの宿へと向かった
「ここだよ」
ララが指さした建物には、【蒼海館】という看板がでかでかと掲げられている。
「あれ? 【蒼海館】?」とワタルは首を傾げ、懐からポケットサイズのメモ帳を取り出し看板とメモ帳を確認するかの様に交互に照らし合わせる。
「どうしたんだ?」
「どうやら僕達の宿もこの【蒼海館】らしいね」
「おぉ~それは好都合だね! さぁ、早く中に入ろう!」
「おい、そんなに引っ張るなよ!」
俺はララに袖を引っ張られる形で【蒼海館】の中へと入っていった。
【蒼海館】のロビーは中々広く、片瀬達の高級宿とそん色ない雰囲気を醸し出していた。
ただ、時間が時間なのか、ロビーに他の宿泊客の姿は見当たらない
「ええええっ!?」
館内に入って早々に俺の袖を離し、弾丸の如くフロントへと突っ走って行ったララの叫び声がロビーに響き渡る。
「どうした? なんかあったのか?」
「サクタァァッ!」と俺の腹に向かってすごい勢いで抱き付いてくるララ。
予想だにしなかった俺の口からは、「おぷっ」と情けない声が漏れる。
「お、おい! いきなりなんだよ! どうした!」
俺の胸元に顔を埋め込んでいたララは、見上げる形でウルウルとした瞳を向ける。
「部下達が……部下達が……」
「どうした! 部下達に何かあったのか?」
「ぐすっ……これ……」
ララは、一度俺から離れ一枚のメモの様な物を手渡す。
メモを読んでいくと
『ボスへ 次の商談に間に合わないから俺達は先に戻る。定期船で戻ってきてくれ。フロントに金は預けとく』
「置いて行かれたの、か?」
ララは、プルプル身体を震わせコクリと頷く
「あいつら、いくら次の商談があるからって……ミーを置いて行った……ミーなんてどうなってもいいんだ……」
うお~めっちゃ凹んでる……すげぇ泣きそうだし
「ま、まて! 考えてみろ! ここに『定期船で戻ってきてくれ』と書いてある。 お前の無事を全面的に信じてなかったらこんな事は書けない! その上で大事な商談に遅れてしまうからお前を探したい気持ちを抑えて、先に出発したんだ。商人として商談に遅れるなんてご法度だ、出来た部下達じゃんか!」
なんで俺がこんなに必死にこいつの部下のフォローをしなくちゃいけないんだ!
ポカーンとした表情で俺を見据えるララの身体の震えが徐々に収まっていく。
ララは口をやや尖らせ、「また、お前って呼んだ……」不貞腐れている。
だぁああ! 面倒くさいなこいつ!
「……でも、部下達を褒めてくれて嬉しい」
ララは、少し照れ臭そうにしながらとびっきりの笑顔を俺に向けた。
「お、おう……」
「お二人さん、イチャついてないで部屋にいくよ」
いつの間にかチェックインを済ませたワタルがカギを指でグルグル回しながら、呆れ顔で俺達のやり取りを見ていた。
「イチャついてないし!」
「はいはい。レストランは閉まっているけど、食事を部屋まで持ってきてくれらしいから早く行こう」
「了解、ララの部屋はどうするんだ?」
こいつの部屋は、既に引き払ったようだし。
「カッセルさんが僕達のために、部屋を二つ取ってくれたんだ。流石に年頃の女性と同じ部屋はマズイからね。ララ、今日は満室の様だから、君はレウィと同じ部屋に泊まるといいよ」
おぉ~カッセルさんナイス!
「うん、助かる!」
食事は俺達の部屋に運び込まれるので、女性陣も一緒に俺達の部屋へと向かった。
—―食事が終わり
「ぷは~くったくった!」
「美味しかったです~幸せです~」
「はしたないよ咲太、レウィ」
「あははは、ごめんごめん」と笑って誤魔化す俺の隣でレウィは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「それにしても、サクタは凄く食べるね」
ララは俺の目の前に並べられている皿の枚数をみて驚きを隠せない様子だ。
「君の分だけは十人前をお願いして正解だったよ」
やれやれと言った感じのワタルだが、こいつはやっぱり出来る奴だ!
「さて、今後の話を少ししよう」
全員の視線がワタルに向く。
「僕達は明後日、魔大陸に行く定期船に乗る予定だ。ララ、君もこれに乗るって事でいいかい?」
「そうだね。ミーの部下がお金と一緒に明後日の定期船のチケットもフロントにも預けていたからね」
「じゃあ、君さえ良ければあっちに着くまで僕達と一緒に行動しないかい? 魔大陸の事も色々聞きたいし」
確かに……俺達は魔大陸について何も知らない。箱入り娘だったレウィにも期待は出来ない。
――そもそも俺達について来るかも決まってないしな。
それに比べたらララは商人、そして情報は商人の命。
見た感じ人を騙す様なタイプにも見えないから色々教えてもらえると目的である魔王に早く辿りつけるかも知れない。
「いいよ! 正直一人旅もつまらないし、ミーにとっても願ったり叶ったりだよ!」
「よし! 決まりだな!」
「その前に、ちゃんとお礼を言わなかったね。君達が居なかったらあの悪人面に何をされたか……助けてくれてありがとう! 宿までお世話になってしまって……この恩は絶対返すね」
ララの顔は真剣そのものだ。
「恩とかいいから、偶々あそこにララがいただけだ――うぉ! 近い、近い!」
いつの間にか俺の目の前にララの整った顔が迫る。
「だめだぞ! 偶々だったかもしれないけど、結果ミーは助かった! 命を助けてもらって何もしないなんて商人の名折れってやつだよ!」
「ちょ、近いって! 鼻息掛かってるし! 分かったから、何か困った時力を貸してくれ!」
困った時の決まり文句をララに投げかけると、ララはご機嫌な表情で「うん、絶対だよ!」と返す。
「じゃあ、今日はもう遅いし、これでお開きにしようと思うけどいいかな?」
とワタルが場を締めに掛かったその時――
「あ、あの!」と、レウィが急に立ち上がる。
「どうしたんだい? レウィ」
「私、皆さんと一緒に魔大陸に戻ろうと思います。ちゃんと自分の手で解決したいです!」
「分かった! 一緒に行こう! そんで俺達にも手伝わせてくれ、お前があっちでも笑って暮らせるように」
「うん、折角こうして知り合ったんだ、最後まで手伝うよ」
「何か訳ありっぽいね、ミーにも何か出来る事があれば、ぜひ、手伝うよ!」
「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」
レウィは俺達に向けて何度も頭を下げる。両目一杯に涙を溜めながら何度も、何度も。
—―そして、定期船出航の日がやってきた。
「皆さん、ご無事で!」
「わざわざ来てくれなくても良かったのに、あの変態の所為で忙しいだろう?」
「いえ、カタルシア様が来るまで待ってるだけですので」
「そっか」
ガレイスを捕縛する為に、わざわざ女王様自らお出でになるらしい。
まぁ、ガレイスを口実に少し息抜きをしに来るというのが本音らしいのだが……。
ガレイスは捕縛された後、裁判に掛けられるらしい。
裁判なんて建前で、処刑される事は決まっているのだから、ガレイスにとってはたまったもんじゃないだろう。
まぁ、自業自得だけどね。
うちの女性陣と片瀬達の女性陣は、昨日、女性陣だけで街に繰り出し凄く仲良くなっていた。
今もきゃっきゃっ騒いでいる。
「アニキ! すぐに追いつくので待っていてください!」
「だから、アニキはやめろって」
「アニキは、アニキっす!」
昨日から丸山はこんな感じだ。
俺に再度戦いを挑み、またしても一瞬でやられた事で俺に対する態度が変わったらしい……実に面倒くさい。
誰がアニキやねん!
ブッオー――――ン!
和気あいあいとしていると、乗船開始の汽笛が港に響き渡る。
「行かないとだな。待っててくれ、絶対お前達を日本に帰らせやるからな!」
「はい! よろしくお願いします!」
俺は、片瀬と硬い握手を交わし船へと乗り込む。
ブッオー――――ン! ブッオー――――ン!
出航の汽笛がなると同時に船がゆっくりと動き出す。
俺達は、片瀬達が見えなくなるまで手を振り、片瀬達もそれに応える。
俺達が先程までいたハーヴェストが段々小さく見えてくると、乗客達は各々客室へと向かっていく。
「僕達も客室に行かないかい?」
「もう少し風に当たりたいんだ」
「うん、ごゆっくり」
俺一人を残してワタル達も客室に向かう。
「さてと」
俺達がやる事は2つ。
レウィが笑顔でこの地で過ごせるようにする事。
そして、魔王に直談判して、あっちへの侵攻をやめさせる事。
「待ってろよおおおお 魔大陸ッ!」
「待ってろよおおおお魔王おおおおおッ!」
俺は眼前に広がる大海原に向かって大声で叫んだ。
次は、久々に紗奈の話を書きたいと思います。
ブックマーク、評価などしていただけましたら、作者の傷ついた心が癒されると思いますので、何卒宜しくお願い致します!




