表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/269

地獄城再び

「フゴフゴ、急に現れたからビックリしたブヒッ!」


 と漆黒のレザーアーマーを身に纏った赤いモヒカン頭のオーク族の屈強な戦士は俺達に向けた己の得物やりを下ろす。

 地獄城の門番長であるラーゲンさんだ。


「すみません驚かせてしまって。俺達の事覚えてます?」


 ラーゲンさんとは、以前地獄城に訪れた際に一度だけララを介して面識がある。


「もちろんだブヒッ、サクタ殿とワタル殿。一度見た顔は絶対忘れないブヒッ」とラーゲンさんは自信満々に自分の胸を拳で叩いのち、ハッと驚いた表情を向ける。


「ありゃあ! イドラ様じゃないですかブヒッ!」


 どうやら、ラーゲンさんはイドラさんの事を知っているらしい。

 まぁ、それもそうか。イドラさんは魔王様の相談役。所謂この国の重鎮なのだから、門番長のラーゲンさんが知らなかったら逆におかしい。


「ご無沙汰しております、ラーゲン様」

「いつもお伝えしているブヒッ。イドラ様がオラごときを“様”付けで呼ぶなんて畏れ多いですブヒッ!」

「ウフフ。私もいつもお伝えしていますよ? 私は如何なる時も誰であろうと“様”を付けてしまうので、慣れてくださいと」

 確かにイドラさんは、誰に対しても呼称の後に様を付けて呼び、口調も凄く丁寧だ。


「しかし……」

「すまないが、僕達を通してもらってもいいかな? イドラさんをアーノルド様の元へお連れしないといけないからね」

 

 困り果てているラーゲンさんを見かねてか、ワタルはそう言ってラーゲンさんの本来の仕事を思い出させる。


「分かったブヒ。でも、悪いんだけど少し待っていて欲しいブヒッ。念のため魔王様に確認を取らせて欲しいブヒッ」


 ラーゲンさんは、申し訳なさそうな顔で俺達の断りをいれる。

 まぁ、それはそうだよな。

 いくら魔王と面識があるからって一国の王様に対して顔パスってわけにはいかないだろう。


「もちろん構わないよ」

「感謝するブヒッ!」

 

 ラーゲンさんはそう言って足早に場内へと入っていった。


 ラーゲンさんの事を待っている間、近くに設置してあるベンチに腰かけた俺達は自然と眼前に聳える地獄城に目が行く。


 エメラルドグリーンのそれの美しさに再度目を奪われていたら「ほぅ、これは見事なもんじゃな!」と師匠の口から感嘆が漏れる。


「師匠は、初めてですか? 地獄城」

「うむ。こんな美しく、そして、高い城は初めて見るのじゃ。地獄城と言うのか……その名にそぐわない神聖な美しさだのぅ」

「元々、魔王であられるアーノルド様が、地獄の様に荒れていたこの地を照らす一筋の光をイメージしてお造りになったものですので、オニール様の感想はあながち間違っておりませんわ」

 

 この城の建造にそんな逸話があったのか。

 このバンカーサイトが、先代魔王、つまり、アーノルド様の親父さんが治めていた頃にはかなり荒れていたと聞いていたので、すんなりとイドラさんの話を飲み込めた。


 人が四人もいる事で、一つの話題が枝をのばし俺達は退屈せずラーゲンさんが戻ってくるまで歓談を楽しんだ。



 体感的にニ十分程過ぎた辺りで、ラーゲンさんが戻ってきた。


「サクタ殿、待たせて悪かったブヒッ」

「そんなに長い時間を待ってた訳じゃないので、気にしないでください。それでどうですか?」

「魔王様からの許可が降りたブヒッ、さぁ、オラについてきて「サクタッ!」くれって、レレディオ様っ!」


 二メートルはありそうな鍛えぬかれた体躯にクリーム色の短髪、額に一本角が生えた男前な青年、レレが城から手を振りながら走ってくる。

 

「ウォッ!?」


 そして、俺に抱きついてくる。

 俺より頭一つ以上デカいレレにだかれた俺の顔はレレの鍛え抜かれた固い胸板に包まれ、背中をパンパンと叩かれる。いやぁ~一国の王子様がこんなに俺との再会を喜んでくれている事は光栄なのだが、「わかったから、いてぇから! パンパン叩くなって!」

「おぉ!? すまない! ついつい嬉しくてなッ!」


 相変わらず声もでかい。


「サクタさん! ワタルさん!」

「レウィ!!」


 レレから少し遅れて、今度はレウィが姿を現す。


「やぁ、レウィ。元気そうだね?」

「ここでの生活はどうだ?」

「はい! 皆さんにスゴくよくしていただいて、凄く充実した毎日を送っています」


 レウィをこの地獄城に残して正解だったようだ。


 俺達の様子を見守っていたレレは「さて!」とイドラさんの前へと近づき片膝をつく。


「イドラ様! ご健勝そうで何よりです!」

「レ、レレディオ様! お立ちになって下さい! 一国の王子様である貴方様が私ごときに膝をつくなど!」


 慌てるイドラさんを尻目にレレは悪戯っ子の様な笑みを浮かべ、イドラさんを見上げる。


「イドラ様は、我が祖父の右腕と言われ、父上が唯一頭の上がらない御人! そんなイドラ様と比べたら俺の地位などないような物です!」

「そういう訳にはいきません「さぁ、そんな事より、父上がお待ちです!」」


 珍しく引かないイドラさんの言葉を遮り、レレはズカズカと地獄城の中へと入っていく。


 そんなレレの後ろ姿に「はぁ~そんな事って……」とこれまた珍しく愚痴を漏らすイドラさんを伴い俺達はレレの後を追い地獄城の中へと入っていった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

次話は、帰ってきた元王子②になります。

後数話は、サクタと司の話が交互に更新される予定です。


また、最近、作品を読み直して改稿などをしています。※21.7.11時点で2章まで改稿が終わっています。今の所ストーリーが変わっているという事はありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://ncode.syosetu.com/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ