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臓器密売組織をぶっ潰せ!④

 どうやらこの臓器密売組織には【ピエロの晩餐】という名があるらしい。


 こいつらが背負っている、ピエロがフォークとナイフを持っている絵はこれを意味しているんだな。


「……言っておくが、この組織は臓器密売組織なんかじゃないからな?」


 なんですと?

 俺達を先導している小柄な男、(たつみ)鍛治だんじが、やれやれと言った感じで俺に告げる。こいつ、さっきまで泣きそうになってたくせに自分は消されないと踏んだのかその顔には余裕を感じられる。


「じゃあ、何の組織だよ?」

「俺達は、北陸地方でトラブル解決の仕事を専門に請け負っている創業百六十年を超える老舗企業だよ」

「何が老舗企業だこんな洞穴にた屯っているくせに。それに【ピエロの晩餐】なんて会社名なんてなかったはずだぞ?」


 東城さんにこいつらのアジトを探してもらっていた時に「ピエロの晩餐」なんてワードはなかった。


「俺達は、知る人ぞ知る組織なんだよ。そっちのねぇさんが言ってた通り、俺達はグールだし、ボスはヴァンパイア。そんな会社、公に出来る訳ないだろ? それにボスはヴァンパイア族、日光を浴びるわけにはいかなんだよ。それくらい察しろ」


 確かに、違う意味でブラックな企業だ。

 ヴァンパイア族が日光を浴びれない? 確かに、物語のヴァンパイアはそうかもしれないが、俺の知っている魔王やレウィ、その他ヴァンパイア族はお天道様に照らされていても平然としていたぞ?


「じゃあ、何でお前らは人の臓器を抜き取ってるんだ?」


 俺の問い掛けにイドラさんがぴくッと小さな反応をみせる。


「そこだよ。何でお前らがその事を知っているんだ? 組織以外の者は知らないはずなのに……組織の誰かが情報を洩らす事なんてあり得ないし……」


 お前の目の前に被害者がいるんだよ! とは言える訳もなく。


「それで? どうなんだ?」

「それは……俺の口からは言えない。俺達は、それを口にする事を禁じられている」

「禁じられてる? お前らのボスにか?」


 巽はこくりと頷き、立ち止まる。


「着いたぜ、この中にボスがいる」


 想像していたよりも質素な木製の扉。


「本当にここであってるんだろうな? ここに来るまでお前の仲間にも会ってないし、この扉の向こうにわんさかいて俺達を待ち受けているっていうオチじゃないよな?」


 ここまで一体たりともグールには遭遇していない。そもそも、こいつがすんなりとボスの所まで案内すること自体怪しいもんだが、罠であっても大した脅威にならないと踏んでいるため、言われるがままついてきたのだ。


「ボスからあんたらを連れて来いって言われてんだよ」

「はぁ? いつそんな事を? 何も聴こえなかったぞ?」

「咲太様、グールは主であるヴァンパイアと念話が可能と言われております」


 なるほど、念話かぁ。それなら、俺に聴こえなかった事も納得だ。


「そのねぇさんの言う通りだ、ったく、本当にそのねぇさんは何者なんだ? 俺達の事情に詳しすぎるだろう」と納得のいかなさそうな表情を浮かべる巽は、コンコンと扉をノックした後取っ手を捻り扉を開け、中へと足を踏み入れる。


 室内は、ここまでの道のり同様に薄暗い。

 一歩足を踏み入れた事で感じる重苦しい空気が、この部屋に入る者を拒んでいるような気がした。


 部屋の中をキョロキョロと見渡すが、コンクリートが剥き出しになっている無機質な壁にランタンの様な物が掛かっているくらいで実に何もない。だからなのか、部屋の真ん中ある真っ赤な皮張りのハイバックソファーがやけに存在感を出していた、いや、ソファーではないな。ソファーに座っている存在がそうさせている。


「ボス、連れてきました」

「あぁ……ご苦労」


 こいつがボスか……。俺のオヤジくらいの歳の男だ。

 ドブネズミの様な灰色の髪は肩くらいまで伸びており、体温なんて皆無と言わんばかりの血の気のない真っ青な顔。左目を中心とした痛々しい刀キズの様な物は、まるでピエロのメイクの様だ。


 男は、食事の途中だったのか、かちゃりとフォークとナイフの先端を皿の淵の置き、首元にかけられたナフキンで口の周りを拭う。そして、男は()()()()()()()()ナフキンをテーブルへと置く。

「ちッ、そういう事だったのか」


 俺は、男の前にある食べ掛けの皿とその隣に置いてある真っ赤な液体が入ったワイングラスで、【ピエロの晩餐】が臓器密売組織でない事が否応にも分かってしまった。


 皿の上には、生々しい人の臓物が綺麗に並べられていたからだ。戦場で何回も目にした事があるから間違いはないと思う。もし、俺に、いや、俺と紗奈に戦場での経験がなかったのなら、目を背けたくなる光景だっただろう。ちらっとイドラさんの方を見るが、イドラさんは両手で口を覆い男を直視している。


「あんたの飯だった、という事か」


 男は俺の言葉を無視する様に、ワイングラス手にし一気に口に流し込み、もう一度ナフキンで口元を拭い、立ち上がる。


「まさかとは思って連れてこさせたが……なぜ貴様がここにいる」


 男は俺を憎悪の籠った眼で睨みつける。

 はぁ? 


「どういう事だ? あんた、俺の事知ってるのか?」

「サクの知り合いですか?」

「いやいやいや、日本にヴァンパイアの知り合いなんていないよ」

「日本じゃないということは、もしかしてあっちの世界での知り合いでは?」


 あっちの世界で、日光浴びれないヴァンパイアの知り合いなんていなんだがな……。

 だけど、確かにどっかで見た事があるような……と、必死に記憶を探していると、イドラさんがゆっくりと俺の前へと出てくる。


「ランディス・トーレス・ルートリンゲン……貴方様だったのですね……」

「はぁ!? ランディスって!!」


 予想だにしなかった人物の名を耳にした俺は、男を三度見してしまう。


「間違いありません。あの方は、ランディス様です」 


いつも読んで頂きありがとうございます。

昨日まで更新する予定でしたが、遅れてしまい申し訳ありません。


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